発達障害の1つ、学習障害とは?

発達障害

はじめに
発達障害は、近年、その理解が少しずつ進みつつある障害です。ここでは発達障害の一つ、学習障害について、その主な症状の特徴や支援の在り方などを中心にまとめています。

1. もし自分が学習障害だったら、を想像する

学習障害とは、いったいどんな障害なのでしょう? 以下は、「ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら」(安原昭博著、明石書店)に示されている学習障害の簡易チェックリストです。学習障害の特徴的な行動と言い換えることができます。

<チェックリスト>
「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算する」、「推論する」の6領域の各設問について、次の4段階で回答してください。「ない:0点、まれにある:1点、ときどきある:2点、よくある:3点」とし、合計点が12点以上の領域が1つでもあれば、学習上の困難がある可能性があります。

(1) 聞く

① 聞き間違いがある(「知った」を「行った」と聞き間違える、など)
② 聞き漏らしがある
③ 個別に言われると聞き取れるが、集団の場所では難しい
④ 指示の理解が難しい
⑤ 話し合いが難しい(話の流れが理解できない)

(2) 話す

① 適切な速さで話すことが難しい(たどたどしい、または、とても早口で話す)
② 言葉に詰まったりする
③ 単語を羅列したり、短い文で内容的に乏しい話をしたりする
④ 思いつくままに話すなど、筋道の通った話をするのが難しい
⑤ 内容をわかりやすく伝えることができない

(3) 読む

① 初めて出てきた話や、普段あまり使わない語彙などを読み間違える
② 文中の語句や行を抜かしたり、または繰り返し読んだりする
③ 音読が遅い
④ 勝手読みがある(「行きました」を「いました」と読む)
⑤ 文章の要点を正しく読むことが難しい

(4) 書く

① 読みにくい文字を書く(字の形や大きさが整っていない、まっすぐ書けない)
② 独特の筆順で書く
③ 漢字の細かい部分を書き間違える
④ 句読点が抜けたり、正しく打ったりすることができない
⑤ 限られた量の作文や、決まったパターンの文章しか書けない

(5) 計算する

① 学年相応の数の意味や表し方について理解が難しい
② 簡単な計算が暗算でできない
③ 計算をするのにとても時間がかかる
④ 答えを得るのにいくつかの手続きを要する問題を解くのが難しい
⑤ 学年相応の文章題を解くのが難しい

(6) 推論する

① 学年相応の量を比較することや、量を表す単位を理解することが難しい
② 学年相応の図形を描くことが難しい
③ 事物の因果関係を理解することが難しい
④ 目的に沿って行動を計画し、必要に応じてそれを修正することが難しい
⑤ 早合点や、飛躍した考えをする

ここでは、12点以上の領域があったか、なかったかということが問題なのではありません。重要なのは、多くの人が程度の差こそあれ、この中の何らかの特徴が当てはまるとは言えそうだということなのです。実はこのことが、学習障害のある方の辛さであると考えられるのです。

仮にご自身の周りにこのような状態になってしまう方がいらしたら、どのように感じてきたでしょうか? 「単なる努力不足」というように感じていた方も多いのでは? しかし、この診断に当てはまるようなことの原因が学習障害の場合は「努力不足にはない」のです。

このように見ていくことで、「学習障害とはいったいどんな障害なのか?」「もし自分にこのような症状があったら、日常生活・社会生活をおくる上で、どんなことが起きるだろうか?」といった想像がしやすくなるのではないかと考えられます。 

参考:
ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

2. 学習障害とは?
(1) 学習障害とは?

① 学習障害とは? ~文科省の定義

文部科学省は学習障害を以下のように定義しています。
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接の原因となるものではない。」

② 学習障害の主な3つの種類

「図-学習障害、主な3つの種類」

文科省の定義にあるように、6つの領域のうちのいずれか、または複数で、その技能の習得が非常に難しい状態が「学習障害」です。その主なものは、以下の3つに分類されています。

1) 読字障害(ディスレクシア):読むことにおける障害です
2) 書字表出障害(ディスグラフィア):書くことにおける障害です
3) 算数障害(ディスカリキュリア):計算や推論することにおける障害です

③ 発達障害と学習障害との関係

発達障害には、大きく次の3つの障害があります。
1) 学習障害(LD)

2) 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)
自閉症スペクトラム障害とほぼ同じ意味で使われています。(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。自閉症スペクトラム障害は、典型的には、対人関係やコミュニケーションが困難で、興味や行動への偏りが見られるという3つの特徴が現れる障害です。症状の強さによって、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害などいくつかの診断名に分類されますが、大きくは同じ1つの障害単位だと考えられています。

3) 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
発達年齢に見合わない、「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が、頻繁・強く認められる障害です。

以上をすべてまとめると、以下のような図で表すことができるということになります。

「図-学習障害の位置づけ」

(2) 学習障害の原因

学習障害は、中枢神経系の機能に何らかの障害があることが原因と推測されていますが、具体的にどのような機能障害を起こしているのかはわかっていません。親族に学習障害のある方がいる場合に発症率が上がることから、遺伝的素因が強いとも考えられています。ただ、1つ言えることで、また重要なことがあります。それは、「保護者の育て方が原因ではない」ということです。

(3) 学習障害のある方の数

読字障害(ディスレクシア)については、学習面単独で著しい困難を示す児童生徒が3.3%存在するとする、2002年に小中学校教師を対象に実施された大がかりな調査結果があります。ただ、ひらがな・カタカナ・漢字別も含めた発生率の詳細なデータはないようです。さらに、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)も含めると、相当数の方が学習障害を抱えられていると考えられます。

参考:
文科省 ホームページ 
主な発達障害の定義について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
学習障害児に対する指導について(報告)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/002.htm

厚労省
e-ヘルスネット ホームページ
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

3. こんな症状が見られたら
(1) 発症時期(障害が判明するタイミング)

全般的な知的発達には問題がないため、いわゆる「読み書き計算」と呼ばれる能力が求められるようになる小学校2~4年生ごろに、成績不振などから判明するケースが多くなります。また、たとえば英語などの語学だけに症状が現れる場合もあり、中学進学後に判明するといったケースもあります。このように、障害のタイプや程度によって判明する時期が幅広いことが学習障害の特徴とも言えます。

(2) 学習障害の主な症状

学習障害の種類別に見ると、その症状は以下のように整理することができます。ただし、症状の出方や程度は人それぞれであるため、すべてがあてはまるというわけではありません。
読字障害

参考:
厚労省
e-ヘルスネット ホームページ
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

4. 学習障害の治療方法

今のところ医学的な方法による根本的な治療法はありません。その意味で、学習障害の治療とは、学習障害のある方の将来の選択肢の幅を広げるための手助けのようなものと言い換えることもできるでしょう。支援の多くは、教育面・生活面での環境整備や接し方などの配慮を含めたものであり、その支援が適切であればあるほど、その困難の度合いは、ある程度までは軽減されると考えられています。

参考:
厚労省
e-ヘルスネット ホームページ
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

5. 学習障害のある方の学びを支援するにあたって
(1) 学習障害のある方の支援にあたって大切なこと

① 学びの本質に立ち返った学習支援

学習障害のある方の「学びの支援」にあたって何より重要なのは、学習する目的を忘れないことです。学習・教育の目的は、その知識やスキル、あるいは、考え方を使って、社会で生活する上での課題を解決していくこと。テストで良い点を取ることでは決してありません。

たとえば読むことによる理解が困難であっても、音を聞いて理解することができるのであれば、音で聴くという手段を使えばよいと言い換えることもできるわけです。このような手段の置き換えで学習・教育の目的を果たせるのであれば、それは積極的に利用するべきと言えますし、それは支援の中心にできると言えるのではないでしょうか。

② 学びの支援、その具体的な方法

以下に、学習障害の種類別に考えられる支援の方法を整理していますが、これはあくまで例にすぎません。学習・教育の目的に立ち返りながら、どんな支援ができるのかを考え、試していき、ご本人に合った方法を探していくことが重要です。

③ 学びへの意欲を削がない

「図-学習障害によって、学びへの意欲を削がないためのポイント」

がんばっているにも関わらず「できない」「わからない」ということは、特に子どもにとっては非常に辛いものです。このことが、学びへの意欲を削いでいく可能性があるばかりか、自己否定につながっていくことも考えられます。学びへの意欲を削がないためには、以下のようなことがポイントになるのではないかと考えられます。

1) 障害そのものや障害による苦しさを理解しようとすること
本来なら理解したいのですが、本当の意味で理解することは、ご本人でない以上難しいと言えます。とはいえ、「それがどんな障害なのか?」ということと、「障害によりどんな困りごとが起こるのか?」を理解しようとする姿勢は、障害をお持ちのご本人に伝わるものです。そんな姿勢は、やはり大切と言えます。

2) がんばっていること、努力していること自体を認めること
がんばっているのか、いないのかは、よく観察すればわかる部分も多いでしょう。結果としての、できた、できない以前に、「がんばったこと自体」を認め、褒めることは非常に重要なことでしょう。

3) ご本人の好きなことや強みに着目して対策を考えるということ
知識やスキルというよりは、むしろその考え方自体を身につけるのが学びの本質でもあります。そんな本質を身につけられるような方法がないか、学習障害のあるご本人とも相談しながら対策を考えること、見つけていくことも大切でしょう。特に、好きなこと、得意なことに着目すると意外な解決策がみつかる可能性もあると考えられます。

たとえば、読字障害(ディスレクシア)でも、絵が好きということなら、文字は極力減らしながら、図式化して内容を理解することができないかというようなアプローチなどが考えられます。

(2) 学習障害のある方を支える支援機関など

学習障害を含む発達障害に関する支援機関として、以下のような専門機関があります。

① 保健センター
② 子育て支援センター
③ 児童発達支援事業所
④ 発達障害者支援センター

とはいえ、学びの中心となる場は、やはり家庭や学校です。そう考えると、学習障害のある方に対して、どんな支援をすれば本来の目的に合った学びができるのかは、家庭と学校とが連携し、対話しながら考えていくことになるでしょう。

参考:
東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

国立特別支援教育総合研究所
発達障害教育推進センター ホームページ
LDのある子どもの指導・支援
http://icedd.nise.go.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=1460

国立障害者リハビリテーションセンター
発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1/

最後に

学習障害は、大きくは、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つに分類できますが、その症状や程度が人それぞれで非常に幅が広く、そのため診断も、支援も、人それぞれになりやすい障害です。ただ、学習面単独で見れば、学習の目的まできちんとさかのぼってとらえていくことで、さまざまな対応方法が考えられるのも事実。できないことの代替え手段を使う、というのも一つの方法です。

一方で問題は、努力しているのにできないことで、学習意欲を失ってしまうこと。障害自体を理解しようとする、がんばっていること自体を褒める、好きなことや強みに着目するといったことを通じた支援が非常に重要な障害であると言うこともできるでしょう。なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。、

参考:
文科省 ホームページ 
主な発達障害の定義について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
学習障害児に対する指導について(報告)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/002.htm

厚労省
e-ヘルスネット ホームページ
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

国立研究開発法人 国立成育医療センター
ディスレクシア こどもの病気
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/007.html

国立特別支援教育総合研究所
発達障害教育推進センター ホームページ
LDのある子どもの指導・支援
http://icedd.nise.go.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=1460

国立障害者リハビリテーションセンター
発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1/

金森 保智

95,566 views

全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

102,182 views

電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。