発達障害とは?

発達障害とは
発達障害

はじめに
発達障害は、最近になって少しずつその症状のつらさや生活への負荷の大きさが理解されるようになってきた障害です。日常生活をおくるだけで精神的にものすごく疲れる、つらいと感じるといった症状がある場合、その原因が発達障害にある場合もあるようです。

ここでは、メカニズムなども含め、精神障害と発達障害との関係や発達障害と知的障害の関係など、「発達障害とは何か?」についてまとめました。



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1. 発達障害とは?
(1) 発達障害とは?

「図―広い意味での精神障害と発達障害の関係」
広い意味での精神障害と発達障害の関係
発達障害とは、広い意味での精神障害の一つです。精神障害は、ひと言で言うと「脳の障害」で、何らかの原因で脳の一部の機能がうまく働かないことによって引き起こされると考えられています。発達障害は、同じ人がいくつかのタイプのものを持つことも珍しくなく、同じ障害がある人同士でも個人差が大きな障害でもあります。

【関連記事】
精神障害・精神疾患とは何か? こころの病気
https://jlsa-net.jp/sei/seishin-syogai/

参考:厚労省ホームページ 発達障害の理解のために
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm

(2) 発達障害と知的障害の関係

「図―日本における発達障害と知的障害の関係」
日本における発達障害と知的障害の関係
日本において、発達障害は、知的障害を伴う場合もあるとされています。発達障害と知的障害とでは、診断するための道具(=基準)が異なるため、このようなことが起こります。

※知的障害は、知的機能と適応機能との2つの視点から判断される障害です。知的機能では、IQが70以下の方が対象です。

発達障害は、後に示す特徴を持つ方で、必ずしも知的障害を伴いません。文科省が平成24年に実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」から、通常クラスへ通学する児童の6.5%が、何らかの発達障害があると推計されています。

少々乱暴ですが、この割合を全人口に当てはめると800万人以上の方が発達障害があるという計算になります。知的障害がある方は推計54.7万人ですので、知的障害を伴わない方の方が多数派だということになります。

【関連記事】
発達障害と知的障害の違い
https://jlsa-net.jp/hattatsu/hattatsu-chiteki/

参考:
内閣府 ホームページ 平成25年版 障害者白書
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/zenbun/index-pdf.html

文科省:通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm

(3) 発達障害の大きな分類・3つの種類とその特徴

「図―発達障害全体像」
発達障害全体像
発達障害には、大きくは以下の3つがあります。

① 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)

自閉症スペクトラム障害とほぼ同じ意味で使われています。(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。自閉症スペクトラム障害は、典型的に対人関係やコミュニケーションが困難で、興味や行動への偏りが見られるという3つの特徴が現れる障害です。

症状の強さによって、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害などいくつかの診断名に分類されますが、大きくは同じ1つの障害単位だと考えられています。

② 学習障害(LD)

全般的な知的発達には問題がないのに、「読む」「書く」「話す」「計算する・推論する」など、特定のことをするのが極めて困難な状態、障害です。

③ 注意欠陥多動性障害(AD/HD)

発達年齢に見合わない、「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人の邪魔をしてしまうなど)」が、頻繁・強く認められる障害です。

【関連記事】
自閉症とは? ~その特徴ととらえ方の広がり、支援のあり方
https://jlsa-net.jp/zhi/ziheisyou/

発達障害の1つ、アスペルガー症候群とは?
https://jlsa-net.jp/hattatsu/aspe/

参考:厚労省 みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

(6)主な発達障害の発症時期

発達障害の兆候が表れる時期は次の通りです。
主な発達障害の発症時期

これらの年齢は、あくまで「目安」です。最近では、大人になってから発覚するケースも数多く報告されています。

参考:厚労省 みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

(7)主な発達障害のセルフチェック方法

主な発達障害のセルフチェック方法は次のとおりです。

① 広汎性発達障害のうち、アスペルガー症候群

以下の4つの項目について、それぞれ1つ以上チェックがつくときは、アスペルガー症候群の可能性があります。

1) 対人関係の特徴
・一人遊びに熱中する
・友だちのルール違反を指摘する
・スーパーなどで保護者から離れてうろうろする
・友だちの輪の中に入れない
・話しかけても聞いていない

2) 認知・適応行動の特徴
・視線が合わない
・初めての場所が怖い
・予定が変更されるとパニックになる
・人に触られるのが嫌い
・幼児期からアルファベットや数字が読める
・身体がぎこちない

3) 行動・活動・興味の特徴
・キャラクターや虫などにはまる
・車、電車、虫などにやたら詳しい
・室外機のファンを見るのが好き
・バイクや工事現場などの大きな音が嫌い
・偏食が激しい
・特定の匂いが嫌い

4) 言葉の特徴
・言われた言葉の意味をそのまま受け取る
・テレビの主人公などの話し言葉を真似る
・会話にならない
・たくさんの話をするが自分の言っていることの意味を理解できていない
・相手の言葉をオウム返しする

② 学習障害

「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算する」、「推論する」の6領域の各設問について、次の4段階で回答してください。
ない:0点 まれにある:1点 ときどきある:2点 よくある:3点

合計点が12点以上の領域が1つでもあれば、学習上の困難がある可能性があります。

1)聞く
・聞き間違いがある(「知った」を「行った」と聞き間違える、など)
・聞き漏らしがある
・個別に言われると聞き取れるが、集団の場所では難しい
・指示の理解が難しい
・話し合いが難しい(話の流れが理解できない)

2)話す
・適切な速さで話すことが難しい(たどたどしい、または、とても早口で話す)
・言葉に詰まったりする
・単語を羅列したり、短い文で内容的に乏しい話をする
・思いつくままに話すなど、筋道の通った話をするのが難しい
・内容をわかりやすく伝えることができない

3)読む
・初めて出てきた話や、普段あまり使わない語彙などを読み間違える
・文中の語句や行を抜かしたり、または繰り返し読んだりする
・音読が遅い
・勝手読みがある(「行きました」を「いました」と読む)
・文章の要点を正しく読むことが難しい

4)書く
・読みにくい文字を書く(字の形や大きさが整っていない、まっすぐ書けない)
・独特の筆順で書く
・漢字の細かい部分を書き間違える
・句読点が抜けたり、正しく打つことができない
・限られた量の作文や、決まったパターンの文章しか書けない

5)計算する
・学年相応の数の意味や表し方について理解が難しい
・簡単な計算が暗算でできない
・計算をするのにとても時間がかかる
・答えを得るのにいくつかの手続きを要する問題を解くのが難しい
・学年相応の文章題を解くのが難しい

6)推論する
・学年相応の量を比較することや、量を表す単位を理解することが難しい
・学年相応の図形を描くことが難しい
・事物の因果関係を理解することが難しい
・目的に沿って行動を計画し、必要に応じてそれを修正することが難しい
・早合点や、飛躍した考えをする

【関連記事】
発達障害の1つ、学習障害とは?
https://jlsa-net.jp/hattatsu/gakusyu-syogai/

③ AD/HD

次の項目に、6項目以上一致する場合、AD/HDの可能性があります。

・はじめた課題を終えられない。
・集中できない。長く注意を払えない。
・じっと座っていられない。絶え間なく動く。多動。
・貧乏ゆすりなど、絶えず体の一部を動かしている。
・夢見がち、物思いにふけっている。
・衝動的、または考えずに行動する。
・指示に従うのが苦手。
・順番を無視してしゃべる。
・課題を雑にやる。
・不注意、すぐ気が散る。
・おしゃべりである。
・与えられた仕事、課題を遂行しない。
・他人の仕事の邪魔をする。
・指示を理解しない。指示に従った行わない。
・衝動的な行動が見られる。
・学習中眠そうだったり、ぼんやりしている。

参考:
ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

ここでご紹介したチェック方法は、参考にしていただく程度のものです。発達障害を診断するのは非常に難しいと言われています。その理由は、
① アスペルガー症候群とAD/HDとで(実際に理由は異なっていても)似たような症状を見せる場合があること
② 複数の障害を併発している場合があったりすること
③ 年齢によっても変化が見られること
④ 症状が見えたからと言って障害からのものではない場合があったりすること
などです。

よって、発達障害が疑われる場合は、
⑤ 都道府県に設置されている発達障害者支援センターや、市区町村に設置されている保健所・保健センター・教育委員会など、相談窓口に相談する
⑥ 簡易な検査で「疑いがある」と判断されたら、専門の医療機関の診断を受ける
ことが重要です。

(8)発達障害は治るのか?

発達障害は「発達のしかた」に生まれつき凹凸がある障害で、その意味では治るものではありません。ただ、状態が不変でまったく成長しないというような障害でもありません。どんな人でも一生を通じて成長するように、発達障害のある方は、発達障害のある方なりの成長をしているということです。

【関連記事】
発達障害、診断までの期間は短くなる? 厚労省が診断体制見直しへ
https://jlsa-net.jp/hattatsu/sindan-kikan/

参考:厚労省ホームページ 発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

2. 発達障害に対する支援
(1) 法律

発達障害の方の生活を守ることは、法律で定められています。主な法律として、以下があります。
① 障害者基本法
② 障害者総合支援法
③ 障害者精神保健福祉法
④ 発達障害者支援法

【関連記事】
発達障害のある方を支える法律~発達障害者支援法とその他の法律との関係
https://jlsa-net.jp/hattatsu/hattatsu-sienhou/

(2)福祉サービスを受けるにあたって~

発達障害のある方を保護・支援するしくみは、少しずつ拡充されてきています。また、保健や医療、教育、仕事など、発達障害のある方が、個人としての尊厳を保てるだけの日常生活又は社会生活を送れることを目的に、支援の領域や内容も整理されてきています。

発達障害のある方へのサービスには以下のようなものがありますが、各サービスが受けられるかは、症状の程度(生きていく上での困難さの程度)による面があります。

① 精神障害者福祉手帳

何らかの精神疾患・障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象とするしくみ(認定制度)です。認定され、取得すると、公共料金の割引や税金の控除などが受けられます。

② 自立支援医療

精神障害の治療を通院で行う場合に、自立支援医療費を支給する制度です。一部の発達障害もその対象範囲とされています。症状が殆ど出なくなっている方であっても、その状態を維持し・再発を予防するために通院治療を続ける必要がある場合も対象となります。

【関連記事】
精神障害者保健福祉手帳とは? ~精神障害のある方を支える福祉サービス
https://jlsa-net.jp/sei/seishjin-tetyou/

参考:厚労省ホームページ 自立支援医療(精神通院医療)の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html

③ 障害者総合支援法による自立支援・就労支援・生活のための介助サービスなど

発達障害を含むすべての障害者の方を支援するための法律です。サービス対象か否かは、症状の程度に応じ一般的に必要となる支援の必要の度合いを示す「障害支援区分」で規定しています。

参考:厚労省ホームページ 障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html

3. 支援機関

発達障害を含む精神障害のある方を支える主な相談窓口は、以下のような行政機関と医療機関になります。

(1)行政機関

・発達障害支援センター
・保健所・保健センター
・精神保健福祉センター
・各市町村の窓口(福祉課など)
・地域活動支援センター・相談支援事業所

4. 民間の保険など

発達障害は「既往症」の1つとしてとらえられるケースが多くなります。民間の生命保険や医療保険は、「既往症があると加入できない、あるいは保険料が高くなる」というしくみなので、発達障害にもそれが適用されるということです。

「引受基準緩和型」といわれる保険は、症状が比較的軽い、投薬により症状が安定している場合、加入できる可能性が高い民間保険です。また、共済の中に告知の範囲が比較的緩和されているものもあるようです。

いずれも保険料は、何も病気や障害のない方と比較すると割高になると思われますが、その程度は保険会社次第。保険の加入を検討する場合は、どの程度の補償が、何の目的で必要なのか考えた上で、ショッピングモールなどにある無料の保険相談窓口に相談してみるのも1つの方法でしょう。

最後に

いかがでしたか? 発達障害はその理解がなかなか進まなかった障害ですが、一方で非常に身近な障害です。発達障害のある方の数は非常に多いことがわかってきています。また、そうでないと思っていた人でも実は発達障害のある可能性もあります。

ただ大事なことは、障害の有無ではないでしょう。その人がどんなことが出来てどんな魅力があるのか、逆に何が苦手なのか、といった「その人」に目を向けることが重要です。人は誰にでも得意不得意があり、必要とする支援もそれぞれだからです。

得意不得意が極端に出る障害があり、不得意部分では特に配慮や支援が必要となる人が発達障害のある方とも言えるのではないでしょうか。

この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
内閣府 ホームページ 平成25年版 障害者白書
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/zenbun/index-pdf.html

文科省:通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm

厚労省 みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

厚労省ホームページ 発達障害の理解のために
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1328729.htm

厚労省ホームページ 自立支援医療(精神通院医療)の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html

厚労省ホームページ 障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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