自閉症とは? ~その特徴ととらえ方の広がり、支援のあり方

発達障害

はじめに
自閉症の方は、脳の発達の仕方の違いから「他の人の気持ちや感情を理解すること」「言葉を適切に使うこと」「新しいことを学習すること」、一般的な「常識」と思われることを身につけることもニガテと言われています。このため、真面目に取り組んでいても、誤解されることも多いと考えられています。
ここでは、そのような特徴や困りごとが見られやすい自閉症について、自閉症とは何かということを中心に、そのとらえ方の変化や支援のあり方などについてまとめています。

1. 自閉症とは? 
(1) 自閉症の従来のとらえ方

① DSM-4でのとらえ方

自閉症は、米国精神医学会が作成する「DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)」という、疾患や障害を分類する手引上の分類の、「旧版」の診断基準であるDSM-4においては、次の3つの行動の特徴を併せ持つ症状として定義されていました。

<自閉症の旧来のとらえ方 ~ DSM-4での定義>
1) 顔の表情などで相手の気持ちがわかるなど、非言語性行動における対人的相互作用の質的な障害がある
2) 話し言葉の獲得の遅れや偏り、言葉づかいの奇妙さなど、意思伝達の質的問題がある
3) 強いこだわりや固執行動・常同行動がある
(出典:DSM-Ⅳ-TR)

② 日本の省庁でのとらえ方

日本の行政におけるとらえ方も、この定義を参考にしているところがあるようです。たとえば文科省の定義は次のようになっています。

<文科省における自閉症の定義>
自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
(出典:文科省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

③ ICD-10での分類

医学的な診断では、「DSM」での分類方法以外にも、WHOが作成する「ICD10(国際疾病分類第10版)」での分類方法などが、国際的に用いられています。この分類において自閉症は、広汎性発達障害に位置づけられ、IQ70以上の高機能自閉症の場合は「アスペルガー症候群」、IQ70以下の場合は「カナー症候群」とされています。

(2) 自閉症のとらえ方の変化と概念の広がり ~DSM-5での定義

「図-自閉症のとらえ方の変化・概念の広がりのイメージ」

 2013年に発行されたDSMの最新版であるDSM-5では、自閉症はアスペルガー症候群などと連続体として重なりあっているという考え方が取られるようになり、障害の名称としては、「自閉スペクトラム障害」に一本化されています。つまり、自閉症やアスペルガー症候群などは、本質的には同じ1つの障害単位であると考えられるようになったということです。この背景には脳科学の領域における研究の進展があります。

 とはいえ、既に多くの方が、「自閉症」という診断名で診断をされていたり、福祉サービスを利用する際にはICD-10の診断名を用いたり、発達障害者支援法で対象となる障害名が「自閉症」であったりすることから、とらえ方や概念の広がりとは別に「自閉症」という障害の名称が使われる場面が多いという状況でもあります。

参考:
厚労省e-ヘルスネット ホームページ
自閉症について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

文科省ホームページ
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 ホームページ
第一章 自閉症とは
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-210/d-210_01_01.pdf

一般社団法人 日本自閉症協会
自閉症スペクトラムの理解と支援
http://www.autism.or.jp/autism05/201409-honda.htm
広汎性発達障害 自閉性障害
http://www.autism.or.jp/autism05/handan.htm

2. 自閉症の一般的な特徴 ~自閉的な特徴とは?

「図-自閉症の一般的な特徴」

自閉症の典型的な特徴、つまり、自閉的な特徴には、対人関係の障害・コミュニケーションの障害・興味や行動の偏りやこだわりの3つがあります。

(1) (相互的な)対人関係の障害

社会で常識とされるようなことや、暗黙のルールといったものに無頓着であるという特性です。この特性は、周囲に関係なく自由な発想ができる、孤立してもやり続けられる・やり遂げられる、周囲の感情に惑わされないといった長所となることでもあります。

一方で、その場の空気や相手の様子などを読むことができない、周囲に配慮しながら行動することができない、あいさつや礼儀をわきまえない、間違っていても謝らないといった行動に結びつきがちです。そのため、ご自身には全く悪気はないのに、「非常識」「自己中心的」と見られやすくなり、他人の怒りをかってしまうことにつながる場合があります。

(2) コミュニケーションの障害

自分の興味のあることや、頭に浮かぶことを次々話すといった特性です。この特性は、印象に残ったことを率直に話せる、独特の言い回しなどが面白い、あることについてとことん話を続けられるといった長所となることです。

しかし、それは、相手に興味があるかないかに関わらず話し続ける、相手の話はまったく聞かず一方通行で話す、相手が話している途中で他のことを始めるといった行動に結びつきがちです。仲間と一緒に何かをやるといった場面で他人の言うことはまったく聞かなかったり、休憩時間と勉強時間などの切り替えができずに話し続けたりといった問題を起こす場合があります。

(3) 興味や行動の偏り・こだわり(パターン化した興味や活動)

決められた手順や一度決めたルールなどに徹底してこだわるという特性です。物事に真剣に取り組む、単純作業などを嫌がらずに続けられる、規則正しく生活できる、記憶力が高いなどの長所となってあらわれる面があります。

その反面、突然のスケジュール変更や中止、ルールの変更、などを極端に嫌がり、時にパニック状態になったりする場合もあります。これは、次に何が起こるか、どんなことが起きる可能性があるかといった想像力を働かせることがニガテであることが原因です。また、例外を認めなかったり、他人の誤りを許さなかったりといったことも、同じ特性が原因であらわれがちです。

参考:
公益社団法人日本心理学会ホームページ
医学的見方から― ASD の診断基準
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/67-5-8.pdf

厚労省ホームページ
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

内閣府 ホームページ
自閉症・発達障害の理解と対応
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/soudan/04/s6.pdf

国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/

3. 自閉症の原因 ~最新の研究動向など
(1) 自閉症の方の人数と治療法

自閉症は、非常に頻度の高い精神疾患であり、発達障害の一つに位置づけられています。全人口の約2%程度が発症すると言われています。ただ、現代の医学では、自閉症の根本的な原因を治療する事はまだ不可能とされています。

(2) これまでに明らかになってきていること 

自閉症の根本原因に対する治療法がないのは、自閉症の原因が特定されていないからです。

自閉症の原因としては、胎児期の神経発達障害が考えられていますが、具体的な発症メカニズムはわからないとされています。一方で、自閉症の方の持つ遺伝子研究から、多くの遺伝子変異が見られることがわかっています。つまり、これらの遺伝子の変異が、自閉症の症状を引き起こしているのではないかと考えられています。

(3) 最新の研究 ~ 九州大の研究

CHD8は、自閉症の症状を引き起こすと考えられている遺伝子の中で、自閉症の方の変異率が最も高いものです。このことから、このCHD8が自閉症の原因となっている遺伝子ではないかという仮説があります。

この仮説に着目した九州大の研究チームが2016年に発表した研究成果によると、CHD8に変異が起こるとRESTという神経伝達に重要な役割を果たすたんぱく質が異常に活性化し、その結果、神経の発達が遅れることがわかったとのこと。

つまり、CHD8という遺伝子が自閉症の原因だとした場合、どのように自閉症を引き起こしていくのかというしくみがわかったということであり、また、CHD8を上昇させるか、RESTを抑制することができれば、自閉症が治療できる可能性があるということでもあります。

この研究で、自閉症の原因が明らかになったわけでも、その治療法が確立されたわけでもありません。しかし、このような研究が、広く行われている状況にはあるということなのです。

参考:
厚労省e-ヘルスネット ホームページ
自閉症について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

九州大学ホームページ
自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待
http://www.kyushu-u.ac.jp/f/28895/16_09_08.pdf

4. 自閉症の方を支援するにあたって ~支援にあたって大切なこと
(1) 診断名にとらわれない ~基本的な支援の在り方

自閉症の症状のあらわれ方は、年齢によって変わると考えられ、そのため、支援に対するニーズも変わっていくと考えられます。とはいえ、この時期にこのような発達上の変化が起きるとは一概に言うことができません。また、自閉症特有の症状が軽減しても、それは我慢を強いているだけで、そのストレスなどにより他の症状が生じる場合もあり得ます。

よって、発達段階を通じて、自閉症の症状のあらわれ方だけでなく、生活全般に渡る行動に目を配り続けることが最も望ましい在り方と考えられています。

(2) 自閉症の方の声を聞く

 自閉症の方の支援にあたっては、自閉症の方の声を聞くことが非常に重要だと言えます。その具体的な声として、世界自閉症啓発デー日本実行委員会ホームページでは、以下のように表現されていますので、そのまま引用します。

「こうしてもらえると助かります  ~ 自閉症の人を見かけた時の対応 ~

自閉症の人には、会話が苦手な人が多くいます。このため、その人の発達に応じたわかりやすい説明をお願いします。例えば、その人が理解している言葉を知り、その言葉を使うことや、写真や絵などを添えて説明する、抽象的な表現をさけて、短い表現で話すことなどで、理解しやすくなります。

また、過敏で、人混みや大きな音、光といった刺激を苦手とする人が多くいます。このような刺激による不快感を増幅させないよう安心できる環境を調整して作ってあげてください。

新しい事や、いつもとやり方が違う時に、困って混乱することがあります。また、「できない時」「間違っていた時」に叱って教えようとすると、本人が混乱して余計に理解できなくなったり、将来に悪影響を及ぼすこともあります。どうすればよいのか、正しい方法をできるだけ具体的に教えることを基本に、穏やかに根気よく接して、良い関係を作るようにしてください。」
(出典:世界自閉症啓発デー 日本実行委員会<公式サイト>
http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=167

自閉症は、既に見てきているように、その症状の出方は人それぞれの面があります。ここで引用させていただいた言葉も、場合によっては、一部の方の考えかもしれません。それでも、自閉症の当事者の声として、きちんと受け止めることが大切であると言えるのではないでしょうか。

なお、毎年4月2日が、国連の定めた世界自閉症啓発デーとされています。日本でも、シンポジウムなどのイベントが開かれています。このようなイベントを、自閉症の理解を深める機会にするということも、自閉症の方を支援する一つの方法なのではないでしょうか。

参考:
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター ホームページ
ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf

文科省ホームページ
発達障害者支援法の施行について
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050816.htm

世界自閉症啓発デー 日本実行委員会<公式サイト>
http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=167

5. もしかしたら自閉症? と思ったら
(1) なるべく早く専門機関に相談を

自閉症の症状が見られたら、なるべく早期に専門機関での診断を受けることをおすすめします。自閉症には、これまで見てきたような特徴がありますが、その特徴に合わせた支援に関する知見は、専門機関でないと得られにくいという状況があるからです。

また、早い段階から支援を得られれば、その特徴を強みに変えて、その道の第一人者と呼ばれるほどの活躍ができる可能性も広がります。

(2) 支援機関

子どもか大人かによって、支援の中心となっている専門機関が異なります。以下が主な支援機関となります。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所

参考:
東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

最後に

 自閉症は、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわること、という3つの特徴が見られる障害です。未だその原因は特定されていませんが、各レベルでの研究が盛んに行われています。

その成果とも相まって、現在では自閉症は、アスペルガー症候群などと本質的には同じ1つの障害単位であり、連続体にある障害と考えられるようになっていますが、その一方で過去の経緯などもあり、自閉症という言葉も一般的に用いられる状況にあります。

 いずれにしても、自閉的な特徴を理解し的確な支援をすることが、自閉症をお持ちの方々の困りごとを解決したり、軽減したりすることにつながり、また、その方々の持てる力を磨いていくことにつながると言えるでしょう。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府 ホームページ
自閉症・発達障害の理解と対応
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/soudan/04/s6.pdf

厚労省e-ヘルスネット ホームページ
自閉症について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

文科省ホームページ
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
発達障害者支援法の施行について
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050816.htm

東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 ホームページ
第一章 自閉症とは
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-210/d-210_01_01.pdf

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/
ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf

一般社団法人 日本自閉症協会
自閉症スペクトラムの理解と支援
http://www.autism.or.jp/autism05/201409-honda.htm
広汎性発達障害 自閉性障害
http://www.autism.or.jp/autism05/handan.htm

公益社団法人日本心理学会ホームページ
医学的見方から― ASD の診断基準
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/67-5-8.pdf

九州大学ホームページ
自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待
http://www.kyushu-u.ac.jp/f/28895/16_09_08.pdf

世界自閉症啓発デー 日本実行委員会<公式サイト>
http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=167

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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