言語障害とは? ~言語習得のしくみと言語習得の遅れとの関係

発達障害

はじめに
周囲の方の成長度合いと比較して、言葉を発するのが遅いと感じる場合、もしかしたら何らかの問題があるのではないかと思われることもあるでしょう。言葉を使ったコミュニケーションに困難が生じる障害・疾患にはさまざまな種類がありますが、その一つに「言語障害」があります。
ここでは、「言語障害」とは何なのか? について、言語習得のしくみも確認しつつまとめています。

1. 言語障害とは?

「図-言語障害のとらえ方」

「言語障害」という言葉が何を指すか、は実は「言語障害」という言葉が使われる場面や文脈、医学や教育・福祉などの分野・領域によって異なる面があります。たとえば分野・領域で「言語障害」を表す範囲の違いで言えば、その分野・領域に求められる役割が異なるために生じる面があります。

教育であれば、「その状態であることで生じる困りごとをどう解決するか」が重要です。つまり、困りごとが生じる原因に関係なく、その対処法が大切になるということです。一方、医学の場合はそうはいきません。「その状態になっている原因を取り除いたり軽減したりすること」が求められるからです。このような理由から、「言語障害とは何か?」は、その時々によって、使われ方が異なるのです。

(1) 広い意味での言語障害

すでに見たように、教育分野では、困りごとが生じる原因自体を解決したい課題とするわけではありません。よって、広い意味で「言語障害」をとらえるのが一般的です。文科省によれば、「言語障害」を次のように扱っています。

「言語障害とは、発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため、話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状況であること、また、そのため本人が引け目を感じるなど社会生活上不都合な状態であることをいいます。」(出典:文科省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/006.htm

(2) 医学上の分類

これに対して、医学の分野における言語障害では、言葉の使用の面での障害と、言葉の理解の面での障害との大きく2つに分類してとらえることになります。

① 表出性言語障害とは?

表出性言語障害とは、正しく言葉を理解しているにもかかわらず、「言葉を使うこと」が発達段階、つまりその年齢で期待される水準を下回る障害を言います。具体的には、語彙が乏しく、複雑な文章の作成や言葉を想い起こすことなどに困難が生じる状態です。

この障害のある場合、話をしていても漠然としている、特定の対象を示すときに「あれ」「もの」といった言葉を多く使うといった症状が見られます。このため、自分が言いたいことをうまく説明できず、仲間外れにされたりすることも。また、自分の欲求が満たされにくくなるため、自己効力感が低かったり、ストレスをため込み抑うつを含む情緒的な問題を抱えたりといったケースもあります。

また、自分の欲求を伝える手段として、言葉ではなく指で指したり、身振りを使ったりといった場合もあります。

② 受容性言語障害とは?

受容性言語障害とは、「言語を理解すること」が、その年齢で期待される水準を下回る障害を言います。語彙だけでなく、文法や構文、文章をつくることの3つの点で、その理解に困難を伴うため、結果的に、「言葉を使うこと=表出性言語」にも困難を持つことになります。

このため、初めて単語や語句を話す時期が遅れがちで、理解できる語彙の数が少なく、多様性に欠けます。話し始めたとしても、文法が誤っていたり、短く単純な言葉だったりといった傾向が見られます。長い文章を使って話すことや、順序立てて話すことが苦手なため、学校の成績や他者とのコミュニケーションに著しい困難が生じやすくなります。

またこのことが、会話に対する消極性を生みやすく、周囲からは無口な人のように見える場合もあります。

参考:
文科省ホームページ
特別支援教育について (6)言語障害教育
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/006.htm

医療法人社団ハートクリニック ホームページ
表出性言語障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/eld01.html
受容性言語障害/言語症/言語障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f80_receptive_language_disorder.html

2. そもそも言語はどのように習得するのか? 言語習得に必要な力
(1) 言語によるコミュニケーションのしくみ

「図-言語によるコミュニケーションのしくみ」

言葉を使ってコミュニケーションをとるには、実はさまざまな力を必要とします。そのしくみは次のようになります。

① 伝えたいことを考える ~言語学的レベル

 まず、伝えたいことがあるときは、それを頭の大脳で考え、言葉にする必要があります。

② 言葉にして出す ~生理学的レベル

 話し言葉として表現するために、考えたことを声帯・舌・唇などに運動神経を通じて命令することになります。これがうまく使えると音声になります。

③ 話し言葉を音として聞き手に伝える、届ける ~音響学的レベル

 音は、音波となって空気中を伝わります。それが聞き手や話し手自身の耳に届きます。

④ 音を受け取り、脳に届ける ~生理学的レベル

 届けられた音波を耳で受け取ります。この音波を電気信号に変換し、感覚神経を経由して頭の大脳に伝えます。

⑤ 音声情報を脳で理解する ~言語学的レベル

 頭の大脳で、音声情報を受け取り、その意味を理解します。

(2) 言語の習得のステップ

「図-言語習得に必要となる力」

上記で見てきたように、言語によるコミュニケーションでは、大脳、声帯・舌・唇などの筋力も含めた運動能力、運動神経、音を受け取る力、音を大脳に伝える感覚神経といった各器官や神経などが、必要な力を持つことが必要です。つまり、言語によるコミュニケーションに必要な各機能が十分に発達することが必要になるということです。

その上で、他者とのコミュニケーションをできるようになるには、言葉そのものの習得が必要です。各機能が十分に発達していて使える状態になっていても、必要なもの、つまりこの場合で言えば言葉が蓄積されていなければ、その機能の使いようがないからです。

ところで言葉は上記で言う③~⑤のステップの中で習得していくことになります。よって、まずは、耳が聴こえること、つまり、音を受け取れることが必要になります。

ただ、聴こえただけでは、それが何を指すのかはわかりません。そこで必要になるものに、視覚や触覚があります。保護者の方の顔つきや身振り・手振り、優しく触れる、撫でるといったことを通じて、言葉を含めたさまざまなものがコミュニケーションのツールであるということを理解していくことになります。

やがて、何らかの言葉を使うと、食べ物が出てきたり、相手が喜んだり、ある音が聴こえると犬や猫がいたりといった、何らかのグループと音との関係が理解できるようになります。さらに、食べ物にはご飯やパン、麺類、リンゴやミカンなど、さまざまなものがあるというように分類されていき、言葉として身についていくのです。

参考:
大阪観光大学図書館ホームページ
言語習得のメカニズム
http://library.tourism.ac.jp/no12HikamiIsao.pdf

新潟大学教育学部ホームページ
5.言語障害等
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/10201.pdf

J-Stageホームページ
言語獲得と理解の脳内メカニズム
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/60/1/60_60.1.4/_pdf

3. 言語障害と言語発達のマイルストーン

このように、言葉の理解だけでなく、各器官やその筋力、各神経などを利用して使う言語は、その習得の個人差が大きいと言われています。よって、ある「ひとつのことだけ」遅れていても、他の力が十分に伸びていれば心配ないことが多いようです。医療機関での受診を検討する場合には、以下のマイルストーンより3ヵ月以上の遅れがあるかを目安にするとよいようです。

(1) 言語理解と言語表出という2つの視点で分類した場合のマイルストーン

① 言語表出

生後3~4カ月:笑う
生後7カ月:「あっあっ」「あうー」といった喃語を話す
1歳~1歳6カ月:意味のある言葉、単語などを話す
2歳~2歳6カ月:2~3語程度の文を話す
3歳:自分の名前を言う

② 言語理解

生後3~4カ月:音の出る方向を向く
生後9~11カ月:「ダメ」がわかる
1歳~1歳6カ月:簡単な指示がわかる

(2) 言語発達のチェックポイント

すでに見てきたように、言語の習得にはさまざまな力が必要なため、言語の状況からだけではなく、さまざまな面からその発達状況を見ていくことになります。言語に関わる発達の状況について、年齢別の具体的なチェックポイントには以下のような点があります。

① 生後1ヵ月:ものがふれると手を握る、大きな音に反応する

1) 元気な声で泣くか?
2) 体重が、1日あたり30~40gを目安に増えているか?
3) 体が柔らかすぎたり、反り返りやすかったりしないか?

② 生後3~4カ月:人の顔を見て微笑む、頚がすわる

1) 追視をするか?
2) 音に反応するか?

③ 生後6~8カ月:母親の顔がわかる、寝返りをする

1)腹ばいになって、てのひらで体を支えることができるか?
2)お座りができるか?
3)手を出して物をつかめるか?

④ 生後9~11カ月:つかまり立ちができる、人見知りをし始める

1) ハイハイができるか?
2) 指先で、物をつまめるか?
3) バイバイやマンマなど、簡単な模倣ができるか?

⑤ 1歳~1歳2カ月

1) 一人歩きができるか?
2) 「指さしによって、あれを取ってほしい」という意思を示せるか?
3) 物をつまんでビンに入れることができるか?

⑥ 1歳6カ月

1) ごっこ遊びができるか?
2) 「お口はどこ?」を質問すると、指さしで回答できるか?

⑦ 2歳:2つの言語による指示(●●に△△を渡して)に対応できる、2語文が言える

1) 走れるか?
2) ボールを蹴ることができるか?
3) マネをしながら直線を描けるか?
4) 目・鼻・口・舌・へそなどがわかるか?

⑧ 3歳:他者とのかかわりが持てる、自分の名前と年齢が言える

1) 三輪車に乗れるか?
2) 階段を両足交互で登れるか?
3) 自分の名前が言えるか?
4) はさみで直線が切れるか?
5) 高い・低い、長い・短い、赤い・青いなどがわかるか?

参考:
神戸大学大学院医学研究科・医学部ホームページ
こどもの言葉と発達の見方・促し方
http://www.med.kobe-u.ac.jp/pediat/pdf/morisada9.pdf

4. 言語障害や言葉の発達の遅れの診断 ~言語の習得の遅れの原因として考えられること

「図-言語習得の遅れの原因として考えられること」

言葉の発達の遅れの原因をみていく際には、次の順に、その原因・可能性を検討していくことになります。

(1) 生理的範囲の遅れではないか?

他の面がすべてその年齢で期待される水準であるのに、言葉だけが遅いという場合、生理的範囲の遅れである場合が多いと言われています。生理的範囲の遅れとは、自分の中には言葉が十分蓄えられていて話すことができる能力はあるのに、どこかの成熟が遅く、話し言葉となって表れない状況のことを言います。

たとえば、声を出そうとすると鼻にかかったり、鼻から抜けてしまったりすることで、発音が不鮮明になったり、間違った発音になってしまったりといった症状を特徴とする構音障害などは、この生理的範囲の遅れに当てはまります。

ただし、言葉だけが遅いという現象が起きるケースとして、養育環境に問題がある場合が少なからずあると言われています。親子や周囲との触れ合い、語り合いが少ないといったケースです。

いわゆる「おとなしい子」は、保護者の方や周囲に対する要求が少ない場合がありますが、このような場合、必然的に触れ合いや語り合いが不足しがちで、結果的に言語習得が遅れる可能性があるようです。

(2) 発達性言語障害によるものではないか?

次に検討するのは、発達性言語障害です。生理的範囲の遅れと同様、耳が聞こえ、言語理解もでき、その他の身体面での発達もその年齢で期待される水準であるのに、2歳になっても単語が言えない、3歳になっても2語文が言えないという場合のことを言います。

脳の成熟度が若干遅いために発生すると考えられていますが、自分の中には言葉が十分蓄えられている状態なので、脳の成熟が進めば、つまり、相応の時期がくれば、多くの場合は自然と言葉を話せるようになるとも考えられています。

(3) 聴覚障害によるものではないか?

聴覚に障害がある場合、どれだけ言葉の刺激を受けても、音が聞こえない、または音が聞こえにくいため、音声言語を正しく認識することができません。言葉が自分の中に入ってきにくい状態であるため、結果的に言葉が出てくることもないということになります。

なお言語習得の遅れの原因が聴覚にある場合、「聴覚障害」と診断されることになります。

(4) 知的障害によるものではないか?

 知的発達面で障害がある場合、言葉の刺激を受けても、それを取り入れにくい、自分の中にためていけない状態になります。これが結果的に言葉の習得の遅れにつながることになります。なお、知的発達の遅れによって言葉が遅れていたり、コミュニケーションが困難であったりする場合は、「知的障害」と診断されることになります。

(5) 脳障害によるものではないか?

脳障害には、脳性まひのようなものがありますが、言葉を聞く、それを理解する、そして発話するといういずれかの部分に障害があると、言語という面でも困難が生じることになります。

(6) 情緒障害によるものではないか?

 情緒障害のある場合、周囲に対する興味を持ちにくい面があります。これは、言葉という刺激に対しても同様です。たとえばADHDの場合であれば、集中することができないために、言葉を受け取ることができないといったように、何らかの障害が原因で、言葉による刺激を受け取りにくい状態になっていると言えます。

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参考:
神戸大学大学院医学研究科・医学部ホームページ
こどもの言葉と発達の見方・促し方
http://www.med.kobe-u.ac.jp/pediat/pdf/morisada9.pdf

J-Stageホームページ
言葉の発達の遅れで受診した3歳児の縦断的検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/24/1/24_1_3/_pdf

公益財団法人 母子健康協会
第二十四回 母子健康協会シンポジウム 保育におけることばの問題と対応
2 ことばの遅れと対応
http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no68/con05_11.htm

5. もしかしたらと思ったら

 もしかしたら言語障害かもしれないと思ったら、以下のような相談先や相談の場面があります。

子育て支援センター
乳幼児健康診査(乳幼児健診)
教育相談センター・教育センター
児童相談所
病院(小児科、神経科、小児神経科など)

最後に

 言語障害は、使われる場面やその文脈などで、それが何を指すのかが変わる面があるため、なかなか理解しにくい面があります。ただ、言語を使ってコミュニケーションをするには、非常に多くの力を必要とすることは明らかです。よって、言葉に関する問題を考えるときには、言葉を使うということがどういうことなのか? を知ることが大切だと言えます。そのことが、言葉に関する問題の原因を探ることにつながるからです。

また、言語の発達にはある程度のマイルストーンがあり、これを目安にすることはできますが、必要となる力を伸ばすためには、触れ合い、語りかける時間をたくさん作ることが何より重要であると言うことができるでしょう。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
文科省ホームページ
特別支援教育について (6)言語障害教育
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/006.htm

大阪観光大学図書館ホームページ
言語習得のメカニズム
http://library.tourism.ac.jp/no12HikamiIsao.pdf

新潟大学教育学部ホームページ
5.言語障害等
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/10201.pdf

神戸大学大学院医学研究科・医学部ホームページ
こどもの言葉と発達の見方・促し方
http://www.med.kobe-u.ac.jp/pediat/pdf/morisada9.pdf

J-Stageホームページ
言語獲得と理解の脳内メカニズム
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/60/1/60_60.1.4/_pdf
言葉の発達の遅れで受診した3歳児の縦断的検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/24/1/24_1_3/_pdf

公益財団法人 母子健康協会
第二十四回 母子健康協会シンポジウム 保育におけることばの問題と対応
2 ことばの遅れと対応
http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no68/con05_11.htm

医療法人社団ハートクリニック ホームページ
表出性言語障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/eld01.html
受容性言語障害/言語症/言語障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f80_receptive_language_disorder.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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