二次障害とは? ~元々の障害が引き起こす他の障害

発達障害

はじめに
 障害のある方は、元々の障害によるものだけではなく、二次障害という形で、さらに生活上の困難を抱えられる場合があります。ここでは、二次障害が、どのようにして起こるのか、また、二次障害を発症させないためにどうすればいいのか、ということについて、一つの視点をまとめています。

1. 二次障害とは?

「図-二次障害とは?」

そもそも二次障害とは、どのようなものを指すのでしょう? 障害がある場合、複数の障害が併存することが珍しくないと言われています。ただこれには大きく2つのパターンが考えられます。1つは、そもそも複数の障害があったという場合。もう1つは、元々ある障害が原因となり、別の障害を発症したという場合です。二次障害とは、後者のものを言います。

元々障害があったとしても、必ずしも別の障害、つまり二次障害を発症するわけではありません。元々ある障害について、治療などで適切な対応が取られなかったり、あるいは、その障害があることの大変さ、困難さが周囲の方々に理解されなかったりということなどが蓄積された場合、そもそもの障害とは別の情緒や行動面への二次的な問題が引き起こされる可能性があるということです。

心理や精神面だけでなく、身体面にも影響を及ぼすものもあるなど、さまざまな二次障害が明らかになっています。身体、精神、知的、発達など、障害の種類を問わず、多くの障害に、二次障害の発症リスクがあると考えられています。

2. 二次障害の具体的な例1 ~強迫性障害の二次障害

具体的な二次障害の例として、まずは、強迫性障害の場合について見ていきます。

(1) 強迫性障害とは?

① 強迫性障害とは?

強迫性障害は、不安障害の一種で、強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る障害です。たとえば、「手が細菌で汚染された」という強い不安にかきたてられて何時間も手を洗い続けたり、肌荒れするほどアルコール消毒をくりかえしたりするなど、明らかに「やりすぎ」な行為を伴います。

日常生活をおくる中で誰もがすることの延長線上にある障害であるため、特に初期の段階で判断するのは難しいと言われています。世界保健機関の報告では、生活上の機能障害を引き起こす10大疾患のひとつにあげられています。

② 強迫性障害の症状

強迫性障害には、大きくは「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状があります。

1) 強迫観念
強迫観念とは、頭から離れない強い考えのことです。その内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことができない、非常に強い不安感や恐怖感があります。対象物がない不安もありますが、ある特定の対象に対する不安感や恐怖感がある場合が多いようです。これらは「強いこだわり」という言葉で表現されることが多いようです。

2) 強迫行為
強迫行為とは、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為のことを言います。自分で「やりすぎ」「無意味」とわかっていてもやめられないのが特徴で、徐々に「自分はおかしい」「周囲から変だと思われてしまう」という恐怖も生じていきます。その結果、行動範囲が非常に狭くなっていくなどの状況になってしまう場合があります。

3) 代表的な強迫観念と強迫行為
強迫性障害について、強迫観念と強迫行為の関係からまとめると、以下のような症状が見られます。複数あること、あるいは障害の進行・改善の中で変わることも少なくなく、出現頻度も含めて、世界的にもほぼ共通と考えられています。

(2) 強迫性障害の二次障害としてのうつ病

強迫性障害を患う方は、他の精神障害が併存する場合が多くなっています。しかし、併存する精神障害は、その多くが強迫性障害発症後二次的に出現すると考えられています。その中で最も多いのが「うつ病」です。強迫性障害とうつ病との併存は、初診時の約30%で見られるとの報告があります。

うつ病とは、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由で脳の機能障害が起きている状態を言います。脳がうまく働かないことにより、ものの見方が否定的になり、また、自分がダメな人間だと感じてしまっている状態です。普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられる。そして、仕事・家事・勉強などで本来の力が発揮できず、人との交際や趣味など日常生活全般にも支障を来すようになる。そんな悪循環が起きているのが、うつ病の特徴です。

つまり、「強迫性障害により、不合理だと自分がわかっていてもそれを追い払うことができず、結果、強迫行為を繰り返すようになり、徐々に自分はおかしいと感じるようになる。それが原因で、ものの見方が否定的になり、抑うつ気分が重症化し、うつ病を発症してしまう」ということです。

3. 二次障害の具体的な例2 ~発達障害の二次障害

具体的な二次障害の二つ目の例として、発達障害の場合について見ていきます。

(1) 発達障害とは?

発達障害とは、広い意味での精神障害の一つです。ひと言で言うと、「脳の障害」で、何らかの原因で、脳の一部の機能がうまく働かないことによって引き起こされると考えられています。発達障害には、大きくは以下の3つの障害がありますが、発達障害そのものは知的障害を伴うものではありません。

① 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)

自閉症スペクトラム障害とほぼ同じ意味で使われています。(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。自閉症スペクトラム障害は、典型的には、対人関係やコミュニケーションが困難で、興味や行動への偏りが見られるという3つの特徴が現れる障害です。症状の強さによって、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害などいくつかの診断名に分類されますが、大きくは同じ1つの障害単位だと考えられています。

② 学習障害(LD)

全般的な知的発達には問題がないのに、「読む」「書く」「話す」「計算する・推論する」など、特定のことをするのが極めて困難な状態、障害です。

③ 注意欠陥多動性障害(AD/HD)

発達年齢に見合わない、「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が頻繁・強く認められる障害です。

(2) 発達障害と二次障害

発達障害のある方は、必ずしも知的障害を伴いません。そのため、その特徴が周囲の方からは理解されにくく、その結果、否定的な評価や叱責などの不適切な対応が生じている場合があります。そのようなことが積み重なると、障害のあるご本人の中に否定的な自己イメージが作られたり、自尊心が保てないといったことが起きたりします。この状態が作られたとき、以下のような二次障害を引き起こす可能性が出てきます。

① 行動面

極端な反抗や暴力、家出、反社会的な犯罪行為、神経症習慣など

② 心理面・精神面

不安や気分の落ち込み、強迫症状、対人恐怖、引きこもり、など

上記を具体的な障害名で示すと、以下のようなものがあります。

③ 不安障害

社会不安障害、分離不安障害、パニック障害、強迫性障害 など

④ 適応障害 ⑤ 身体表現性障害

転換性障害、小児心身症 など

⑥ 気分障害

うつ病 など

⑦ その他の疾患・障害

統合失調症、反抗挑戦性障害、行為障害

4. 二次障害を防止するために

「図-二次障害、防止のための3つのポイント」

ここまで見てきた2つの障害だけでなく、身体、精神、知的、発達などの障害のあるであることが他の障害を引き起こすリスクを高めている面があります。では、二次障害を引き起こさないために重要なことは何でしょうか?

(1) 二次障害を引き起こす原因となっている「元々の障害」の早期発見・早期治療

まず重要なのは、元々の障害の早期発見でしょう。障害は、元々本人にあるものでもあるため、治療によって障害自体がまったくなくなることはないと考えられています。一方で、症状を落ち着かせたり、またその落ち着いた状態の中で自分をコントロールできるようになることで、障害が引き起こす問題をなくすことはできるとも考えられています。

二次障害は、元々の障害が原因となって引き起こされるものなので、元々の障害をコントロールできれば、二次障害を引き起こすリスクは低減できるということになります。だからこそ、元々の障害の早期発見と早期治療が重要になる、ということなのです。

(2) 周囲の理解、という視点

また、障害があることがわかれば、様々な支援が可能です。しくみや制度として用意されている支援もあります。しかし重要になるのは、「障害があることとはどういうことなのか?」という、障害のある方を支援する方々の理解と実際の支援でしょう。

実際の支援の視点として、「知・情・意」というとらえ方があります。

① 「知」の支援

人にはそれぞれ、得意な認知パターンというものがあると考えられています。認知パターンとは、物事をどのように理解するかという方法とも言えます。たとえば、文章で理解するのは得意、数式などで理解するのは得意、図で理解するのは得意といったようなものです。他にも、耳で聞いて理解するのが得意、リズムでとらえるのが得意といったこともあるでしょう。

このようなそれぞれの得意な認知パターンを見分け、学ぶことのサポートをするといった支援は、非常に重要だと考えられます。

② 「情」の支援

「障害を理解されないということが、不安など招き、二次障害につながる。」
だとすれば、「不安に感じさせない」ということも重要な視点となるでしょう。自尊心を持てないこと、自信を持てないことが不安につながる面があると考えれば、好きなこと、できたこと、がんばったことなどを積極的にホメるといったことも大切なサポートになるのだと言うこともできるでしょう。

③ 「意」の支援

「意」とは、意志・意思のこと。つまり、これがやりたい、あれが好きといった、物事に対する積極的な姿勢と言い換えることができます。ホメることなどは、自発的な行動を促すことに有効と考えられていますし、その他にも目標を立てたり、目標達成のための計画を立てたりといったことも、積極的な姿勢を育てることに有効と言えます。

たとえそれが毎日ゲームをすることだったとしても、ゲームをやる上での計画、たとえば、1つ約束した行動ができたら10分ゲームができるといったような計画やルールでも、障害のある方ご本人の積極性につなげられる可能性もある、と言えるでしょう。

(3) 社会的な環境づくり、という視点

もうひとつ、社会的な「障害の理解」に関する環境づくりも重要です。日本においては、障害に対する偏見があるのは事実です。一方で、障害があることそのものを理解でき、あるいは、障害があっても実際に豊かな人生をおくれることを正しく認識できれば、徐々にではあっても偏見はなくなっていくのではないでしょうか。

むしろ、障害に対する正しい理解を通して、偏見がない社会を作っていくことが重要と言えるかもしれません。その意味で、障害のある方、そして、障害のある方を支援する方々が、積極的に情報発信していくことが重要ということなのかもしれません。

最後に

 これまで見てきたように、障害があることによって、あるいは、障害があることへの理解の不足によって、新たな障害を発症してしまうことを二次障害と言います。元々障害があることで、生活上のさまざまな困難を抱えられていることに加え、さらに別の困難が生じてしまう可能性があるということです。

一方で、適切な対応や環境により、二次障害を引き起こさせないようにすることは可能とも考えられます。元々の障害の早期発見と早期治療はもとより、障害に対する社会的な理解を深めていくことが二次障害をなくしていくために重要になると言えるでしょう。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 
みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease.html
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/
e-ヘルスネット ホームページ
強迫性障害 / 強迫神経症
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-014.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
松永寿人先生に「強迫性障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=22

発達障害教育推進センター ホームページ
二次障害の理解と対応
http://icedd.nise.go.jp/pdf/lecture/lecture-list/lecture-list019.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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