デジタルヘルス デジタル技術が精神障害や発達障害の治療法に?

発達障害

はじめに
 デジタルヘルスについて。「デジタル技術が精神障害や発達障害の治療法として利用されるようになる」と聞いて、みなさんはどのように感じられるでしょう? 「そんなバカな!」「そんなはずはない」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、その日はそれほど遠くない将来にやってくる可能性が高まっています。

 ここでは、デジタル技術の精神障害や発達障害の治療への適用の他、医療領域への適用について、最新の動向を中心にまとめています。

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1. デジタルヘルスという考え方
(1) 治療の中心は人と薬?

デジタル技術というと、医療とは遠い世界の話と感じてらっしゃる方も多いかもしれません。

精神障害や発達障害などに限らず、病気・疾患などさまざまな健康上の問題について、病院で診察するのは医師、そのサポートをするのは看護士や介護士といった「人」が中心ですし、カウンセリングや認知行動療法などを行うのも「人」が中心。

また、薬物療法では、その名のとおり「薬という具体的な物」が治療に利用されています。これらの事実が、医療の現場は「人と薬が中心」という印象を強めている面があるのかもしれません。

(2) 実際の医療の現場では、デジタル技術は使われる

しかしよくよく観察すると、デジタル技術は医療の現場でも、すでに活発に使われています。たとえば、検査では、CTやMRIといったデジタル技術が利用されていますし、リハビリの現場でもトレッドミルの他、多くのデジタル技術を駆使したリハビリ機器が利用されています。

手術にもデジタル技術は利用されていますし、カルテなどもデジタル化されています。つまり、その印象とは異なり、デジタル技術は医療の現場で多く取り入れられてきましたし、実際に取り入れられているのです。

他にも近年では、スマートフォンを使った健康管理アプリなどが話題になっていることをご存知の方も多いのではないでしょうか? 

(3) 広がるデジタルヘルス

「図-デジタルヘルスが広がる背景」

実は近年、デジタルヘルスという考え方が急速に拡大しています。

その市場規模に関してはさまざまなレポートがあるようですが、現時点でおおよそ2000~3000億ドルと推定されているようです。一方、世界の医薬品市場は、2016年時点で8500憶ドル程度と推計されていますので、医薬品市場の2~3割程度に相当する規模にまで、デジタルヘルス市場は成長していることになります。

中でもデジタル技術を治療に用いる「デジタル治療」は急拡大が見込まれると予想されているのです。

この背景には、少子高齢社会の到来に伴う医療費の急速な増加と、医薬品開発にかかる膨大な費用という2つの大きな社会問題があります。日本において社会保障費の伸びが著しいことは、ご存知の方も多いことでしょう。

2016年度予算ベースで118兆円あまり。2000年が78兆円あまりでしたので、この間で40兆円増加しています。このうち、医療費関連は38兆円程度で、同じく2000年と比較すると12兆円程度増加しているのです。この状況のまま今後さらに高齢社会が進むと、さらにその規模が膨らむことは容易に想像できます。

もう一つの医薬品開発コストの問題は、医薬品などの高額化につながり、結果として医療費がさらに拡大するという課題でもあります。難病治療薬などの開発が行われることは素晴らしいこと。ただ、その開発には10年以上の年月と、数千億円の費用がかかると言われています。

その費用は、当然治療薬の「価格」に反映されることになり、中には数千万円にもなると予想されている高額治療薬もあります。もちろんその有効性次第ではあるものの、これらの高額治療薬も順次保険適用が見込まれることから、社会保障費がさらに急速に増加する可能性があるのです。

高齢化に伴う社会のニーズと、医薬品開発にかかる費用。この2つの課題を同時に解決できる可能性があるものとして注目されているのがデジタルヘルスなのです。

(4) 医療のトレンド

デジタルヘルス、つまり、ITやデジタル化が医薬品業界やヘルスケアに与える影響については、いくつかの傾向が見られます。特に、医療サービスを受ける側の視点に立つと、次のような傾向を見て取れます。

① 医師をはじめとした医療提供側とのコミュニケーションの円滑化

一つ目は、「診療、検査、治療や疾病管理は、これまで以上に疾患や障害のある側、つまり医療の利用者である私たち自身がこれまで以上に関わりを持てる。なぜなら、その状況などについて最新の情報を持ち、また、その内容を積極的に医療提供側である医師などに連携できるようになるからだ」とする考え方です。

つまり、医師などに「聞かれる前に、自ら情報を出すこと」と言い換えられますが、デジタル技術を利用すれは、それを意図せずとも行えるようになる可能性が高まります。

たとえば、スマートフォンのアプリケーションなどを利用して、日々の歩行距離などを記録しておけば、その情報は自動的に医師などに伝えることも技術的には可能。このようなデジタル技術の使い方が複数生まれてくると想定されるわけです。

② 「医薬品×サービス」の拡大

従来の医療は、もちろん治療やリハビリテーション、認知行動療法などもあるものの、医薬品によるものが大きなウェイトを占めていた面があります。このことは、さまざまな症状が見られるとき、薬を飲んで症状を和らげる、あるいは、症状を治す、という行動をすることが多いことを考えるとわかるのではないでしょうか。

しかし、医療の役割は、薬による症状の緩和だけではないのも事実。また、仮に服薬を指示されたとしても、それを実際に行わなければ効果はあらわれません。つまり、服薬を指導するようなサービスなどもセットになっていれば、より効果的な医療が提供される可能性が高まると考えられるわけです。

他にも、インターネットを通じた情報提供なども、大きな役割を担うはず。情報がないから不安になり、必要でない診察を受ける、あるいは、病院などを利用するというケースも多く存在するからです。このように、医療は、医薬品の提供のみに頼るのではなく、サービスの提供と相まって、その効果が高まる可能性を秘めていると考えられるということです。

③ 医薬品の性能の向上

①・②のような医療が発展すると、その分、多くの情報を入手できることになります。たとえば、医薬品をどれぐらい服用したか、などの情報が入手できれば、その効果検証と合わせて治療の精度が上がっていくことになります。

つまり、多くの情報を収集・分析すれば、どのような状態のときに、どのような医療を提供すべきか、その効果を、より高い精度で測定・評価することが可能になると考えられるわけです。

昨今では、さまざまな領域で「ビッグデータの活用」や「ディープラーニングを駆使したAI開発」などが話題となっていますが、医療の領域でも同様の考え方ができるということになります。

④ 検査の向上

医薬品の性能の向上と同様のことは、検査においても当てはまります。

つまり、情報を収集し分析すれば、どのような状態のときに、どのような検査を実施するのが最適なのか、その精度が高まることによって、不必要な検査をしないで済むようにもなると考えられるわけです。

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内閣府
社会保障給付費の推移等
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281020/shiryou1_2.pdf

日本貿易振興機構
米国における医療関連市場動向調査
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/2d86e22aeac9d7dd/rp_us.pdf

ATカーニー
デジタルヘルスを取り巻く環境変化
https://www.atkearney.co.jp/documents/4409500/5980522/Agenda_Vol3_Goto.pdf/68913690-1ec8-4e58-bd69-2e254e942a57

2. 精神疾患・精神障害などと相性の良いデジタル治療
(1) 海外で先行するデジタル治療

デジタルヘルスの中でも、デジタル技術をさまざまな疾患・障害の治療や、その症状の緩和に利用することをデジタル治療と呼びます。デジタル治療については、米国が、ソフトウエアを使った薬や医療機器を承認する制度をいち早く整備し、既に治療用アプリケーションでは複数の承認例が出ています。

その一例が、アルコール、麻薬、コカイン、覚醒剤中毒の治療に関するもの。この治療法は、デジタルアプリケーションを通じて医師と患者とがコミュニケーションをはかることで、患者の行動を変えることを促進し、中毒症の治療を行う、というものです。

他にも麻薬性鎮痛薬であるオピオイド依存症に対する治療の他、ADHDや自閉症スペクトラム障害などの発達障害、糖尿病、喘息などで、デジタル治療の承認や臨床研究が進められています。

(2) デジタル治療は精神障害や発達障害と相性が良い?

実は、精神疾患・精神障害の治療とデジタル技術は相性が良いと考えられています。というのも、たとえば薬の飲み忘れや自己判断による服薬の中止を発見し、医師が指導に役立てられるといった具合に、デジタル技術のさまざまな活用法が検討できるからです。

実際大塚製薬が米国での発売を予定しているうつ病治療におけるデジタル治療薬は、錠剤が胃で溶けるとセンサーが信号を発し、患者の腹部に取り付けた検出器で受信するというもの。スマートフォンアプリに服薬時刻を送ることで、医師による指導などに役立てることが、この治療薬の狙いとなっているそうです。

参考:
日本貿易振興機構
米国における医療関連市場動向調査
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/2d86e22aeac9d7dd/rp_us.pdf

ATカーニー
デジタルヘルスを取り巻く環境変化
https://www.atkearney.co.jp/documents/4409500/5980522/Agenda_Vol3_Goto.pdf/68913690-1ec8-4e58-bd69-2e254e942a57

3. 日本における精神疾患・精神障害などへのデジタル治療の活用

「図-精神疾患や発達障害を含む精神障害とデジタル治療」

(1) 2014年薬事法改正で、デジタル治療拡大に向けたしくみができる

海外で先行するデジタル治療ですが、日本ではどのような状況にあるのでしょう?

実は、2014年、従来の薬事法が改正されて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、医薬品医療機器等法)」が施行されました。

従来はソフトウェア部分のみでは薬事法の規制対象とならず、ハードウェア部分に組み込んだ形で規制されていましたが、この法律では、ソフトウェアを単体で流通することを可能とし、「医療機器プログラム」として規制対象とすることとなりました。

「規制」と言うと、制限の面ばかりに目が行きがちなのですが、実はこの規制が意味するのは、「デジタル治療のアプリケーションを、医師が処方したり、健康保険を適用したり、といったことが可能になった」ということなのです。

(2) 2019年にも、日本でもデジタル治療の保険適用第1号が誕生する?

このような制度が整えられる中で、日本でも、製薬各社がデジタル治療の開発が進められています。先に取り上げた大塚製薬のうつ病治療薬の他、塩野義製薬は国内で2019年中に、発達障害の一つである子どものADHDの治療に用いるビデオゲームアプリの臨床試験を始めるとのこと。

このビデオゲームアプリは今年中にも、日本国内で保険適用される「治療法」になるのではないかと、注目を集めています。その他にも、大日本住友製薬は認知症に伴ううつ症状や幻覚を緩和するアプリケーションの開発に着手しているとのことです。

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参考:
公益財団法人医療機器センター
医薬品医療機器等法における医療機器プログラムの取り扱い
http://www.jaame.or.jp/mdsi/program.html

京都府
医療機器プログラムについて ~該当性と医療機器化への対応~
http://www.pref.kyoto.jp/yakumu/documents/kouen2.pdf

大塚製薬
デジタル治療処方アプリの開発・商業化におけるグローバルライセンス契約を締結
– 大うつ病に対する世界初のデジタル治療処方アプリとして承認を目指す –
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2019/20190104_1.html

塩野義製薬
デジタル治療用アプリ AKL-T01、AKL-T02 の導入に関するAkili 社とのライセンス契約締結について
https://www.shionogi.co.jp/company/news/2019/qdv9fu000001fvp2-att/190307.pdf

4. 医療の未来像と精神疾患・精神障害などに与える影響
(1) デジタルヘルスが利用される領域

「図-デジタルヘルスが利用される領域」

ここまで見てきたように、デジタル治療をはじめとするデジタルヘルスは、大きな社会問題を解決する大きな可能性を秘めていると考えられます。そして、その領域は、①予防に利用するもの、②検査・診断に利用するもの、③治療に利用するもの、そして、④予後の観察・モニタリングに利用するものに分けてみていくことができます。

(2) デジタルヘルスで今後開発が進むことが予想されるサービス

 デジタルヘルスで今後開発が進むと予想されるサービスは、医療を提供されるわたしたち患者向け、提供する医師など向け、そして、国や健康保険組合などその費用の一部を負担する保険者向けのものが考えらえます。

① 患者向けサービス

 健康管理と予防、各種疾患や健康管理に関わる教育、既往症等の管理、服薬継続サポート、予後観察の遠隔対応などでの利用が想定されます。

② 医療提供側向けサービス

 診断・検査のサポート、治療のサポート、治療プロセスの最適化などでの利用が想定されます。

③ 保険者向けのサービス

 医療機関の評価、新治療法としての採用時の医療費に与える大きさ・効果の評価などでの利用が想定されます。

(3) 精神疾患・精神障害とデジタルヘルス

(1)(2)で整理したことは、精神疾患や発達障害を含む精神障害の治療においてもあてはまります。と言うよりはむしろ、デジタルと相性が良さから、精神疾患や発達障害を含む精神障害の分野が先行する可能性が高いとも考えられます。

つまり、うつ病や中毒症、強迫性障害などの予防や診断、治療に利用するものの開発や、服薬や認知行動療法の継続モニタリングとアドバイス、その遠隔対応の他、治療法そのものとしての開発も進んでいき、より効果の高い治療を得られる可能性が高まると考えられるのです。

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参考:
日本貿易振興機構
米国における医療関連市場動向調査
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/2d86e22aeac9d7dd/rp_us.pdf

ATカーニー
デジタルヘルスを取り巻く環境変化
https://www.atkearney.co.jp/documents/4409500/5980522/Agenda_Vol3_Goto.pdf/68913690-1ec8-4e58-bd69-2e254e942a57

最後に

 近年、デジタルヘルスという考え方が急速に広まっています。その中で、デジタル技術を治療に利用するのが「デジタル治療」で、現在は、米国を中心に海外が先行している状況です。

日本では、塩野義製薬が発達障害の一つである子どものADHDの治療に用いるビデオゲームアプリの臨床試験を始めるとのことで、2019年中にも、日本国内で保険適用される「治療法」になるのではないかと、注目を集めています。

他にも、うつ病治療や依存症治療など、精神疾患や発達障害を含む精神障害の分野での研究も進められています。

デジタル技術は、精神疾患や発達障害を含む精神障害の治療と相性が良いと考えられている面があります。服薬忘れや自己判断による服薬の中止を発見し、医師が指導に役立てられるなど、デジタル技術のさまざまな活用法が検討できるからです。

そのように見ると、「デジタル治療」は、精神疾患や発達障害を含む精神障害の分野が推進すると言っても過言ではないのかもしれません。それ以前に、精神疾患や発達障害を含む精神障害の非常に効果の高い治療法となる可能性もあるのです。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府
社会保障給付費の推移等
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281020/shiryou1_2.pdf

日本貿易振興機構
米国における医療関連市場動向調査
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/2d86e22aeac9d7dd/rp_us.pdf

公益財団法人医療機器センター
医薬品医療機器等法における医療機器プログラムの取り扱い
http://www.jaame.or.jp/mdsi/program.html

京都府
医療機器プログラムについて ~該当性と医療機器化への対応~
http://www.pref.kyoto.jp/yakumu/documents/kouen2.pdf

大塚製薬
デジタル治療処方アプリの開発・商業化におけるグローバルライセンス契約を締結
– 大うつ病に対する世界初のデジタル治療処方アプリとして承認を目指す –
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2019/20190104_1.html

塩野義製薬
デジタル治療用アプリ AKL-T01、AKL-T02 の導入に関するAkili 社とのライセンス契約締結について
https://www.shionogi.co.jp/company/news/2019/qdv9fu000001fvp2-att/190307.pdf

ATカーニー
デジタルヘルスを取り巻く環境変化
https://www.atkearney.co.jp/documents/4409500/5980522/Agenda_Vol3_Goto.pdf/68913690-1ec8-4e58-bd69-2e254e942a57

日本経済新聞
塩野義製薬、米Akili社とデジタル治療用アプリAKL-T01・AKL-T02の導入に関しライセンス契約を締結
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP504597_X00C19A3000000/
アプリで治療、普及前夜 塩野義や大塚が治験
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44583130Z00C19

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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