ディスグラフィア(書字障害)とは? 

発達障害

はじめに
 ディスグラフィアは、書字障害とも呼ばれ、学習障害の一つに位置づけられます。文字を読むことに関する学習障害であるディスレクシアとあらわれる症状に重なるところもあり、明確な定義がしにくい部分がありますが、発達障害が社会で注目を集めるようになる中で、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。とはいえ、その理解は、まだまだ深まっているとは言えないのではないでしょうか。ここでは、ディスグラフィアとはどのようなものなのか、その主な症状や特徴、診断方法、支援にあたっての具体的な方法などについてまとめています。

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1. ディスグラフィアとは?

「図-ディスグラフィアとは?」

(1) ディスグラフィアとは?

 ~能力十分・努力もしているのに、文字を書くことが困難な状態

ディスグラフィアは、学習障害のうち、文字を書くことに困難があることを表しています。精神障害の診断で国際的に用いられるものに、米国精神医学会が発行する「精神障害の診断と統計マニュアル」(=DSM)がありますが、この最新版であるDSM-5においては、読字障害などを意味する「ディスグラフィア」や、算数・数学障害などを意味する「ディスカリキュア」などと合わせて、「限局性学習症/限局性学習障害」の1つとされており、「綴字の困難さ・文法と句読点の正確さ・書字表出の明確さまたは構成力といった書字表出の障害を伴う」ものとされています。

また、日本の行政施策上用いられることの多いWHOの診断基準であるICD-10においては、「特異的読字障害」にあたると考えらえます。つまり、知能面での遅れがなく、視覚や聴覚にも障害がないのに、また、十分な教育とご本人による努力がされているのに、知的能力から期待される書字能力を獲得することに困難がある状態のことだと言うことができるでしょう。

学習上の困難を伴うことになることから、「学習障害」に位置づけられますが、日本では、「書字障害」「書き字表出障害」などと呼ばれることもあり、また、読むことに困難があるディスレクシアに伴って生じる場合は「読み書き障害」と呼ばれたりすることもあります。

分類上の話や診断名などはともかく、「文字を書くことが困難」という意味で、単に書くのがニガテということとは質的に異なります。努力していないから書けないわけではないということです。

(2) ディスグラフィアの方の数

ディスグラフィアの方が日本でどのくらいいらっしゃるかというディスグラフィアに絞ったデータはありません。日本の調査データで最も近いものでは、文科省が2012年に実施した大規模調査がありますが、この結果によると、ディスグラフィアを含む「知的発達に遅れはないものの学習面で著しい困難を示す方の割合」、つまり、学習障害のある方の割合で4.5%とされています。

参考:
厚労省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

文科省ホームページ
通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf

医療法人社団ハートクリニック
特異的綴字[書字]障害
http://e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f81_specific_spelling_disorder.html

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル、日本精神神経学会、医学書院

2. ディスグラフィアの原因

「図-ディスグラフィアの原因と症状・特徴」

ディスグラフィアは、以下のようなことが原因で引き起こしているのではないかと考えられる一方で、人それぞれの部分があるとも考えられています。つまり、その原因やメカニズムは、今のところ明確にはされていないということです。

(1) ディスグラフィアの原因として考えられていること

① 視覚情報処理の問題

視覚情報処理とは、目で見てそれを認識することを言います。文字を構成する部分の位置関係や大きさを把握したり、部分を組み合わせて1つの文字に構成したりする働きのことを言います。特に読めるのに書けないという場合、この視覚情報処理に問題がある可能性が指摘されています。

アルファベットは比較的単純な文字の形をしていますが、日本語の場合、ひらがな、カタカナ、漢字と種類も多く、また、特に漢字は複雑な形のものも多くなります。このため、幼児期には気づかずに、小学校入学以降、学年が進む中で気づく場合もあります。

② 音韻処理の問題

音韻処理とは、会話などの一連の音刺激に対して、最小の音の単位を認識・処理する能力をさします。たとえば、「たいこ」という発話を聞いたとき、それが3拍で構成されていて、真ん中の音が「い」である、といったことなどを認識する能力のことです。

この能力は、文字を読む能力と強い関わりがあると考えられていますが、読むことが難しいと書くことも難しいと考えられるため、ディスレクシアに伴うディスグラフィアの場合の原因ではないかと指摘されています。

③ 発達性協調運動障害が関与

 発達性協調運動障害とは、両手、手と目、手と足などを同時に使う運動である協調運動が、ご本人の年齢や知能面から期待されるよりも不正確であったり、困難であったりする障害です。日常生活の行動がうまくできない障害で、たとえば、階段をつかったり、自転車をこいだり、シャツのボタンをかけるといったことがうまくできない、できても非常に時間がかかるといったことが見られるものです。

文字を書く、ということは、指先の細かい作業が必要であり、また、目などの感覚器官からの情報と指先の作業という協調運動が必要になるため、上手く書けないという症状としてあらわれる場合があります。また、筆圧の弱い薄い文字は、筋力が弱いことで、鉛筆などの筆記用具がうまく握れないという場合も考えられます。

(2) ディスグラフィアに見られる主な特徴

 ディスグラフィアの書字に見られる主な特徴としては、ディスレクシアとの関係も含めて、以下のようなものが想定されます。

① 書く文字が判読できない
② 書く文字が、マス目や行からはみ出す
③ 鏡文字を書くなど、正しい文字が書けない
④ 文法などがうまく使えない
⑤ 句読点を打つ位置が不適切 など

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参考:
一般社団法人 日本ディスレクシア協会 ホームページ
ディスレクシアとは
http://jdyslexia.com/about.html

NPO法人EDGE ホームページ
ディスレクシアとは
http://www.npo-edge.jp/educate/what-is-dyslexia/

医療法人社団ハートクリニック
特異的綴字[書字]障害
http://e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f81_specific_spelling_disorder.html
医療法人社団ハートクリニック
特異的綴字[書字]障害
http://e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f81_specific_spelling_disorder.html
運動機能の特異的発達障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/msd01.html

3. もしかしたらディスグラフィア? と思ったら
(1) なるべく早く専門機関に相談を

ディスグラフィアの症状が見られたら、なるべく早期に専門機関での診断を受けることをおすすめします。ディスグラフィアには、これまで見てきたような特徴がありますが、その特徴に合わせた支援に関する知見は、専門機関でないと得られにくいのが実情だからです。

(2) 支援機関

子どもか大人かによって、支援の中心となっている専門機関が異なります。以下が主な支援機関となります。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所

参考:
東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

4. ディスグラフィアはどのように診断されるか?

ディスグラフィアを含む学習障害の診断は、先にもご紹介したDSM-5やICD-10による診断基準を用いて行われます。後天性の障害とを区別するためなどの視点から脳の異常が見られないか、学習障害の基準の一つとして知的障害の有無、そして、どのような点で困難があり、その困難が「読字」「書字」「算数・数学」面のうち、どこに偏りがあるのかを見ていくことになります。以下は、DSM-5での診断基準のポイントを簡易に表現したものです。

(1) 学習やその能力を使うことに困難があり、その困難を低減・解消する支援が行われても、次の症状のうちの1つ以上が6カ月以上継続している

① 文字を読むことが、遅かったり、時に間違ったりするなどにより、努力が必要
② 読んでいるものの意味を理解することが困難
③ 文字の書き間違えなどが見られる
④ 書いて表現することが困難
⑤ 数字の概念・数値・計算する力を身につけることが困難
⑥ 問題を解くときに数学の概念を用いるのが難しい

(2) 困難のある学習面での能力は、その学齢で求められる状態と比較して極端に低く、学校生活や就労、日常生活を送ることに困難がある

(3) 学習障害は、学齢期に見つかるがその程度はそれぞれ異なるため、見つかる時期は早い場合もあれば比較的遅い場合もある

(4) 学習障害は、知的障害、非矯正視力や聴力、他の精神疾患、心理社会的逆境、指導上の言葉の習熟度不足、不適切な教育的指導では、十分説明しきることができないものである

参考:
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル、日本精神神経学会、医学書院

5. ディスグラフィアと診断されたら
(1) 治療方法

 ディスグラフィアを含む学習障害については、今のところ医学的な方法による根本的な治療法はありません。また、ディスグラフィアの場合、たくさん練習すれば字が書けるようになるというわけではない一方で、適切な支援をすることで、その困難の度合いは、ある程度までは軽減されると考えられます。

(2) ディスグラフィアにより生じる問題と具体的な支援の方法

 ディスグラフィアに伴う困難とその対処法を、具体的な例として見てきます。

① 文字が書けないという場合

たとえば、文字をイメージしやすくなるようなイラストを利用するといった方法があります。また、漢字の場合は、「へん」と「つくり」などをパーツに分解したものを使い、パズルのようにして組み合わせて1つの漢字を作るといった方法などもあります。

② 文字のバランスが悪いという場合

文字がバランスよく書けない場合、一文字を書く大きさを一つのマスとし、そのマスを4分割して書き方を覚えるような方法があります。マスの中で文字を書くと、4分割されたそれぞれの部分で書いたものがどの程度を占めるのかを覚えていくという方法です。その際、一つのマスを4色にブロック分けすると効果が得られやすいという報告もあります。

また、細かく手を動かすことが難しいというような場合は、大きなマス目のノートを使うといった方法や滑り止めのついた下敷きを使うような方法も考えられます。

③ 似た文字を書き間違えるという場合

ひらがなでは「め」と「ぬ」、「わ」「ね」「れ」、漢字では「手」と「毛」、「図」と「団」、「舌」と「告」など、形が似ているものは混乱してしまう場合が考えられます。このような場合、違いに着目するという方法があります。違う部分を○で囲んだり、色を着けて目立つようにしたりして覚えるというような方法です。間違い探しのようなゲーム的要素を取り入れるという方法もあります。

④ 鏡文字を書くことがあるという場合

鏡文字は、必ずしもディスグラフィアが原因とは限りませんが、左右の認識ができていないようであれば、まずは、それを覚えることが必要です。たとえば、どちらの手を使って字を書くかなどを見定めて、「字を書く方の手が右」と覚えるというようなところから始まり、「右手で○○してみよう」「左足から△△してみよう」というような声がけを行っていくというような方法です。

その上で、文字を書く際に、右、左を強調した声がけをしながら覚えていくというような方法が考えられます。

⑤ 鉛筆など筆記用具をうまく使えない、という場合

鉛筆のような筆記用具は、細い物より太い物を使うと良いと考えられます。筆記用具は、「親指・人差し指・中指で鉛筆をつまんで動かすこと」と「薬指と小指で安定させること」が必要になります。つまり筆記用具を使うには、指の協調運動が必要になるというとらえ方できるのです。また、筆圧が弱い場合もあるので、芯の柔らかいものを使う方が使いやすい場合があります。市販の補助グッズを使って持ちやすいようなら使ってみてもよいでしょう。

また、指を動かす運動をして、鉛筆をつまむ力や安定性を高めることも効果が得られる可能性があります。

⑥ 板書をノートに書き写すのが難しい、という場合

 授業中の板書をノートに書き写すことには、文字を書くことの訓練、学んだことの記録など、複数の目的があります。逆に言えば、どうしても文字が書けないのに、学んだことの記録という目的が果たせない状態であるなら、それは記録できないという点で問題があるということになります。文字を書くために必要な訓練は行うにしても、状況によっては板書を写真で撮らせてもらうなどの合理的な配慮を学校に求めることも必要と言えるでしょう。

 ある程度文字が書けるようになれば、図や絵などを用いて授業の内容をノートに記録するという方法も考えられるでしょう。他にもICTを活用することで、ディスグラフィアに伴う困難を補うことができる可能性もあります。たとえば、キーボード操作を覚えることができれば、書くことが問題にならない場合もあるというような考え方です。
 
(3) そもそもディスグラフィアを理解する

さまざまな支援を考える前に、ディスグラフィアに関する正しい理解をすることが大切と言えます。先天性の障害であること、知的能力に問題はないこと、単に書くことが苦手というようなものではないこと、読字障害であるディスレクシアに伴う書字障害の場合もあることなどです。

書くことに問題があるという点を前提にすれば、さまざまな支援の方法を考えていくことも可能と考えられますし、「がんばっているのにできない」という、ディスグラフィアをお持ちの方の気持ちの理解にもつながると言えるのではないでしょうか。

参考:
厚労省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

国立研究開発法人科学技術振興機構 ホームページ
発達性読み書き障害児における実験的漢字書字訓練
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/46/1/46_1_10/_pdf/-char/ja
仮名と漢字に特異的な読み書き障害を示した学習障害児の仮名書字訓練
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/39/3/39_3_274/_pdf/-char/ja
視覚的認知障害を伴い特異的な漢字書字障害を呈した学習障害児の1例
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/28/5/28_5_418/_article/-char/ja/

科学技術・学術政策研究所 ホームページ
読み書きのみの学習困難(ディスレキシア)への対応策
http://data.nistep.go.jp/dspace/handle/11035/1557

NII学術情報ナビゲータ ホームページ
読み書き障害のある子どもに対する支援―学校における「今すべき」支援とは―
https://ci.nii.ac.jp/naid/110010028346

医療法人社団ハートクリニック
特異的綴字[書字]障害
http://e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f81_specific_spelling_disorder.html

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最後に

 ディスグラフィアとは、学習障害に位置づけられるものです。視覚情報処理や音韻処理などの脳機能の問題が原因で、努力しているのに文字を書くことができない、間違える、文法を使えないなどの問題が生じていると考えられています。周囲の理解が得られないと、「がんばっているのにできない、自分はできない子」という感情が芽生えやすいものでもあると言えるでしょう。

ただ、適切な支援が受けられれば、訓練の下で必要な力を身につけていったり、実際に書くこととは異なる手段で書くことの代替え手段を身につけられたりといったことが考えられます。

また、合理的な配慮という視点から、学校や社会などの生活の場も必要な対応をしていくことが大切になると考えられます。「これをやればいい、あれをやればいい」という考え方ではなく、ディスグラフィアを含む学習障害とは何かを理解し、何ができるかを考えていくことが重要であるとも言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイト、及び資料は、下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
学習障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

文科省ホームページ
通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf

東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

国立研究開発法人科学技術振興機構 ホームページ
発達性読み書き障害児における実験的漢字書字訓練
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/46/1/46_1_10/_pdf/-char/ja
仮名と漢字に特異的な読み書き障害を示した学習障害児の仮名書字訓練
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/39/3/39_3_274/_pdf/-char/ja

医療法人社団ハートクリニック
特異的綴字[書字]障害
http://e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/f81_specific_spelling_disorder.html
運動機能の特異的発達障害
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/senmon/f80/msd01.html

一般社団法人 日本ディスレクシア協会 ホームページ
ディスレクシアとは
http://jdyslexia.com/about.html

NPO法人EDGE ホームページ
ディスレクシアとは
http://www.npo-edge.jp/educate/what-is-dyslexia/

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル、日本精神神経学会、医学書院

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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