片づけられない・・・その原因はADHDかもしれません

ADHD 片付けれられない
発達障害

はじめに
やる気はあるのに片づけられないとしたら、もしかするとその原因はADHDにあるかもしれません。ここでは、ADHDにまつわる問題行動の一つ、「片づけられないこと」について考察します。

なぜ、片づけられないのか、その具体的な対応方法などについてまとめています。



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1. 片づけようと思っているのに全然片づかない・・・その原因はADHDかもしれません

「図-その困り事の原因はADHDかもしれません」
その困り事の原因はADHDかもしれません

(1) 片づけられない原因は、障害の可能性がある

「片づけようとは思っているのに片づけられない」「片づけを始めると余計に散らかってしまう」「片づけを始めても他に気を取られて進まない」

ひと言で「片づけができない」といっても、片づける意志がないということと、片づけようとしても片づかないということとでは、その意味が大きく異なると言えるのではないでしょうか。片づける意志がないのであれば、片づけをするよう強制するという方法も考えられます。

一方で、「片づける意志はあるのに片づかない」ということであれば、どうしたらよいのか途方に暮れてしまうのも事実でしょう。

このように、「片づける意志はあるのに片づかない」あるいは、「片づけを始めても片づけが進まない」という場合、何らかの問題を抱えている可能性があると考えた方がよいということでもあります。その原因として一つ考えられるのがADHDという障害の可能性です。

たとえば、以下のようなことがあてはまるようなら、ADHDの可能性を考える必要があると言えます。

① 部屋が散らかっている
② 食べたら食べっぱなし、脱いだら脱ぎっぱなし、使ったら使いっぱなし
③ 必要なものが見つからない、いつも探し物をしている
④ モノが散乱しているところを見るとイライラして、気分が落ち着かない
⑤ 収納する場所に統一性がない、普段使うものとほとんど使わないものが混じる、たとえば衣服と文房具が同じ場所にある、本と本の間に食べ物が混じっている、衣服がたたまれず収納されていない

【関連記事)
注意欠陥多動性障害(AD/HD)とは?
https://jlsa-net.jp/hattatsu/adhd/

(2) 他にも次のようなことがあてはまるなら・・・

他にも次のようなことが複数あてはまるようなら、ADHDであるがために片づけられないという問題を引き起こしている可能性が高くなります。

① 忘れ物が多い
② 目新しいものが好き、何かを始めても中途半端に終わらせる
③ 一つのことに注意が行くと、他のことを忘れてしまう
④ やらなくてはならないことを先延ばしする、計画的に物事を進めることができない
⑤ 単純作業などをすると間違いが多い

参考
公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39

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2. ADHDの代表的な特性

「図-ADHDの代表的な特性」
ADHDの代表的な特性

(1) ADHD、その代表的な3つの特性

ADHDは、大きくは次の3つの特性が見られる障害です。つまり、ADHDの特性が「片づけられない大元の原因となっている」可能性があるということなのです。すべての特性が見られる場合もありますが、不注意が中心に見られる場合、多動性と衝動性とが中心に見られる場合の大きくは3つのタイプがあると考えられています。

① 不注意

注意が足りなかったり、配慮が欠けていたり、うかつであったりといった特性です。危険に気づかなかったり、何もないところでつまずいたり、刃物を普通に使うだけで傷をつくることが多かったりということを起こしやすいという傾向が見られます。

② 多動性

場面や状況に応じて集中することが難しく、絶えず動き回わっている状態が見られるという特性です。順番を待てなかったり、子どもの場合では、授業中に教室の内外を落ち着きなく徘徊したりといった行動が見られます。

③ 衝動性

悪い結果になってしまうかもしれない行動であるのに、あまり深く考えずに行ってしまうという行動特性です。欲しいと思ったら必要かどうかよく考えずに買ってしまったり、良いと思ったらすぐに取りかかるのに、最後までやり続けることができなかったりといった傾向が見られます

(2) 不注意・多動性・衝動性という3つの特性が引き起こす困りごと

この3つの特性は、決してマイナスの面ばかりではありません。たとえば、多動性や衝動性に見られる行動力は良い結果に結びつくこともありますが、多くの問題を引き起こす場合もあります。3つの特性が引き起こす問題は、たとえば次のように整理することもできます。

不注意・多動性・衝動性という3つの特性が引き起こす困りごと

【関連記事】
ローナ・ウィングの3つ組 ~アスペルガー症候群に見られる代表的な特性と3つのタイプ
https://jlsa-net.jp/hattatsu/wing-aspe/

参考:
公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39

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3. 片づけられないことの悪影響

「図-片づけられないことの悪影響」
片づけられないことの悪影響

「片づけられないこと」、は、部屋が散らかるといったことだけが問題になるわけではありません。片づけられないことにより、次のような困りごとが出てくる場合が多くなります。

(1) 必要なものが見つからない、見つけられない。見つけるのに時間がかかる。結果、やらなければならないことができない、あるいは、やり終えるのに時間がかかる。
(2) 「散らかっていること」自体が、一緒に生活する家族を怒らせてしまう。ご本人の気持ちを滅入らせる。
(3) 「散らかっている」のは、自分のせい。自分はダメな人間だと考えるようになる。

ご本人は、「片づける必要がある」と思っているのに片づかないという点が最も厄介です。次第に自分をダメな人間だと考えるようになりがちで、場合によっては、他の精神障害などを引き起こす可能性も出てくるからです。

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39

4. 片づけられるようになるために・・・その基本的な対策

片づけられないことが、非常に多くの問題を引き起こす可能性があります。それがわかったとして、では、どうしたら片づけができるようになるのでしょうか? 

(1) ADHDを根治することはできないから・・・

現代の医学ではADHDを根本的に治療することはできません。薬が処方される場合は、多動など、個別の症状を軽減したり、集中度を一定程度維持したりすることなどが目的になります。このため、「どのようにしたら困り事を回避できるか」という視点でのスキルの獲得が重要となります。

困らないための必要なスキルを身につけるには、なるべく幼い時から学ぶ方が望ましいと考えられています。このため、「もしかしたら・・・」ということがあれば、なるべく早く専門機関に相談することをおすすめします。将来に渡ってどんな困りごとが出てくる可能性があるのか、そのために、どんなスキルを身につける必要があるのかなどを理解し、実際に対策をしていくことが可能になります。主な専門機関は次のとおりです。

① 専門医:精神科、心療内科など
② 支援機関:発達障害者支援センターなど

(2) 「片づける」ためのスキル

「図-片づけスキルのポイント」
片づけスキルのポイント
専門機関での診断を受けたとしても、診断を受けること自体は「片づけられない」という困りごとの直接的な解決にはならないと言えます。では、実際にどうしたら片づけられるのでしょう? 次に片づけるためのポイントとして考えられるものを見ていきましょう。

① 減らす

片づけの得意な人であっても、モノが多いという人は、それだけ多くの工夫をすることが必要になります。片づけがニガテであるなら、なおさらです。そう考えると、まずは必要最小限のものにだけ持ち物を減らすことがポイントになります。

まずは、種類ごとに、それぞれ10分の1まで減らすというような目標を決めて絞り込むというのがポイントです。

② モノの所在地を決める ~ 何をどこに置くものにするのか、を決める

使ったら、どこに戻すのかを決めておくこともポイントです。ADHDの場合、使って用を足した瞬間、次のことに関心が移ってしまいがちです。これが散らかってしまうことの最大の原因とも言えます。「使うことと戻すこととはセットの行動」として身につけていくことが最も散らからない片づけの方法と言えます。

最後まで終わっていないことでも中断する必要が出てきたなどという場合、「その後すぐやり始めるから」と、その場に置いたままにしたいと感じることもあるかもしれません。そんな場合でも、少なくとも初めのうちは、いったん元の場所に片づけるとした方がスキルは身につきやすい、習慣化しやすいと言えるでしょう。

また、声をかけられたり、電話がかかってくるなどして、途中までやっていたことを遮られたりすることもあるでしょう。その場合、その話や電話が終わったら「その前にやっていたことは何だったか?」を思い出す習慣をつけるという方法も考えられます。

③ 片づけを教えてもらう

場合によっては、片づけのプロの方などに片づけのためのしくみ、つまり、整理整頓された状態にするためのしくみをつくってもらうことを検討してもよいでしょう。仮に一旦片づけができても長続きしないといった場合、整理整頓のしくみができていないケースがあるからです。

片づけのプロの視点として、以下のようなものがあるようですが、視点の中心は「どんなルールで捨てられるようにするか」ということと、「戻す場所を決める」ということになるようです。

1) 1つ何かを手に入れたら、1つ以上捨てる
何かを手に入れると、その分持ち物が増えます。持ち物が増えるほど片づけるのが大変になるため、何かを手に入れることと、何かを捨てることとをワンセットで考えるとモノが片づきやすくなります。

2) 定期的に捨てる
それでもモノは自然と増えていくもの。そこで、1カ月に一度など、決まったタイミングでモノを捨てるタイミングを作ると散らかりにくくなります。そのとき「必ず10個以上捨てる」というような目標を合わせて決めておくことが効果的です。

3) ゴミ箱を多めに用意しておく
捨てようと思っても、そこにゴミ箱がないために後回しにしてしまうということも考えられます。そこで、ゴミ箱は、きめのものを、また、少し余分にあるぐらい用意しておくのがポイントです。

4) 思い出のものなどは、写真に撮るなどする
思い出のものなどは、なかなか捨てられないものです。これがモノが貯まり、散らかる原因になることが多いようです。デジタルカメラで撮ってデータ化してしまうなどして、そのものは捨ててしまうという方法も対策としては考えられます

5) 収納ボックスや収納ラックなどをそろえる
今、必要な量ではなく、少し多めの量を収納できる収納ボックスを手に入れたり、収納ラックを用意したりするなどして、机やテーブル、床の上などにモノを放置しないようにすることも場合によっては必要になるでしょう。このとき、そこが仮に一杯になったら、必ず半分まで捨てるといったことをセットで決めておくこともポイントです。

(3) 周囲の理解を得ることも重要

ADHDという障害のあることは、その分、生活をする上でさまざまな工夫が必要だということです。一方で、これは、ご自身だけで解決していくような問題でもないでしょうし、それだけでは限界があるのも事実です。ADHDをお持ちであっても、むしろ、ADHDであることで力を発揮することもできるのです。

そのためにも、周囲の理解と協力が得られるようにすることも重要でしょう。「こういうことは苦手」と予め伝える、あるいは、さらに踏み込んで障害のあることを伝えるといった方法も一つの対策でもあります。ただ、一方的に自分の状況だけを伝えるのではなく、その分、それを理解し、支援してくださる方々へ、感謝の気持ちを言葉で、あるいは、目に見える形で伝えることも重要と言えます。

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

関東家電リサイクル問屋 公式BLOG
http://www.kaden-recycle-tonya.com/blog/?p=181

最新版よくわかる大人のADHD、司馬理英子、主婦の友社

最後に

片づけられない、片づけがニガテという場合、その原因がADHDにある可能性があります。ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった特徴が見られる発達障害の一つです。根本的に治療できるようなものではないため、片づけるためのスキルを身につけていくことが大切になります。

「使ったら元に戻す」、「捨てることをポイントとしてルールを作る」など、片づけのスキルを身につけることに取り組むことが必要と言えるでしょう。ただ、ご自身やご家族の方だけでがんばるにも限界があります。ご自身の特性を生かした力を発揮するためにも、場合によっては周囲の方に配慮を求めることも必要だと言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトや書籍は下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療

ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療


みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39

関東家電リサイクル問屋 公式BLOG

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金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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