発達障害のある方を支える教育のしくみを支える教育のしくみ(全体像)

発達障害

はじめに
発達障害のある方やその保護者の皆さんにとって、教育に関することは最も気になることの一つでしょう。ここでは、発達障害のある方ご本人にとっての教育だけでなく、発達障害に関する日本社会全体の教育状況やしくみ・制度に関する大まかなところをまとめています。

1. 発達障害のある方の教育:方針は国、実際に行うのは都道府県・市区町村や各機関

教育を受ける権利は、憲法で保障されているものです。これはもちろん、発達障害のある方でも例外ではありません。これを実際に行うには、しくみづくりやサービスの提供などだけではなく、法整備なども必要であり、これらは各機関で役割分担され、実施されています。

(1) 国(内閣府・文科省・厚労省など)

障害のある方への教育について、方針を示す、法律を制定するなど、しくみや制度の柱になることを決める役割が中心です。なお、発達障害のある方を教育面で支える主な法律には以下があります。

障害者基本法
精神保健福祉法
障害者総合支援法
発達障害者支援法
児童福祉法
学校教育法
障害者雇用促進法
など

(2) 都道府県・市区町村(都道府県庁・市区町村の役所・教育委員会など):

各地域の実情に合わせて、しくみや制度を整備し、教育に関するサービスを提供します。つまり、障害のある方へのサービスの詳細を決めたり、障害のある方の相談に対応したり、サービス申請の窓口対応をしたりするということです。他にも、地域住民の教育を国と共に担当する地域の各機関が定められたとおりサービスを実施しているか、管理・監督することなども役割になります。

(3) 各サービスの実行者(各種学校、組織、民間企業など):

学校を中心とした公的機関の他、民間企業などもサービスの提供を行っています。

以上のように、それぞれの機関が発達障害のある方の教育を支えています(というよりは、障害のある方を含めた人々の教育を支えています)。とはいえ、たとえば義務教育や高校・大学教育、生涯学習を含む教育の振興を文科省が、子育てや労働に関しては厚労省がそれぞれ担当するなど、支える機関によって役割範囲の違いがあったり、担当機関の引継ぎが発生するタイミング(例えば就学タイミング)があったりします。

2. 教育の対象は、発達障害のある方ご本人だけではない

「図-発達障害のある方を支える教育のしくみ」

「発達障害のある方を支える教育」は、障害のある方ご本人向けの教育制度やしくみだけがあればよいというわけではありません。「発達障害」に対する社会での誤解が大きければ大きいほど、発達障害のある方は「社会での生活がしづらい」と感じられるでしょう。国民が健康的で文化的な最低限の生活ができることは憲法で保障されています。

しかし、発達障害のある方が、障害があること、それが理解されないことが理由で「社会での生活がしづらい」と感じられているのであれば、社会として解決する必要があります。このような理由から、発達障害にまつわる教育は、発達障害のある方ご本人だけでなく、サポートされる保護者の方、支援機関、地域社会や企業などにも実施する必要があることがわかります。

このような事情から、政府や厚労省などの国やサポート機関である発達障害者支援センター、各地自体などが、それぞれ発達障害に関する理解を深めようとする広報活動なども行われており、それにはたとえば、以下のようなものがあります。

政府広報オンライン
発達障害って、なんだろう
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html

厚労省ホームページ
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

国立障害者リハビリテーションセンター 
発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/

埼玉県
発達障害総合支援センター
http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/b0614/index.html

3. 発達段階(≒ライフタイムイベント・時期)に応じた発達障害のある方への教育支援(全体像)

「図-発達段階(≒ライフタイムイベント・時期)に応じた発達障害のある方への教育支援」

次に、発達障害のある方ご本人(及び保護者の方)への教育支援の全体像を見てみましょう。人間は誰しも子どもから大人になり、やがて死を迎えます。この一生におけるそれぞれの時期によって、支援すべき内容は異なります。

(1) 幼少期の主な教育支援

① 前提として ~ 発達障害は比較的幼いうちから発見できる可能性がある

代表的な発達障害に、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害があります。これらの発達障害は、大人になってから発覚することもあるものの、その兆候は、比較的幼い時期からあらわれると考えられています。その時期の目安をまとめると、以下のようになります

学習障害が小学校入学後の時期となっているのは、その時期からいわゆる教科学習が始まるからです。いずれにしても、比較的早いうちからその兆候が見られるため、後ほど見ていく早期発見支援や就学支援のタイミングなども積極的に活用すべきと言えるでしょう。

1) アスペルガー症候群の主なサイン・兆候
以下の4つの項目について、それぞれ1つ以上チェックがつくときは、アスペルガー症候群の可能性があります。

・対人関係の特徴
□一人遊びに熱中する
□友だちのルール違反を指摘する
□スーパーなどで保護者から離れてうろうろする
□友だちの輪の中に入れない
□話しかけても聞いていない

・認知・適応行動の特徴
□視線が合わない
□初めての場所が怖い
□予定が変更されるとパニックになる
□人に触られるのが嫌い
□幼児期からアルファベットや数字が読める
□身体がぎこちない

・行動・活動・興味の特徴
□キャラクターや虫などにはまる
□車、電車、虫などにやたら詳しい
□室外機のファンを見るのが好き
□バイクや工事現場などの大きな音が嫌い
□偏食が激しい
□特定の匂いが嫌い

・言葉の特徴
□言われた言葉の意味をそのまま受け取る
□テレビの主人公などの話し言葉を真似る
□会話にならない
□たくさんの話をするが自分の言っていることの意味を理解できていない
□相手の言葉をオウム返しする

2) ADHDの主なサイン・兆候
次の項目に、6項目以上一致する場合、ADHDの可能性があります。

・はじめた課題を終えられない
・集中できない、長く注意を払えない
・じっと座っていられない、絶え間なく動く、多動
・貧乏ゆすりなど、絶えず体の一部を動かしている
・夢見がち、物思いにふけっている
・衝動的、または考えずに行動する
・指示に従うのが苦手
・順番を無視してしゃべる
・課題を雑にやる
・不注意、すぐ気が散る
・おしゃべりである
・与えられた仕事、課題を遂行しない
・他人の仕事の邪魔をする
・指示を理解しない、指示に従って行わない
・衝動的な行動が見られる
・学習中眠そうだったり、ぼんやりしたり、している

② 早期発見支援:

発達障害は、2次障害を引き起こしやすい障害と言われています。その原因は複数あると言われていますが、たとえば、以下のようなことなどが複雑に絡み合って引き起こすと考えられています。

1) 発達障害のある方自身が、「できない」ことに心を囚われてしまうこと
2) 発達障害のある方の保護者の方が、「できない」ことに不安を覚え、対応にあたってしまうこと
3) 周囲の理解が得られないこと
4) そもそも併発症状があること
 
環境を整えれば絶対に2次障害が起こらない、というわけではありません。それでも、早期発見ができれば、少なくとも1~3の面での問題を小さくしていくことにはなるでしょう。
なお、発達障害の発見に関する主な制度としては、以下のようなものがあります。

5) 乳幼児健康診査
・1歳6か月児健康診査
・3歳児健康診査
6) 就学時の健康診断

③ 就学支援:

小学校・中学校への就学について、発達障害のある方は、通常級・通級(通級指導教室)・特別支援学級・特別支援学校などの選択肢の中から、就学先を選択することになります。

1) 通常級:
小学校・中学校で通常の授業を行う学級のことです。

2) 通級指導教室:
通常の学級(通常級)に在籍し、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状況に応じた特別な指導を、特別な指導の場で行うものです。

3) 特別支援学級
障害の種別ごとの少人数の学級で、障害のある児童一人ひとりに応じた指導を行う学級です。一部の教科の指導は、通常級で行う場合もあります。

4) 特別支援学校
心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。また障害に基づく種々の困難を改善・克服するために、「自立活動」という特別な指導領域が設けられています。

5) 就学相談
就学先の選択は、発達障害を持つ児童本人、保護者、教育委員会との間で相談しながら行うことになります。これを就学相談と言います。障害のある方ご本人にとって、もっとも適している教育環境は何か? を検討し、準備することが目的です。

6) 経済面での支援
発達障害のある方が義務教育を受ける際、必要となる勉強道具・通学費・給食費など保護者の経済的負担を国や地方公共団体が補助するしくみに、特別支援教育就学奨励費があります。特別支援学校・特別支援学級に通っているか、通級などの場合でも障害の程度によって支給されます。(保護者方の経済状態も、支給対象か否かの判断材料です)

(2) 青年期の主な教育支援

① 就学支援(進学支援):

1) 高校
高校においては特別支援学級が設置されていないのが現状です。その理由としては義務教育でないこと、入学試験などを通じて選抜されることなどがあげられます。ただし通級における支援については、文科省が2018年度から運用を開始する準備を進めています。なお、文科省の調査によれば、中学校で特別支援学級を卒業した生徒のうち、進学する生徒は9割以上。そのうち6割程度が特別支援学校の高等部に進学しています。

2) 大学
学業が大きな比率を持つ大学においては、基本的には個々の大学の支援担当者が発達障害のある方の支援を個別に行っています。

・就学まで
病識が乏しい学生へ医療機関への受診を勧めたり、受診の継続を促したりといった支援をしています。

・就学にあたって
多くの大学で、自己申請受けて、個別の支援策を行っています。なお、支援の申請にあたっては、医療機関による診断書の提出を求めているようです。これは、主治医や専門医からの具体的な所見を参考に、どんな支援が必要かなどの環境整備に役立てられるからです。

・復学について
病状の悪化などでやむなく休学した後、復学を希望する場合は、カウンセラーや学校医を通じ、主治医や保護者と

② 就労支援:

厚労省が中心となって、障害者雇用対策を進めています。この雇用対策の中で、発達障害のある方に対する職業訓練教育や、大学生等の就職におけるインターン制度のような体験教育といった教育制度が設置されています。これらの制度は、職場における障害全般に関する意識改革などの教育という側面も持っています。

1) 雇用対策
雇用する企業は、雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用することが義務づけられています。このことは、障害者雇用促進法で定められています。
この他にも、障害者雇用に関する教育制度、障害者を雇い入れた場合などの助成金の支給、障害者を雇用することでの税制面での優遇など、発達障害のある方の雇用を企業に促すしくみがあります。

2) 発達障害のある方の就労支援と職業教育支援
主に次のような事業があります。

・ハローワークにおける職業相談・職業紹介
発達障害を含む、障害のある方の個々の状況に応じた職業相談を実施するとともに、福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」により、就職の準備段階から職場定着まで一貫した支援を実施しています。

・障害者試行雇用(トライアル雇用)事業
事業主が試行雇用の形で発達障害を含む障害のある方を受け入れることを通じて、障害のある方の雇用についての組織内での理解を促し、また、試行雇用終了後には常用雇用への移行を進めることを推進しています。

・障害者職業能力開発校
障害者職業カウンセラーと職業訓練指導員を配置して、職業評価・職業指導及び職業訓練を一貫した体系の中で実施しています。この開発校に通える在職者を対象としたセミナー方式の訓練の他、休職中の発達障害を含む障害のある方が職種転換を行うための短期課程の職業訓練などを行っています。

(3) 老齢期の主な教育支援

大別すると、障害者施策という面からの教育支援と社会生活関連施策という面からの教育支援とが考えられます。例えば文科省は、長寿社会における生涯学習の在り方についての検討を進め、制度やしくみづくりを模索している面があります。ただ、一般の高齢者の方と同様、発達障害のある高齢者の方に対する教育のしくみづくりは進んでおらず、いずれの面からも適当なものがないというのが現状です。

一方で、発達障害を持つ高齢者の方に、社会の構成員としての役割をさらに発揮いただくことも考えられます。例えば、発達障害を持つ高齢者の方ご自身の経験やノウハウ、その生き方などを通じて、地域の方々への教育者としての役割を果たしていただくことも考えていけるということです。

参考:

国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/

文科省 ホームページ 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

日本学生支援機構 ホームページ
http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html

厚労省 ホームページ 障害者の方への施策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/shougaisha/

東京都保健福祉局 ホームページ 就労支援情報
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/shien/index.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構 ホームページ
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

最後に

発達障害のある方への教育については、その方々自身への教育という側面と社会がその方々から学ぶという側面と、大きくは2つの側面があると考えられます。発達障害のある方への教育そのものと発達障害に関して誤解がなくなるような教育とが両輪となって深化していくことで、相互理解が深まり、よりよいしくみへと変えていくことができるのではないでしょうか。 

なお、この記事に関連するおススメのサイトと書籍は下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
政府広報オンライン
発達障害って、なんだろう
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html

厚労省ホームページ
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
障害者の方への施策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/shougaisha/

文科省 ホームページ 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

国立障害者リハビリテーションセンター 
発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/

国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/

埼玉県
発達障害総合支援センター
http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/b0614/index.html

日本学生支援機構 ホームページ
http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html

東京都保健福祉局 ホームページ 就労支援情報
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/shien/index.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構 ホームページ
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

金森 保智

95,479 views

全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

102,090 views

電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。