身体障害者手帳とは? ~身体障害のある方を支える福祉サービス

身体障害者手帳
身体障害

はじめに
身体障害のある方を支える福祉サービスの1つに、身体障害者手帳制度があります。この手帳を申請・取得することで、さまざまなサービスを受けることができます。

ここでは、そんな身体障害者手帳について、制度のあらましや受けられるサービスの内容などをまとめています。



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1. 身体障害者手帳とは?
(1) 身体障害者手帳とは?

身体障害者手帳とは、身体障害のある方に発行される障害者手帳です。身体障害のある方が自立し、社会での経済活動を行えるよう、支援したり保護したりすることを目的に作られた身体障害者福祉法の下で制度化されているしくみです。

各都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が、身体障害者福祉法に定められた身体上の障害のある方に交付します。

参考:
厚労省ホームページ
第3編 社会福祉 第3章 障害者福祉
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_3_3.html

(2) 対象となる方と対象数

身体障害者手帳の交付対象となる方は、身体障害者福祉法で定められた身体上の障害のいずれかがある方で、その症状が一定程度以上であり、現在から将来に渡って回復する可能性が非常に少ない方とされています。

① 対象となる障害の種類

身体障害者手帳の交付対象となる障害は次のとおりです。

1) 視覚障害
視力障害、視野障害があります。

2) 聴覚・平衡機能障害
聴覚障害、平衡機能障害があります。

3) 音声・言語・そしゃく機能障害
音を発すること、言葉を発すること、物を口でそしゃくし飲み込むことに障害があります。

4) 肢体不自由
上肢(肩関節・肘関節・手関節・手指)の機能障害、下肢の機能障害、体幹(頸部・胸部・腹部・腰部)の機能障害、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害があります。

5) 内部障害
心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう・直腸機能障害、小腸の機能障害、ヒト免疫不全ウィルスによる免疫の機能障害、肝臓機能障害があります。

6) 重複障害
上記の1~5の身体障害が2つ以上ある場合、重複障害とされます。

【関連記事】
身体障害とは?
https://jlsa-net.jp/sin/shintaisyougai/

② 身体障害者手帳の交付数

身体障害者手帳の交付数は、平成27年度末で総計510万人を超えています。障害別の交付数はおよそ次のとおりです。
身体障害者手帳の交付数

(3) 障害の程度

① 等級

身体障害の程度は、「等級」で表されます。等級は障害の種類別に1~6級までがあり、1級ほど障害の程度が重く、6級に近づくほどその程度が軽いことを表しています。

なお、等級の基準設定において、肢体不自由には7級も定義されていますが、それ単独では身体障害者福祉法上の身体障害者の対象とはなりません(=身体障害者手帳の対象となりません)。

ただし、7級の障害が2つ以上重複する場合や、7級の障害と6級以上の障害が併せてある場合は、身体障害者手帳の交付対象となります。例えば、上肢で7級、下肢でも7級の障害がある場合、一つ上の6級として、身体障害者手帳の交付対象となるということです。

② 種別

身体障害のある方に対しては、後ほど示すような、複数の支援サービスがあります。これらのサービスをどの程度のレベルで受けられるかを示すものに「種別」があり、1種と2種に分けられています。

例えばJRの運賃は、障害者手帳をお持ちであることで割引が受けられますが、1種か2種かによって、介護同行される方の割引の有無などの差があります。なお、種別は等級との関係で決められており、具体的には以下のようになっています。

< 種別と等級の関係 > ●:1種、○:2種
身体障害者手帳の種別

厚労省ホームページ
身体障害者手帳
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/

東京都福祉保健局 東京都心身障害者福祉センター
身体障害者と身体障害認定基準について
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/shinshou_techou/sintaisyougaininteikijyun.html

JR東日本ホームページ お身体の不自由なお客さまへ 
https://www.jreast.co.jp/equipment/waribiki/

2. 身体障害者手帳を取得するまでの流れ
(1) 身体障害者手帳を申請するには ~申請に必要なもの

当然のことながら、まずは身体障害があることが条件です。また、その程度が、1~6の等級の認定がされる程度である必要があります。以上を踏まえて、身体障害者手帳の申請には次のようなものが必要になります。

① 身体障害者診断書・意見書 (発行から1年以内のもの)

診断書・意見書の作成は、医療機関にご依頼いただくことになります。なお、作成ができるのは「身体障害者福祉法第15条の指定を受けている専門の医師」です。また、診断書・意見書には所定の様式があり、お住まいの市区町村の担当窓口で入手できます。

実際に入手される際に、どの医療機関で対応いただくのがよいのか、相談するのもよいでしょう。なお、診断書・意見書の作成には、一定程度の費用がかかります。

② 申請する方の写真

縦4センチ×横3センチ、上半身、脱帽したものである必要があります。

③ 交付申請書

所定の用紙がお住まいの区市町村の障害福祉担当窓口に用意されています。

④ マイナンバーがわかるもの及び身元確認資料

申請する際、マイナンバーを記載する必要があります。このため、マイナンバーが確認できる資料が必要になります。なお、申請される方が、身体障害のある方ご本人の場合と保護者の方の場合とで、必要となるものが異なる点も注意が必要です。

1) ご本人が申請される場合・個人番号カードをお持ちの方:
・個人番号カードのみ

2) ご本人が申請される場合・個人番号カードをお持ちでない方:
・個人番号確認書類(個人番号通知カードや個人番号付き住民票の写し、など)
・身元確認書類(運転免許証、パスポート、など)

3) 保護者の方が申請される場合
・代理権の確認書類(法定代理人戸籍謄本、任意代理人委任状、など)
・保護者の方の身元確認書類(保護者の方の個人番号カードや運転免許証、パスポート、など)
・申請対象となる方の個人番号確認書類(個人番号通知カードや個人番号通知カード、個人番号付き住民票の写し、など)

(2) 身体障害者手帳の申請窓口、申請のステップ

「図-身体障害者手帳取得の流れ」
身体障害者手帳取得の流れ
 申請とその認定は、大まかに次のステップで進められます。

① お住まいの地域の市区町村の障害福祉担当窓口に相談、申請書と診断書の2種類の用紙を入手する

まずは身体障害者手帳を申請したい旨、お住まいの地域の市区町村の障害福祉担当窓口に相談してください。相談すると、今後の手続きの進め方などを説明いただけます。このタイミングで、交付申請書と身体障害者診断書・意見書の2つの用紙を入手します。

また、必要に応じて、身体障害者診断書・意見書を書くことのできる「身体障害者福祉法第15条の指定を受けている専門の医師」について、該当する医療機関などを問い合わせるとよいでしょう。

② 身体障害の程度を、指定の医療機関で診断、身体障害者診断書・意見書を発行してもらう

窓口で得られた情報などをもとに、指定の医療機関で診断を受けます。

③ 必要書類を準備の上、お住まいの地域の市区町村の障害福祉担当窓口に申請する

申請に必要な書類などは、先に示した通りです。地域によっては、他にも必要となる書類などがある場合がありますので、各窓口の指示に従ってください。

各都道府県での審査

身体障害者診断書・意見書に、専門の医師が判断・記入した「等級意見」を参考に、各都道府県で障害認定を行います。たとえば東京都の場合、この認定を行うのは、東京都心身障害者福祉センターです。

最終的な認定にあたっては、専門の医師指定医の意見と異なる等級に認定されたり、身体障害者手帳の交付対象とはならないと判断されたりすることもあります。

(3) 申請手続きができる人

申請できるのは、基本的には身体障害のある方ご本人、または、その保護者の方です。

(4) 申請後~交付まで

申請に基づき判定を受けてから、1カ月程度で交付されます。ただし、身体障害者診断書・意見書の内容によっては、記入した医師への確認が必要となるなど、日数がかかる場合があります。

また、身体障害者手帳交付対象とならない程度の障害と判断された場合や、等級認定に当たって専門的な審査が必要であると判断される場合など、さらに日数がかかることがあります。

(5) 有効期間と更新手続き

有効期間については、特に設定されていないのが一般的です。ただし、再認定が必要な場合があります。たとえば東京都の場合、交付時点で障害の程度の変化が予想される場合は、再認定の期日(手帳交付時から1年以上5年以内)が指定されます。

その期日までに身体障害者診断書・意見書を再度提出、障害程度を改めて認定してもらうことが必要になります。

【関連記事】
身体障害のある方を支える法律 ~2つの大きな法律
https://jlsa-net.jp/sin/shintai-law/

参考:
東京都福祉保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/a_techou.html

3. 身体障害者手帳を持つ方への福祉サービス

「図-身体障害者手帳を持つ方への福祉サービス全体概要」
身体障害者手帳を持つ方への福祉サービス全体概要
身体障害者手帳は、全国一律の支援サービスがあるというわけではありません。ただし、多くの地域で、以下のような支援サービスがほぼ共通で実施されています。

(1) 経済的な支援 ~ 税制上の優遇措置

身体障害者手帳を交付されている方は、税制面での優遇を受けられます。等級が1・2級の場合は特別障害者控除が、それ以外の場合は障害者控除が適用されます。

① 所得税の控除

障害者控除として27万円(特別障害者は40万円)が所得金額から差し引かれます。配偶者や扶養親族に障害がある場合は、1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)の障害者控除等を受けられます。

② 住民税の控除

障害者控除として26万円(特別障害者は30万円)が控除されます。

③ 相続税の障害者控除

相続される方が身体障害のある方の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が、障害者控除として相続税額から差し引かれます。

④ 自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免

身体障害者手帳を交付されている方が使用する車について、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けられる場合があります。

⑤ 預貯金の非課税対象化

身体障害者手帳を交付されている方が、350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税となります。

(2) 各種割引制度による支援

身体障害者手帳をその場、あるいは事前に提示することで各種割引制度の対象となり、そのサービスが受けられます。

① 公共交通機関の割引

1) JRなど、鉄道運賃の割引や減免が受けられます。
2) JALやANAなどは、「身体障害者割引運賃」が適用されます。
3) 多くのバス会社で、障害者割引運賃が設定されています。
4) タクシー料金の割引が適用される場合があります。

② 各種料金の割引

1) NHKの受信料の全額又は半額が免除されます。
2) NTTの電話番号案内利用料が無料になります。
3) 有料道路通行料金が割引になる場合があります。
4) 携帯電話各社が利用料の割引制度を設けています。

③ 各種施設利用等での割引

美術館・博物館、動物園、映画館をはじめ、多くのレジャー施設やテーマパークなどで割引制度が設けられています。

④ 駐車場料金の割引や無料化措置

多くの駐車場で無料化や割引の対応を行っています。

(3) 保育面・教育面での支援

保護者の方が身体障害者手帳を持つ場合、ご本人が身体障害者手帳を持つ場合の2つの場合で、受けられる支援があります。

① 保育園への入園

入園者ご本人や、保護者の方が身体障害者手帳を持っている場合で、それぞれ入園の優先順位が高くなる場合があります。

② 特別支援学校への入学

特別支援学校への進学を希望する際、身体障害者手帳で障害の程度を証明することができます。

(4) 就労に向けた支援

就労面でのさまざまな支援が得られます。障害者雇用枠での就職が可能となるのもその一つです。企業は一定程度数、障害のある方を雇用する義務もあるため、就労への道が広がるという側面があります。

(5) 医療面での支援

重度の身体障害者手帳をお持ちの方の場合、医療費の一部が助成される「障害者医療費の助成制度」の対象となる場合があります。

【関連記事】
身体障害のある方を支える医療制度
https://jlsa-net.jp/sin/shintai-iryou/

参考:
国税庁ホームページ
障害者と税
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm

障害者控除
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1160_qa.htm

東京都主税局ホームページ
自動車税・自動車取得税の減免制度
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html

東京都福祉保健局ホームページ
障害者、日常生活の支援・社会参加の推進
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/index.html
医療・保険、医療助成
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/index.html

JR
割引制度のご案内
https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount.html

JAL 
身体障害者割引
https://www.jal.co.jp/dom/rates/rule/r_shougaisha.html

ANA 
身体障害者割引運賃について
https://www.ana.co.jp/service-info/share/assist/discount.html

NHK
放送受信料の免除
https://pid.nhk.or.jp/jushinryo/about_5.html

DoCoMo
ハーティ割引
https://www.nttdocomo.co.jp/charge/discount/hearty/

auスマートハート割引
http://www.au.kddi.com/mobile/charge/other-discount/smile-heart/

softbankハートフレンド割引
http://www.softbank.jp/mobile/price_plan/options/heartfrend-white-plan/

八王子市ホームページ
保育施設の利用調整について
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kosodate/003/001/001/p001167.html

厚労省ホームページ 
障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

4. 身体障害者手帳を持つことでデメリットはないのか?

身体障害者手帳が交付されること自体にデメリットと呼べるものはありません。とはいえ、身体障害があることが公的に認定されること自体が、身体障害のある方ご本人・ご家族の方々の精神的な負担になる場合もあるようです。

また、身体障害者手帳を所持していることを知られたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。

身体障害者手帳を取得したこと自体は、ご本人などがあえて伝えない限り、それが他人にわかることはありません。各種サービスを受ける際には身体障害者手帳を提示する必要がありますが、サービスを活用するかどうかはその都度ご自分で選択することもできます。

最後に

身体障害のある方を支える福祉サービスは複数あります。そのうち身体障害者手帳は、「身体障害があるあることが公的に認定されている」ことを示す一つの方法ととらえることもできます。

また、身体障害者手帳を提示することで、各種の福祉サービスを受けることができますので、少しでも興味を持たれたようなら、まずはお住まいの地域の福祉事業窓口に相談してみるとよいのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
第3編 社会福祉 第3章 障害者福祉
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_3_3.html

身体障害者手帳
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/

東京都福祉保健局 東京都心身障害者福祉センター
身体障害者と身体障害認定基準について
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/shinshou_techou/sintaisyougaininteikijyun.html
障害者、日常生活の支援・社会参加の推進
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/index.html
医療・保険、医療助成
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/index.html

国税庁ホームページ
障害者と税
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm

障害者控除
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1160_qa.htm

東京都主税局ホームページ
自動車税・自動車取得税の減免制度
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html

内閣府ホームページ
図表79 障害者に関する割引・減免制度及び福祉措置一覧
http://www8.cao.go.jp/shougai/data/data_h24/zuhyo79.html

JR 割引制度のご案内
https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount.html

JR東日本ホームページ お身体の不自由なお客さまへ 
https://www.jreast.co.jp/equipment/waribiki/

JAL 
身体障害者割引
https://www.jal.co.jp/dom/rates/rule/r_shougaisha.html

ANA 
身体障害者割引運賃について
https://www.ana.co.jp/service-info/share/assist/discount.html

NHK
放送受信料の免除
https://pid.nhk.or.jp/jushinryo/about_5.html

DoCoMo
ハーティ割引
https://www.nttdocomo.co.jp/charge/discount/hearty/

auスマートハート割引
http://www.au.kddi.com/mobile/charge/other-discount/smile-heart/

softbankハートフレンド割引
http://www.softbank.jp/mobile/price_plan/options/heartfrend-white-plan/

八王子市ホームページ
保育施設の利用調整について
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kosodate/003/001/001/p001167.html

厚労省ホームページ 
障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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