障害者雇用における企業の向き合い方 ~調査結果から見えること~

障害者就労

はじめに
障害者雇用における企業の向き合い方について。障害者雇用は従業員が45.5人以上になった場合、法定雇用義務が生じます。今回は、障害者雇用に関する様々な調査結果から、企業が障害者雇用について、どう向き合えば良いかを考えます。

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1.障害者雇用について

日本では、企業に対し、従業員が45.5人以上いた場合に法律上雇用しなければならないという義務を課しています。これをいわゆる「障害者雇用」と言っています。民間企業における障害者の雇用状況としては、平成30年度は2.05でした。下記のグラフをご覧頂いてもわかるように、毎年雇用数は伸びています。


(出典:平成 30 年 障害者雇用状況の集計結果 https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000499992.pdf

障害があるかないかは、身体障害者手帳、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳という3つの手帳のいずれかを所持しているかどうかです。

ですから、病気や障害があったとしても、手帳を所持していない場合は法律上の雇用義務がある障害者雇用に該当はしません。

この仕組みがあるということは、ある時期に調べたら手帳を所持していたのに、いつの間にか所持していないということが起こります。とくに精神障害の場合は、障害の特性上疾病と障害が併存していると考えるため、症状が軽快すれば手帳の要件に該当しないということも考えられます。

また、その他の障害も含めて、「自分は手帳を持たない」という選択をすることも可能です。これはご本人が自分の人生を考えた時にはあり得ますし、決してマイナスなことでもないかもしれません。

2.障害者雇用について企業はどのように向き合うのか?

障害者雇用が前述したように、一定規模の企業に課せられた義務だとした場合、企業は雇用することに思考停止になって「義務だから雇用する」と考えるので良いのでしょうか? 私はノーだと思います。何らかの大義をもって雇用することが望ましいと思います。

その大義は「全体最適」に向かってもらいたいと思っています。社会にとって必要だから法律上の義務があってもなくても雇用するという考え方が良いのではないでしょうか? 「それは理想論だ」「きれいごとだ」という方もいるかもしれません。

ある意味そうなのかもしれませんが、せっかくなら広い視野で考えてみたいところです。通常雇用するのは、事業運営において雇用の必要性があるから、または雇用する意義があるから、必要な人材や魅力ある人を雇用するのではないでしょうか。

そうだとするとそれには病気や障害は関係ないのかもしれません。ある部分は不得意でもある部分はとても能力が高い方もいます。例えば数字を扱うのが得意、淡々とした業務が得意、ITに関連することが得意など様々です。

このように得意なことがあり、それが御社にとって戦力になりそうであれば、採用すべきです。しかし実際はなかなか障害がある方が雇用される機会は少ないです。

それは恐らく、メリット・デメリットがあると感じているからでしょう。では、どういうメリット・デメリットがあるかを調査結果から考えてみましょう。

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3.障害者雇用のメリット・デメリット

障害者雇用の敷居が少し高くなる原因の一つが定着がしづらいということでしょうか。精神障害を中心に整理してみたいと思います。以下の調査をご覧ください。

(出典:障害者雇用の現状等 平成29年9月20日 厚生労働省職業安定局)

離職してしまう個人的な要因としては、「職場の雰囲気・人間関係」が一番多く、次いで「賃金、労働条件」、「疲れやすく体力、意欲が続かなかった」、「仕事が合わない」などが挙げられます。

職場の雰囲気や人間関係については、もしかしたら周囲の方がどのように接したら良いかわからなくて、距離を置いたり、コミュニケーションを取るのに躊躇することもあったのではないかと想像しました。

賃金や労働条件は、業務内容が軽易なものや、業務時間の短縮、業務上配慮すべきことが多くなって、その分賃金や労働条件を通常よりも下げてしまうこともあるのではないでしょうか。

そして、体力に関しては、会社としても悩ましい問題であると思っているのではないでしょうか。できる限りの配慮をして軽易な業務にしたとしてもそれでも体力が続かないと感じられてしまっては、難しさを感じるのも無理もないことと思います。

また、障害者雇用を専門の一つにしている会社の調査でも、以下のように、雇用の難しさが企業からは聞かれます。

Q. 障害のある方を初めて雇用する前に不安に感じた点を教えてください (複数回答)
・職場でのコミュニケーション 98社
・担当業務の切り出し/選定 73社
・障害理解 63社
・面談や相談員などの本人へのフォロー/配慮 61社
・業務レクチャー/研修手段 56社、勤怠安定 53社
・設備 29社
・評価方法 25社
・処遇 24社
・避難などの有事対応 21社
・金銭管理 4社
(出典:株式会社LITALICO「障害者雇用を行った企業担当者を対象にした調査を実施」)

会社としては、サポートや接し方の難しさ、離職をされてしまうことを考えると躊躇してしまうことも多いように思います。

しかし、メリットもあると思います。すでに日本では好事例がたくさん出ています。独立行政法人高齢・障害。求職者支援機構において、毎年度各企業の取り組みから最優秀賞、優秀賞などを発表しています。そこにある好事例を見ていると、雇用するメリットが見られます。

ある会社では、障害者の方の仕事をつくりだすことで、障害のある社員それぞれに適した仕事による職務創出につなり、また、販売担当者の負担が軽減したことにより、販売の効率性が向上したという事例も出ています。

私としては、直接的なメリットだけではなく、間接的なメリットもあると思っています。例えば障害者雇用を促進することで、サポート体制を構築するわけですから、それはメンタルヘルス不調のサポートにも応用できます。

そして、サポートをするムードが醸成されることで、社内の雰囲気が良くなることもあるのではないでしょうか。

色々と副次的な効果はあると思っています。事例としてのメリットや効果は以下のホームページからもご覧いただけますので、ぜひご覧ください。


(引用:独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構ホームページ)
http://www.jeed.or.jp/disability/data/handbook/ca_ls/ca_ls.html

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最後に

障害者雇用は、義務だから行うという企業も多いのではないでしょうか?

少し古いですが平成19年度中小企業における障害者の雇用の促進及び安定支援に関する研究調査でも、障害者を雇用する理由について、企業としての責任・義務50.8%、法定雇用率を満たすため38.7%、経営上のメリットがあるため2.1%、その他2.7%、無回答5.7%という結果が出ています。

各社色々な考え方があると思います。人口が減少する中、手帳を所持している方が増えているという現状がある日本においては、障害のある方を雇用するというのは法定雇用率の上昇に備えるという受け身な態度ではなく、人材確保という戦略的に見ていけると良いと思います。

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脊尾大雅

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脊尾大雅(セオタイガ) 秋葉原社会保険労務士事務所の代表。精神保健福祉士でもあり、メンタルヘルスに精通した社会保険労務士。メンタルヘルスやコミュニケーション...

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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