地域密着のレストラン運営等で工賃UPへ 「らっく」の挑戦3
皆さん、こんにちは。全国地域生活支援機構(JLSA)の加藤です。
全国地域生活支援機構では、障害者就労の拡大に向け、積極的に事業に取り組んでいる施設運営者の方々に、定期的に取材させて頂き、障害のあるご本人・ご家族の方や、施設の方に向けて情報発信をしております。
社会福祉法人様等が、工賃アップのために色々な取り組みに挑戦している様子をご紹介するシリーズ。シリーズ第4弾は社会福祉法人らっく様の挑戦です。今回は「第3回目」をお届けします。
第1回は、神奈川県の相模原にある「社会福祉法人 らっく」様の設立までについて。
https://jlsa-net.jp/interview/luck-1/
第2回は、工賃アップに向けた取り組みについてお話をしました。
https://jlsa-net.jp/interview/luck-2/
今回は、地域に密着したレストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」様の店内をご紹介しつつ、現場で使用されているオペレーションマニュアルやサービスレベルについてお伝えしていきます。
なお、今回のシリーズの記事は、全部で5部構成となっております。
第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!
第2回 今、工賃はどれくらい? 工賃アップに向けた取り組み
第3回 レストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見!
オペレーションマニュアルとサービスレベルの評価表がすごかった!
第4回 店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践
第5回 質の高いWEBページ、そして、施設運営に対する熱き想い
今回は、第3回 「レストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見! オペレーションマニュアルとサービスレベルの評価表がすごかった!」、についてお知らせします。
●取材にご協力頂いた方及びインタビュアーのご紹介
第3回の目次は、以下の通りです。
1.思わぬ掘り出し物がある! チャリティショップ「楽来(らっく)」様の店内を拝見
2.地元で大人気、レストラン「AMI」様の店内を拝見へ
3.厨房の中を拝見!
4.利用者様にも特典を!
5.売上を見える化する! とても大事なことです
6.バックヤードの色々な部門をご紹介します!
第3回 地域密着のレストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見!
1.思わぬ掘り出し物がある! チャリティショップ「楽来(らっく)」様の店内を拝見
加藤
早速、店内を拝見してもよろしいですか?
鈴木
はい、では裏側からご案内していきます(笑)。
今日はポイント2倍デーでして(笑)。毎週木曜日がポイント2倍デーです。
ちなみに毎月第3木曜日は定休日となっておりますのでご注意ください。
あとは、月に1回はイベントを企画してセールを実施しています。
この前は、トップスの半額セールを行いました。偶数月は全品半額セールを出血覚悟で実施しており好評いただいております(笑)。
こちらのチャリティショップは、地域の方からご寄付いただいた商品を、ものによってはクリーニングしたり、値付けし、商品化して店舗で売っています。
店舗としては、この麻構台店と陽光台と2店舗あります。
このチャリティ部門はここ麻溝台店の店舗管理を担当しています。
加藤
こちらの店舗には、運営マニュアルのようなものはあるのでしょうか?
鈴木
はい、マニュアルはどの部門にもあります。らっくではマニュアルを「手順書」と呼んでいます。
各部門ではそれぞれの仕事を全て工程として網羅し整理しています。
そして、その工程ごとに、各作業に手順書を付けていくように作っています。
このホワイトボードは、見える化することによって今何をやっていて、どれが終わっていて、後、どれをやらなければいけないのかが一目でわかるようにしたものです。重要なのは、みんながこれを見ながら「作業できる環境にする」ということです。職員が指示しなくてもみんなこれをみてどんどん作業を進めてくれます。
加藤
いわゆる、構造化ですね(笑)。
鈴木
はい、そうです。
次に、これがチェックリストです。
これは、訂正作業のチェックリストですが、工程を単純化するために細かく分ければ分けるほど、実は漏れも出てくることも生じます。ですから、こういうチェックリストによるチェックっていうのは欠かせなくなるわけです。
始まったら「未」の札を剥がしていって、全部剥がしたら終わり、というように見える化します。
そうすると何が終わっていないかが一目でわかります。
こうなると、誰かが指示を出さなくてもできるようになっていきます。つまり、各人が、それぞれ動けるようになれます。
加藤
すごい、工夫ですね。
お、これ、面白い。
鈴木
これは非売品です(笑)でも実は、結構、掘り出し物もあったりします。
掘り出し物を狙って、来てくださるお客様もいますよ(笑)。
加藤
これ、すごい高そうな(笑)。
鈴木
先日は、食器類でものすごく良いものがありました(笑)。
食器類に詳しい方から「これ、買ったら何千円もするやつだよ」と言われ、喜んで購入されていきました。
最近はリサイクル業者様からご寄付を頂くこともあります。リサイクル店では効率的に難しくてもらっくでは結構仕事になったり売れるものがあったりします(笑)。
私たちとしては、非常にありがたいことです。
リサイクル業者様からだと、量を多く頂けるので、物流もすごく安定し仕事量も確保できますので本当に助かっています。
では、続いてレストランを。
2.地元で大人気、レストラン「AMI」様の店内を拝見へ
鈴木
こちらはフロアー。フロアー部門が接客を担当しています。
こちらにも、先程と同じようにマニュアルがあります。
加藤
ちなみに、これは?
鈴木
これは、数に限りがあるデザートを管理しています。
特にセール時は、食後のデザートをオーダーいただいた時点で確保しておかないと、ボヤっとしていると売り切れちゃうときがあるので、ここでチェックしています。
加藤
なるほど。
あ、プリンがある!(お昼の時、売り切れでありませんでした)
さっき、このプリン食べたかったんですよ。あとで、買って帰ります(笑)。
鈴木
ありがとうございます(笑)。さっき出来上がったばかりのものです。
このようなチェックリストは、閉店、開店作業を漏れなくやるためには、とても重要です。フロアーは、毎日1枚使う感じですね。
3.厨房の中を拝見!
加藤
厨房の中を拝見させて頂くことはできますか?
鈴木
はい、いいですよ。
こちらにも、開店、閉店作業など各作業のマニュアルなどがあります。
キッチン部門ではポジションごとにやることも明確になっています。
最初は簡単なポジションから入ってもらうようにします。
これは「料理提供マニュアル」です。ポジションごとの工程をその場で確認できるようにしていて、オーダーが入ったら、こういったマニュアルを見ながら調理ができるようになっています。
こちらは、朝の仕込みのときに使う「スタンバイ表」です。各メニューの用意数に応じた仕込み量を、あらかじめ支援員が前日に書き込んでおきます。
すると、朝みんながスタンバイ作業に入った際に、個別に指示を出さなくても、このスタンバイ表を見ながら、誰もが、玉ねぎを何g切ればいいとか、必要な材料の仕込み量がわかるようになっています。
加藤
ものすごく仕組み化されていますね。
鈴木
これは、仕込みのときの手順ですね。わからなければ、この手順書を見れば仕込み作業ができるようになっています。
加藤
素晴らしいですね。
鈴木
これもご利用者様が自ら中心になって働いてもらうための工夫の1つです。品質を落とさずにみんなで商品を提供していくために、このように仕組み化していきました。
例えば、この手順がないと、「これ、どうやりますか」って、支援員がみんなから一斉に聞かれたらパンクしてしまい、結果、できることも限られてきてしまいますから。必然的にこのように手順化していきました。
ですから、この手順は、より使いやすくなるように、日々支援員がメンテナンスして維持しています。
4.利用者様にも特典を!
鈴木
こちらをご覧ください。
ちなみに、ご利用者のみなさんは、半額でレストランの食事ができます。
加藤
あんなに美味しいお食事を半額ですか!
羨ましいなぁ~(笑)。
鈴木
らっくのウリの1つです!
5.売上を見える化する! とても大事なことです
加藤
これが、売上ですね。
これ、掲載してもいいですか?
鈴木
はい、大丈夫ですよ。その日の売上などは、こうやってみんなで共有しています。セールの時なんか目標〇〇万円!とか言ったりして自分たちが稼いでいるんだ!っていう意識はみんなすごいですよ。
加藤
ありがとうございます。
こういう成績を見える化することは、とても大事ですよね。
鈴木
ここの基本時給は280円が昨年度の最高額でした。
基本時給が280円位だと、キッチン部門で300円を超えます。
先ほどもお話しましたようにキッチン、フロアーには割り増し工賃が支払われます。
ここで掲示される具体的な額を見て、それぞれの方が自分の働く部門を選択する材料にしてもらいたいと思っております。
加藤
では、これは利用者さん向け、ということですね?
鈴木
そうですね。このチラシはそうです。キッチンと倉庫が人手不足で募集していました(笑)。
加藤
では、皆さんがそれぞれ、「私も、これをやりたいです」と自己申告していくということでしょうか?
鈴木
基本的には利用者さんが自分の希望で部門を選べるようにしています。
そのため部門によって、人の不足や偏りが生じることはあります。
キッチンは今、お蔭様で、結構人が入ってきてくれました。
6.バックヤードの色々な部門をご紹介します!
加藤
ここは、どういう部門でしょうか?
鈴木
こちらはサポート部門です。
清掃や軽作業を行っています。
これは「使い捨て布」といって清掃作業用の消耗品をつくる仕事をしています。
サポート部門では、施設全体、各部門で発生する軽作業を請け負っています。作業自体は簡単なものが多いのですがものすごい種類の作業があり種類は200を超えています。施設全体からそうした軽作業をサポート部門に集約しています。
これはサポート部門作業依頼仕様書といって、各部門からサポート部門に作業を依頼するときに起こす依頼票です。この依頼票でサポートの作業をここに集める仕組みです。
鈴木
これは「仕分けタグ」といってチャリティ事業で使用するタグの製作をしています。チャリティ商品の仕分け作業のときに、カテゴリーや傷・汚れをチェックして、その内容をタグに記入し商品に添付することでお客様にお知らせします。チャリティ商品は基本的に中古品なので、傷みの箇所をお客様にわかりやすいにように提示する仕組みを作り、仕事にしています。そのタグの製作を、軽作業としてサポート部門で請け負っています。
鈴木
こちらは清掃作業のベース(基地)です。
用具などが置いてあります。
こちらのチェックリストを見ながら、自分が次どこをやるかがわかります。もちろん清掃個所1つ1つに手順書があります。
加藤
なるほど。
加藤
それにしても、皆さんが作業されている場所は綺麗ですし、本当におシャレですね。
建物は、本当にすごく明るい(笑)。
鈴木
ありがとうございます。こちらの2階は、仕切って静かなところで仕事ができるように工夫しています。利用者様の中には、ザワザワした環境が苦手な方もいらっしゃるので。
加藤
ここでは、パソコンを使った作業をされていますね。
鈴木
パソコンの作業は、基本的に2つの柱があります。
1つは、現場からの作業依頼です。それは実践的に、現場で必要な作業をここで行っています。パソコンのスキルを学ぶっていうよりは、実践で作業して頂き、「仕事感」といいますか実務的なスキルの向上を図ってもらっています。
加藤
先程見たレストランとか、チャリティショップからの依頼ですね。
鈴木
はい、そうです。フロアーやキッチン、チャリティの他にも色々な部門から依頼がきます。
この手順書を直してほしいとかこんな資料をつくってほしいといった依頼がPCに集まるようにしています。これがその仕様書です。
加藤
見事ですね。私は日頃、民間企業で経営コンサルをしていますが、皆さん、手順書やマニュアルづくりで、苦労されています。らっくさんに頼んだら良いのに(笑)。
鈴木
加藤さん、是非、お話しておいてください(笑)。
でも私たちもまだ試行錯誤を繰り返しているところです。
あと、こちらもご覧ください。先程見ていただいたような手順書はここで作ったり、修正もここで行っています。
加藤
いや~、細かいな~。私にはできない(笑)。
鈴木
手順書は作業標準の役割も担っていますから、結構こまかく作っているところもあります。しかし、ただ細かくすればいいというものでもなくて「これくらいで様子をみる」という作り方もあります。
次に、こちらは「データ入力」です。あらかじめデータテーブルが作成され、恒常的にデータ収集してその入力を行う仕事です。らっく内部のデータがメインです。
これはそのデータ入力の進捗管理表です。
例えば、チャリティ事業(チャリティショップ楽来)の店舗では、商品の入荷時に受け入れ検査をします。要するに検収作業です。何月何日、何の商品をいくら受け入れて、あるいは返品しましたという帳票を作成しますので、これをPC部門でデータ入力の仕事にしています。返品のあったものはその理由なども追跡してどんな理由の返品がどのくらいあったかということを数値化して共有しています。
また例えば、デザート評価表というのがあります。
デザート部門ではデザートができ上がったときに製品検査をします。
大きさとか焼き上がりの具合とかを評価する基準がありますのでこれに当てはめて、その結果を記入したのがこれです。
シフォンケーキだと、焼きちぢみとか切った断面に、ボコボコとした穴ができていることもあります。その場合、評価基準に合わせて弾いていきます。
こうしたデータを収集することで製品ごとにどのくらいのロスが生じているかなども明確にしていきます。
鈴木
こちらは、プリンのデータです。
前は、ここにIDを入れて、「誰が作業したものか追えるようにしよう」というアイディアがあって行ったのですが、うまくいかなかったのでやめました(苦笑)。
加藤
なるほど(笑)。トライアンドエラーですね!
鈴木
こちらのデータは、チャリティ商品の仕分け作業で使うチェックリストです。
1つの商品に1枚のチェックリストを使い、項目に従ってチェックしていきます。カテゴリー分けする段階でチェックして、値付けの段階でもチェックします。
実は、同じ項目について2回チェックしているので、実質的なダブルチェックを行っています。
よって、仕分けのところで「問題なし」とチェックしたのに、
値付けのところで「売れない」となると「問題なし」のチェックが「おかしかった」という判定になります。
加藤
なるほど。
鈴木
その仕分けの精度を、このIDの方にフィードバックして「仕分け作業で、こういうところの見落としが多いよ」というようにアドバイスをすることが可能です。
ただし、そうしたフィードバックをするかしないかは、ご利用者様の課題にもよりますので必ずしもこのデータをご利用者さんに見せるわけではありません。ご利用者様の「得意」「不得意」を感覚ではなくて、できる限りデータで根拠を持って把握し、支援にあたっていくことが重要だと考えています。
加藤
作業ですが、最初に、ここの「入力待ち」から取って行うのでしょうか?
鈴木
はい、そこから入力してダブルチェックです。
パソコンで入力し、入力したものをダブルチェックして、入力のスピードと精度がでます。
レストランについても、こういう各種データを毎日入力しています。
何が何食売れたとかを、入力したデータに基づき、フィードバックしています。
加藤
なるほど、しっかり標準化と手順化ができていますね!
ありがとうございました。では、次をご紹介ください。
鈴木
ここは洗濯部門です。
キッチンのコックコートやフロアーの制服、作業用のエプロンやダスター、付近類などの洗濯が、洗濯部門の仕事なんです。
特徴としては、他のスペースと区切られた静かな環境で、自分のペースで作業ができるところです。
こちらは、洗濯部門の作業マップです。
横に時間軸があって、1つの作業が終わったら、これを見て、終わってない作業に取り掛かり、消化していきます。全体像と現在位置を知ることで見通しが立ちます。
見通しが立てられることは、発達障害の方への配慮としても意味があったりします。見通しが立たないと、不安定になってしまうことがあるからです。特に洗濯部部門は毎日の作業量がおおむね一定なので、作業の見通しがとても立てやすい部門です。作業環境も含めて、そうした特性への配慮がしやすい部門です。
加藤
洗濯部門にもマニュアルがありますね!
鈴木
はい、あります(笑)。
洗濯し終わったものを、明日の作業でまたみんなが使います。
第3回は、以上となります。
第3回は、らっくさんが運営する、レストランとチャリティショップをご紹介しました。
取材していて感じたのは、
1)5S( 整理・整頓・清掃・清潔・躾)が徹底されていること
2)手順に落とし込む仕組みが整っていること
3)接客の方とバックヤードの方とで、きちんと役割分担ができていること
が、すごく出来ていると感じました。
これならば、らっくさんと協力して事業を行いたい!という事業者の方が後を絶たない理由がわかったような気がします。
次週は第4回、店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践 をお知らせします。お楽しみに!
バックナンバー
第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!
第2回 今、工賃はどれくらい? 工賃アップに向けた取り組みについて
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