知的障害のある方を支える社会福祉施設等

知的障害

はじめに
知的障害のある方への支援サービスを実際に実施するのは、障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所と呼ばれる社会福祉施設等です。これらの施設等の支援は使い方によっては本当に大きな力になるでしょう。

一方で、その支援サービスは人手に頼る部分が大きいというのは見逃せない事実。だからこそ、本当に必要な支援は何か? そして、その支援は的確に受けられるのか? を明確にすることは重要です。

特に、支援サービスを行う施設等との相性にあたるようなものが、このような施設選びには欠かせない視点と言えるでしょう。

社会福祉施設等の体系と実施されるサービスなどを中心にまとめました。



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1. 知的障害のある方を支える社会福祉施設等とその体系
(1) 障害者総合支援法を基にした体系

① 障害者総合支援法とは?

「図-障害者総合支援法の概要」
-障害者総合支援法の概要

「障害者総合支援法」は、それまで障害のある方を支える法律であった「障害者自立支援法」を改正・発展させた法律です。そもそも「障害者自立支援法」が目指したのは、次の5つの点でした。

1) 障害者福祉サービスの「一元化」
2) 障害のある方がもっと「働ける社会」になること
3) 地域の限られた社会資源を活用できるよう「規制緩和」すること
4) 公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化・明確化」
5) 福祉サービス等の費用を国民全員で負担し支え合うしくみ

「障害者総合支援法」は、「障害者自立支援法」の5つの目標を生かしつつ、目的の改正と理念の明確化を行い、障害者の範囲を拡大、サービスの必要性を図る基準(=「障害支援区分」)の導入を行い、名称変更された法律です。

障害者総合支援法により、社会福祉支援施設等の利用を含むさまざまな支援サービスがある程度まで体系化されたということです。

② 社会福祉施設等でどんな支援がどの程度受けられるか、は、「障害支援区分」で決まる

「実際にどんな社会福祉支援設備でサービスが受けられるか?」は、知的障害のある方が「障害支援区分」と呼ばれる区分のどこにあたる方かによって決まります。

「障害支援区分」は、「障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの」と定義されています。

この区分により、非該当と区分1~6までの合計7つに分類されますが、数字が大きくなるほど(6に近づくほど)支援の必要性が高い(=支援範囲が広い)方とされます。

つまり、知的障害のある方ご自身が「どの障害支援区分にあたるか」という認定を受けた上で、その区分に該当する社会福祉支援施設等での支援サービスであれば受けられるというしくみなのです。

よって、社会福祉支援施設等での支援サービスを受けるためにまず必要なことは、市町村への申請し、「障害支援区分」の認定を受けることになります。

【関連記事】
知的障害のある方を支える法律 ~2つの大きな法律
https://jlsa-net.jp/ti/chiteki-law/

参考
厚労省ホームページ 
障害者自立支援法の概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0214-1a.html

障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html

(2) 知的障害のある方を支える社会福祉施設等の種類と支援内容、利用できる対象

「図-知的障害のある方を支える社会福祉施設等の種類」
知的障害のある方を支える社会福祉施設等の種類

知的障害のある方が利用できる社会福祉施設等には、大きくは「障害者支援施設等」と「障害福祉サービス事業所及び相談事業所」の2種類があります。施設や事業所ごとの支援内容は次のとおりです。

① 障害者支援施設等

生活の場の提供と、主に夜間、入浴・排せつ・食事の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事の他、生活面での相談や助言をするなど、生活全般にわたる援助等を行います。

② 障害福祉サービス事業所

1) 居宅介護事業所
生活の場の提供と、主に夜間、入浴・排せつ・食事の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事の他、生活面での相談や助言をするなど、生活全般にわたる援助等を行います。

2) 重度訪問介護事業所
自宅で、入浴・排せつ・食事の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事の他、生活面での相談や助言をするなど、生活全般にわたる援助等を行います。

3) 生活介護事業所
自宅での入浴・排せつ・食事の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事の他、生活面での相談や助言をするとともに、外出時における移動支援などを総合的に行います。

4) 行動援護事業所
危険を回避するために必要な援護など、外出時に必要な援助を行います。

5) 短期入所事業所
主に日中、障害者支援施設等で、入浴・排せつ・食事の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事の他、創作的活動又は生産活動の機会を提供します。

6) 重度障害者等包括支援事業所
自宅で知的障害を含む障害のある方を介護する人が、病気の場合等の際に、短期間、夜間も含め施設等で、入浴・排せつ・食事の介護等を行います。

7) 自立訓練(生活訓練)事業所
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助を包括的に行います。

8) 宿泊型自立訓練事業所
自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、入浴・排せつ・食事等に関する生活能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、生活等に関する相談及び助言を行います。

9) 就労移行支援事業所
居室その他の設備を利用することを通じて、家事等の日常生活能力を向上の支援と生活等に関する相談及び助言などを行います。

10) 就労継続支援(A型)事業所
一般企業等での就労が困難な方に、雇用契約に基づいて、生産活動その他の活動の機会の提供の他、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援を行います。

11) 就労継続支援(B型)事業所
一般企業等での就労が困難な方のうち、生産活動その他の活動の機会の提供の他、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援を行います。

12) 共同生活援助事業所
主に夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談や入浴・排せつ・食事の介護などの日常生活上の援助を行います。

③ 相談支援事業所

1) 計画相談支援事業所
障害福祉サービス等を受けるために必要な申請時に、サービス等利用計画を作成、サービス事業者等との連絡調整やサービス利用状況のモニタリングなど継続的な支援を行います。

2) 地域相談支援(地域移行支援)事業所
知的障害を含め障害のある方の地域生活への移行を進め、地域で安心して暮らすための相談支援を行います。地域移行支援事業所と地域定着支援事業所があります。

施設・事業所種類別の全国での設置数、主な対象者は、次の一覧にまとめるとおりです(平成28年厚労省調査)。対象になるかどうかは、その他にも細かい要件もあります。まずはお住まいの地域の市町村窓口にご相談されるとよいでしょう。

施設・事業所区分 設置数 主な対象者
事業所区分、設置数、主な対象者

参考:
厚労省ホームページ
障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html
社会福祉施設等調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/23-22.html

wamnetホームページ 障害者福祉
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/

2. 障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所の利用と費用

障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所の利用など、障害福祉サービスを利用した際の自己負担は、所得に応じて次の4区分で負担上限月額が設定されています。ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。
障害福祉サービスを利用した際の自己負担

※低所得:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象です
※一般1:収入が概ね600万円以下の世帯が対象です
※20歳以上で入所施設を利用されている方、グループホームを利用されている方で、市町村民税課税世帯の場合の区分は「一般2」となります

上記の収入を判断する世帯の範囲は次のとおりです
収入を判断する世帯の範囲

厚労省ホームページ
障害者の利用者負担
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html

3. 障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を選択するときの視点

「図-障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を選択するときの視点の整理」
障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を選択するときの視点の整理

(1) 相談支援事業所任せで良いのか? という問題

障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を利用する場合、申請手続きや認定後の支援サービス選びなど、相談支援事業所へ相談することになります。専門性や多くの情報を持つ相談支援事業所は心強い見方でもあります。

一方で、相談支援事業所に任せきりになるのは考えもの。知的障害のあるご本人でも、それを身内の立場で支援する方々でもない以上、必ずしもご意向を十分に把握できているとは言えないからです。

(2) 知的障害のある方ご自身と、保護者など支援をされている方の求める視点で整理する

最も大切なことは、知的障害のある方ご自身と保護者など支援をされている方が、どんな支援を求めるか? ということでしょう。

どんな支援を必要とするかを考えることは、なかなか難しいものがありますが、以下のような視点に分解してそれぞれ考えてみると整理しやすいのではないでしょうか?

④ ご自身ができることは何か?

たとえば以下のような視点で分解して考えると整理しやすくなります。

<できることを整理する視点の例>
1)時間の視点:日中・夜間、規則正しい生活など
2)生活行動の視点:整理整頓を含めた掃除、洗濯、調理を含めた食事、買い物など
3)自己管理の視点:身なりを整えること、体の調子を整えることなど
4)自分の持ち物を管理する視点:お金や物など
5)自分の個性という視点:好きなことや嫌いなこと、続けたいことなど

⑤ 障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を利用する目的は何か?

ご自身ができないことを代行してもらいたい、やりたいことをするためのサポートしてもらいたい、できるようになることを支援してもらいたいという3つの視点からの整理が中心になるでしょう。「欲求」に着目して整理すると、わかりやすい面もあるのではないでしょうか。

<「欲求」に着目した整理の視点>
1) 生理的欲求:食べること・寝ること・性的なことへの支援
2) 安全欲求:生活の場の確保・移動の安全確保・持ち物の安全・健康を保つことなどへの支援
3) 社会的欲求:友だちづくり場の提供などへの支援
4) 承認欲求:スキルや役割を得られることで社会的に認められることへの支援
5) 自己実現欲求:創作活動など自分の続けたいことを続けられる場の提供などへの支援

⑥ 障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所に求めるものは何か?

目的を果たすこと以外に、施設等の在り方という点で求めているものはないでしょうか? たとえば、以下のようなものです。

1) 共に生活する方が同じような障害がある・幅広い障害がある
2) 障害の程度があまり変わらない・幅広い
3) 施設等の雰囲気の良さ
4) 共に生活する方やスタッフの方との相性
5) 施設等の規律の程度 など

(3) 「評判」は参考程度に?

① 実際に利用されている方の評判

障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を選択する際、実際に利用されている方からの評判は気になるもの。そして、評判の良い施設等を利用することがベストな選択だと思いがちでもあります。

しかし、実際に必要となる支援の内容は人それぞれ。また、施設等に求めることも人それぞれでしょう。

たとえば、学校選びにおいて、自由な校風の学校を求めていた方が、規律正しさを育成することに定評のある学校に進学したとしたら高い評価をするでしょうか? このように考えると、人の「評判」というものは、あくまで参考程度に留める方がよいと言えるでしょう。

(4) 見学や体験利用の積極的な活用

利用候補になった障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所を実際に見てみることは非常に重要です。人が生活する場、相談をする場である以上、雰囲気や環境などはチェックポイントとして欠かせません。

些細なことと思われることが、実は知的障害のある方ご本人にとっては大きな問題となる場合もあるでしょう。

こういったことは、実際に行かない限りわからないことが多いもの。知的障害のある方ご本人と、支援される保護者の方などが一緒に見に行くことが大切と言えるでしょう。また、体験利用なども積極的に活用すべきと言えます。

(5) 障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所の限界

① 地域や個別の施設等によるサービスの質・量の差、という問題

知的障害のある方を支援する障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所では、さまざまな支援がされており、その数もたくさんあるように見えます。

しかし、その施設等の数は地域により大きな差があるとともに、また、そのことが質の差も発生させている面があるという課題があります。

② 地域の状況を知る方法 ~地域の情報公開制度の利用

2018年に改正・施行される障害者総合支援法で、施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告することが義務づけられるとともに、都道府県知事が報告された内容を公表するしくみが創設されることになっています。

各都道府県のホームページなどで情報公開されることが予想されますので、知的障害のある方ご自身と保護者やご家族など支援される方の将来のライフプランを立てるときなどは、特に、このような公的な情報も参考にしたいところです。

スタッフの方に依存しやすいという問題

知的障害のある方を支援する障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所での支援サービスは、人に頼る面がどうしても大きくなるという現実があります。人手不足が叫ばれる今の日本。これは障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所でも当てはまる問題です。

利用される方が多くなったり、支援がより多く必要な方が増えたりするとスタッフの方の目が届きにくくなるということも。

また、スタッフの方にも生活があり、その都合、気に入ったスタッフの方が離職されるなどもあり得ます。このような現実があることは、頭に留めておく必要があるでしょう。

最後に

知的障害のある方が生活し、また、必要な支援を受ける場や支援サービスを提供するのが障害者支援施設等や障害福祉サービス事業所です。これらの施設等の支援は使い方によっては本当に大きな力になるでしょう。

一方で、その支援サービスは人手に頼る部分が大きいというのは見逃せない事実。だからこそ、本当に必要な支援は何か? そして、その支援は的確に受けられるのか? 

さらに、支援サービスを行う施設等との相性にあたるようなものが、このような施設選びには欠かせない視点と言えるでしょう。なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考
厚労省ホームページ 
障害者自立支援法の概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0214-1a.html

障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html

社会福祉施設等調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/23-22.html

障害者の利用者負担
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan1.html

wamnetホームページ 障害者福祉
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構 代表理事として広報を担当する。現在、株式会社目標管理トレーニングの代表取締役としても活動を行っ...

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