要介護認定制度 認知症の方を支援する介護保険サービス

高齢者・認知症

はじめに
 認知症を患う方の支援の中心となるしくみは、介護保険制度です。介護保険制度上のサービスである介護保険サービスを受けるには、まず要介護認定を受ける必要があります。ここでは、要介護認定について、その概要や実際の認定の流れ、認定の視点などについてまとめています。

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1. 要介護認定とは?

要介護認定とは、介護保険サービスの利用を希望する方に対して、「どのような介護支援が、どの程度必要か」を判定するためのしくみです。介護保険サービスは、 65歳以上になればサービスを受ける資格を持つことになります(認知症の場合、40歳以上)。一方で、このサービスは資格を持てば誰でも受けられるというものではありません。

介護保険制度は、加齢に伴う生活上の困難や認知症を患うことによる困難に対して必要な支援を受けられるようしくみ化されたもの。つまり、ご自身の力で日常生活をおくることができる場合、受けられるサービスはないということでもあります。

こういったことから、介護保険サービスの利用を考える場合、まず要介護認定により、「要介護」または「要支援」と認定される必要があるのです。これは、40~64歳の若年性認知症の方も同じです。(40歳未満の方は、障害支援区分などの別のしくみにより、介護などの支援が必要であることの認定を受けることになります)。

2. 要介護認定のしくみ ~ 「介護の手間」×5つの分野、認知症の方の自立度による判定
(1) 要介護認定の流れ

「図-要介護認定の流れ」

要介護認定は、全国で共通の、また公平な介護保険サービスを提供するため行われます。客観的で公平な判定を行うことが重要であることから次のようなステップで進められることになります。

① 要介護認定の申請

認知症を患うなどして、介護保険サービスによる支援が必要になった場合、まずは要介護認定を受けたい旨、窓口に申請することが必要になります。認定を受けるための申請窓口は、お住まいの地域の市区町村の福祉課などです(地域により、名称などが異なります)。

② 調査員による調査

「図-要介護認定 調査の3つの視点」

お住まいの地域の各市区町村の認定調査員により、要介護認定を申請された方の心身の状況について、74項目にわたる基本項目と日常生活の自立度などの特記事項項目に関する調査が行われます。調査の視点は以下の3点です。

1) 調査観点となっている行動ができるかどうか
2) 調査観点となっている行動に介助が必要かどうか
3) 調査観点となっている症状の有無

③ 主治医による意見書の提出

主治医は要介護認定を申請された方の日頃の様子を知っていて、かつ客観的に評価できる医療の専門家です。そのような専門家の視点を考慮して認定を行うため、主治医の意見書が必要となるのです。

④ コンピュータによる一次判定

調査員による調査結果と、主治医の意見書を元に、コンピュータによる一次判定が行われます。

⑤ 学識経験者が行う二次判定

コンピュータによる一次判定を原案として、保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会で二次判定が行われます。このとき再度、主治医の意見書が加味され、「要介護度」という形で認定されることになります。

(2) 「介護の手間」の推計① ~5つの分野での「要介護認定等基準時間」の推計

「図-「介護の手間」、推計対象となる5つの分野」

要介護度の認定は、認定を受ける方の個別の状況に対して、必要な介護サービスを行うのにどの程度時間がかかるかという視点で推計されます。

このため、認定を受ける方の症状の重さと要介護度は必ずしも一致しません。たとえば、認知症により夜の徘徊が続いていた方の場合、その症状が進行し寝たきりになったりすると、認知症は進行したのに介護支援そのものの時間は少なくなるといったケースが考えられ、その場合は介護に必要な時間が短くなると推計されることもありえるということです。

具体的な「介護の手間=時間」の推計は、「1分間タイムスタディデータ」というデータとの関係を測るようなしくみで行われます。「1分間タイムスタディデータ」とは、施設や事業所に入所・入院されている高齢者約3,500人を対象に、48時間にわたって、どのような介護サービスがどの程度の時間行われたかを調べ、蓄積されたデータです。認定を受ける方と同じような状況にあった方に、どの程度の時間、介護支援が行われたかがわかるため、このデータと比較するようなしくみで推計されます。

この推計は、以下の5つの分野で行われます。つまり、分野ごとにどんな支援が必要か、必要な支援にはどの程度の時間がかかるかという推計がされるということです。

① 直接生活介助

身体に直接触れる、またはその可能性がある介助とその準備や後始末のことです。
<例>
1)顔を洗うこと・口の中を清潔にすること・身体を清潔にすること・頭を洗うこと・衣服や身なりを整えることなど、清潔さを保つことや身だしなみを整えることなどに関する介助
2)入浴に関する介助
3)排尿・排便に関する介助
4)食事に関する介助
5)体位を変える・起き上がる・乗り降りなどを含む移動に関する介助

② 間接生活介助

身体に直接触わることがない、あるいはその可能性がない介助とその準備や後始末のことです。
<例>
1)洗濯
2)食事の準備・後かたづけ
3)そうじ
4)コミュニケーション、会話

③ 問題行動関連介助

問題行動に関連して必要となる介助のことです。
<例>
1)不潔行為への対応
2)徘徊老人への対応
3)暴力行為への対応

④ 機能訓練関連行為

機能訓練に関連して必要となる行為のことです。
<例>
1)寝返り訓練
2)起き上がり訓練
3)座ること、座り続けることの訓練
4)立ち上がることの訓練
5)乗り降りの訓練
6)日常生活に必要な行動の訓練

⑤ 医療関連行為

医療関連職種の方、たとえば医師・看護師などによる医療面を中心とした行為のことです。
<例>
1)中心静脈栄養の管理
2)酸素療法の管理
3)褥瘡の処置
4)留置カテーテルの管理
5)浣腸
6)座薬の挿入

(3) 「介護の手間」の推計② ~認知症の度合い「日常生活自立度」という視点

 5つの分野で「要介護認定等基準時間」が推計されると、その時間を合計し、さらに、認知症の度合いを加味して、最終的な「要介護認定等基準時間」を推計していくことになります。つまり、認知症の度合を支援に必要となる時間として置き換え、はじめに推計された「要介護認定等基準時間」に加算するということです。

この認知症の度合いについては、「日常生活自立度」と呼ばれる以下の指標のどこに当てはまるのかという見方をしていくことになります。

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3. 要介護度・認定基準・受けられるサービスの関係
(1)要介護度・認定基準・受けられるサービスの関係 ~全体像

 ここまで見てきたような方法で、認定されることになる「要介護度」は、大きく2つ、さらに、その中がそれぞれ2つ、5つの合計7つに分かれています(対象外を含めると8段階)。認定後の区分となる「要介護度」と要介護認定の基準(要介護認定等基準時間+認知症の度合いから必要となる支援時間)、受けられる支援(サービス内容とサービス利用が可能な上限月額を示す「区分支給限度基準額」)との関係は、以下のようにまとめることができます。

※目安となる金額は、要介護度ごとに付与された単位に対し、1単位あたり10円として換算したものです

要介護度によって、給付上限金額である「区分支給限度基準額」が異なることがおわかりいただけるでしょう。基本的には、この上限金額の範囲で、どんな支援を受けるか検討していくことになります。なお、上限分までの自己負担額は1割となっています。

4. 要介護認定の結果が納得できない場合 ~対応と原因
(1) 不服申し立て

このような公平であることを優先して設計されたしくみで要介護認定がされますが、「こんな状況なのに要支援となった」「あの人は要介護3なのに、こちらは要介護2だ」というような話をよく耳にするのも事実です。このような場合、その認定結果に対する不服申し立てという形で再認定を受けることも可能です。ただし、再認定には数カ月時間がかかる場合もあり、また、その認定結果が変わらないことも多いようです。

(2) 原因として考えられること

 このようなことが起こる原因として、以下のようなことも考えられます。

① あくまで支援にかかる時間からの推計である、という点

 ここまででも見てきたように、要介護認定は支援に必要な時間に換算され、認定されます。症状の重さで決まるのではないという点の理解がまずは大切と言えそうです。

② 認定を受ける方の症状の波、という問題

要介護認定の流れで見たように、調査員が要介護認定を申請された方の状況を調査します。このとき、要介護認定を申請されたご本人の実際の「行動」「介助の有無」「症状の有無」を見て調査結果とします。認知症を患う方の場合、その症状はある程度の幅の中で一定な状態であって、常に症状が固定しているというわけではないでしょう。

特に、調査視点の1つである「行動」の面は、調査の時にたまたまできたという場合もあると考えられます。このことが要介護認定の判定に影響を与えることもあると考えられます。

③ 認定を受ける方の状況を正しく伝えきれていない

 また、要介護認定を申請された方の「状況」を正しく伝えきれていない可能性も考えられます。たとえば、「日常生活自立度」の基準について、ⅡaとⅡbの違いは家庭外か家庭内かの差、ⅢaとⅢbの差は日中か夜間かの差です。このような評価の差となるポイントについては、正しく状況を伝えることが大切と言えるでしょう。

また、普段の生活状況は、できないことだけでなく、できないことによって生活にどのような支障が出ているのか、またどのような方法で介助しているのかなど、より具体的に伝えるということも大切と言えるでしょう。

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最後に

 認知症を患う方を支える介護保険サービスを受けるには、要介護認定を受ける必要があります。この認定は、認定を受けようとするご本人の行動・状況や介助が必要かという3つの視点で74項目を評価、さらに認知症によってどの程度生活に影響が出るかという「日常生活自立度」とを合わせ、その介護にどの程度時間がかかるかという視点で認定されます。

認定された「要介護度」は7段階(対象外を含めると8段階)。段階ごとに利用できるサービスの上限金額が設定されています。つまり、要介護認定は支援を受けられる範囲を決定するものと言えます。正しく認定されるためにも要介護認定を受ける方の状況を正確に伝えられるようにすることが重要と言えそうです。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
要介護認定
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
認知症高齢者の日常生活自立度
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002iau1-att/2r9852000002iavi.pdf

独立行政法人福祉医療機構WAMNETホームページ
介護行為の種類について
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05kaig.nsf/0/18487f3e5f70d4974925689a003b8747/$FILE/05%20%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E.PDF

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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