法定後見人制度とは? 判断能力が不十分な方を保護・支援する
はじめに
法定後見人制度とは? 精神障害や知的障害、認知症などがあるなど、何らかの理由により判断能力が不十分な方々を、法律面や生活面で保護したり支援したりする制度に成年後見制度があります。また、成年後見制度には、ご本人の将来の判断能力の低下に備える意味合いの強い任意後見制度と既に判断能力が不十分な場合に利用できる法定後見人制度があります。
ここでは、成年後見制度のうち、既に判断能力が不十分な場合に利用できる法定後見人制度について、その制度の概要やしくみについてまとめています。
1. 成年後見制度とは?
成年後見制度とは、精神障害や知的障害、認知症などがあることによって判断能力が不十分な方々を保護し、支援する制度です。判断能力が不十分な方々の場合、たとえば、物の売り買いを含むご自身の財産管理であったり、介護などのサービス利用や施設利用に関する契約を結んだりといった、日々必要となる行為をご自身で行うことが難しい場合があります。
また、ご自身にとって不利益な内容であっても、よく判断できずに契約を結んでしまったり、いわゆる悪徳商法の被害に遭うなどの恐れがあったりもします。このようなことが起きないよう、保護・支援するしくみが成年後見制度です。
制度を支える理念として、以下の3つが求められています
障害の有無や年齢に関わらず、等しく生きる社会・福祉環境の整備、実現を目指す考え方のことです。
制度の利用については、保護・支援の対象となるご本人の自己決定を尊重するという考え方です。
ご本人の自己決定を尊重するとはいえ、必ずしも判断能力が十分あるとは言えない場合もあるでしょう。そこで、制度として、ご本人の状況を把握したうえで、適切な配慮ができるようにしくみ化されているということです。
参考:
法務省 ホームページ
成年後見制度 ~成年後見登記制度~
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a3
公益財団法人 成年後見センター・リーガルサポート ホームページ
https://www.legal-support.or.jp/support
2. 法定後見制度とは? ~ 成年後見制度のうちの一つの制度
「図-成年後見制度、2つの種類」
法定後見制度は、大きく2種類ある成年後見制度のうちの一つです。制度を利用しようとするご本人が成年後見制度を利用しようとする段階で、すでに判断能力が不十分な場合に利用できる制度です。
後見の役割を担う人は、本来であればご本人が信頼している方を選び、依頼したいでしょうし、依頼する範囲を決めたいと考えられるでしょう。
利用を検討している時点で「十分な判断能力があれば」、これを契約の形でまとめればよいということになりますし、もちろんそれで問題がありません。しかし、すでに判断能力が不十分になっているとしたら、有効な契約が結べない、つまり、契約によって依頼することができないということになります。
そこでしくみ化されているのが法定後見制度です。つまり、「判断能力が不十分な方を保護・支援する役割を担う方」を法律を使って決めるしくみと言い換えることができます。なお、保護・支援の役割を担う人を、ご本人が決め契約を結ぶ制度が成年後見制度のもう一つの制度である任意後見制度です。
参考:
法務省 ホームページ
成年後見制度 ~成年後見登記制度~
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a3
公益財団法人 成年後見センター・リーガルサポート ホームページ
https://www.legal-support.or.jp/support
3. 法定後見制度の3つの制度
「図-法定後見制度の3つの制度」
法定後見制度には、後見、保佐、補助の3つの制度があり、ご本人の判断能力の程度により、これらのうちどの制度の対象になるのかが決まります。判定を行うのは家庭裁判所になります。
法定後見制度の3つの制度について、概要をまとめると以下のとおりです。
後見は、判断能力が最も低い状態の方を保護・支援する制度で、「判断能力が欠けている状態が通常の状態」とされる方を対象とする制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人が、ご本人の利益を考えながら、ご本人の代理として契約などの法律行為をしたり、ご本人または成年後見人がご本人がした不利益な契約などの法律行為を後から取り消したりといったことができます。
つまり、ご本人が成年後見人の知らないところで高額の商品を購入させられたりした場合でも、その契約をすぐに取り消すといったことができるということです。ただし、自己決定の尊重の観点から日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については取消しの対象になりません。
保佐は、判断能力が著しく不十分とされる方を保護・支援するための制度です。たとえば、日常的な買い物程度は一人でできるものの、物忘れが頻繁に見られ、買い物の際にいくら払ったか、何を買ったか思い出せなくなるような場合など、重要な財産行為が一人でできないと考えられる場合が対象になります。
保佐の対象となると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買したりなど、法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。ご本人が保佐人の同意を得ないでした行為については、ご本人または保佐人が後から取り消すことができます。たとえば、ご本人、保佐人の知らないところで本来必要のないリフォームを契約させられた場合などには、すぐに契約を取り消すことができるということです。
ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要ありませんし、また、取消しの対象にもなりません。
なお、家庭裁判所の審判によって、保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり、特定の法律行為ついて保佐人に代理権を与えたりすることもできます。
補助は、判断能力が不十分とされる方を保護・支援するための制度です。たとえば、日常の生活にはほとんど支障はないものの、軽い物忘れやものごとの混同などが見受けられ、金銭の貸借や不動産の売買といった重要な財産行為を一人で行うことに不安がある場合が対象になります。
補助の対象になると、特定の法律行為について、家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権を与えることができます。たとえば、補助人に「金銭を借りたり、保証人なったりすること」について同意権が与えられている場合、ご本人が補助人の知らないところ、つまり補助人の同意がない中で、誰かの連帯保証人になっていたとしても、その連帯保証契約を取り消すことができます。
ただし、「保佐」同様、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、補助人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。
法務省 ホームページ
成年後見制度 ~成年後見登記制度~
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a3
4. 法定後見制度を利用するまでの流れ
「図-任意後見制度、利用までの流れ」
法定後見制度の実際の利用の流れは次のとおりです。必要書類等詳細を確認する意味でも、実際に利用される場合には、まずはお住まいの地域の家庭裁判所に問い合わせされることをおすすめします。
精神障害や知的障害、認知症などがあるご本人の判断能力の状況を、ご家族の方などを中心に見極め、法定後見制度の利用を検討します。
法定後見制度を利用したい旨の申請をするということです。申立人となれるのは、ご本人・配偶者・4親等内の親族等が原則です。また、このとき、申立書、保護・支援を受けるご本人の戸籍謄本、住民票、成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)をその時点では利用していないことを証明する「登記されていないことの証明書」などが必要になります。このときかかる費用は申し立てに数千円~程度です。
この申し立てを受けて、法定後見制度の利用が必要かなどの調査が始まります。実際に行われるのは、申立人や後見候補者との面接、医師の鑑定、親族への照会などです。このとき医師の鑑定が必要になると5万円~程度が必要になるようです。
後見人による支援が必要と判断されると、後見・保佐・補助のいずれかを行う法定後見人等が選任されるとともに、必要があれば後見監督人が選任されることになります。法定後見人等とは、実際に本人の財産管理や身上監護等を行う方、後見監督人とは法定後見人等の活動をチェックする方です。いずれも、後見登記という形で管理されることになります。
法定後見制度を利用し始めると、成年後見人等と選定されている場合には後見等監督人とに、それぞれ業務内容とご本人の資産内容に応じて家庭裁判所が審判した額の支払いが発生することになります。
参考:
法務省 ホームページ
成年後見制度 ~成年後見登記制度~
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a3
公益財団法人 成年後見センター・リーガルサポート ホームページ
https://www.legal-support.or.jp/support
最後に
法定後見制度は、大きく2種類ある成年後見制度のうちの一つで、「判断能力が不十分な方を生活面・法律面で保護・支援する役割を担う方」を、法律を使って決めるしくみです。判断能力が不十分であることが原因で、不要な高額商品を購入させられたり、リフォーム契約などをさせられたり、連帯保証人にさせられたりといったことが起きないようにすることが目的の制度と言えます。
後見、保佐、補助の3つの制度があり、ご本人の判断能力の程度により、どの制度の対象になるのかが決まりますが、その判定を行うのは家庭裁判所になります。ノーマライゼーション、自己決定の尊重、本人の保護の調和の3つの理念が掲げられている制度であることもあり、判断能力が不十分であっても、なるべくご本人の意思が尊重されるよう、配慮されている制度でもあります。
ご本人やご家族の方が、精神障害や知的障害、認知症などがあり、判断能力が不十分であるという場合、ご本人の意思に反するような生活面・法律面での行動をご心配されることもあるでしょう。そのような方々にご検討いただくとよい制度だということができるでしょう。
なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。
参考:
法務省 ホームページ
成年後見制度 ~成年後見登記制度~
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a3
公益財団法人 成年後見センター・リーガルサポート ホームページ
https://www.legal-support.or.jp/support
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