遺言の3つの方式とメリット・デメリット 

成年後見制度

はじめに
 ご自身に万が一のことがあったときに、お持ちの資産を、ご自身の想いを反映させて継承する方法として遺言があります。ここでは、遺言のそもそもの性質などをおさえながら、効力を発揮する遺言の3つの方式とそのメリット・デメリットを中心にまとめています。

1. 遺言の基本
(1) そもそも遺言とは?

遺言とは、ご自身の死後のために財産の処置などを言い残すことであり、その言葉です。ご自身が生涯をかけて築き、また、守ってきた大切な財産を有効に、かつ、有意義に活用してもらうために、その財産のうち何を、誰に引き継ぐのがよいのかを、財産を築き守ってこられた方の意思として示すもので、遺言者の意思の反映であると言い換えることもできるでしょう。

(2) 相続の基本的な性質 ~遺言の意味

遺言者の意思は、財産を受け継ぐ側の意思よりも優先される。これが相続の基本です。逆に言えば、遺言がない場合に限り、法の定める範囲で相続を行うことになるということです。

つまり遺言のメリットは、法定相続人以外にも財産を分け与えられ、何を誰に割り振るかを自由に決められ、法定相続の配分にこだわらず自由な比率で割り振りができるということです。

法定相続人以外へ遺産をおくることを遺贈といいますが、遺贈の中には負担付遺贈というものがあります。これは遺贈を受けた方が、遺贈の価格の範囲内で義務を果たすことが求められる遺贈の方法です。これを利用して、信頼できる方や機関に、障害のある方の支援をしてもらう代わりに財産の一部を遺贈することなども可能になります。

いずれにしても、法の定めに大きくは左右されることなく、自由意思により相続するということが遺言の意味と言え、またその際には、財産を受け継ぐ側の意思より財産を残す側の意思が優先されるということです。

参考:
日本公証人連合会
遺言
http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/

日本司法支援センター 法テラス ホームページ
相続・遺言
http://www.houterasu.or.jp/service/souzoku_igon/index.html

電子政府の総合窓口 e―Gov
民法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089

2. 遺言の3つの方式

「図-遺言の3つの方式」

「図-3つの遺言方式の主なメリット・デメリット」

遺言は、遺言を書かれた方の意思を実現するという大きな目的があります。このため、厳格な方式が定められており、大きくは次の3つの方式があります。また、方式に従わない遺言はすべて無効です。

(1) 自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言は、遺言者が紙に自ら目録を含む遺言の内容の全文を手書きし、かつ、日付、氏名を署名し、その下に押印することにより作成する遺言です。

① 自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットをひと言で表現すると、最も手軽という点があげられます。ポイントを整理すると次のようになります。

1) 自分で書けばよい
2) 特別な費用がかからない
3) いつでも書ける、また、いつでも更新できる

② 自筆証書遺言のデメリット

一方、自筆証書遺言のデメリットは、次のように整理することができます

1) 無効・紛争の種を残す可能性がある
相続する財産が限られていたり、財産を引き継ぐ対象が少なかったりといった、単純な内容な場合はともかく、そうでない場合には、法律的に見て不備がある内容になってしまったり、考慮不足が発生したりといった可能性が高まります。これが、後々の紛争の種になってしまったり、最悪の場合、遺言そのものが無効になってしまったりすることも考えられます。

2) 誤りの訂正なども、方式に沿う必要性がある
遺言は、書き方である方式が厳格に定められています。この点が自筆証書遺言のデメリットにもなります。自筆証書遺言は、すべてを自書する必要があります。このため、遺言上で書き間違いなどする場合もあるでしょう。この場合の訂正の仕方にも定められた方式があるのです。

つまり、訂正の仕方を含めた方式が厳格であるため、方式不備で無効になってしまう可能性が高まるということです。
ちなみに、遺言上で誤りを訂正した場合には、訂正した箇所に押印をした上で、どこをどのように訂正したかということを記して、そこにも署名しなければならないと定められています。

3) 遺言の検認をする手続きが必要
自筆証書遺言は、発見した方が必ず家庭裁判所に持参し、その内容を検認するための手続を経なければならないとされています。検認とは、遺言の内容を確認することで、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日時点での遺言の内容を明確にして、遺言の偽造・変造を防止するための手続のことをいいます。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

4) 破棄や改ざんの危険性
自筆証書遺言は、それを発見された方が「自分に不利なことが書いてあるのではないか?」と思ったときなど、破棄したり、隠したり、場合によっては内容を改ざんしたりしてしまう可能性がないとはいえません。

5) 身体に障害のある場合など、利用できない可能性がある
自筆証書遺言はすべてを自書する必要があります。このため、手に障害があることなどが原因で字が書けない方は利用することができません。

(2) 公正証書遺言とは?

公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容を公証役場の公証人に口頭で伝え、それに基づいて公証人が遺言者から聞いた内容を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として落とし込み作成する遺言です。遺言者と公証人との共同作業でまとめる遺言と言い換えることもできるでしょう。

① 公正証書遺言のメリット

自筆証書遺言のもつさまざまなデメリットを補う遺言の方式が公正証書遺言です。公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて、安全で確実な遺言方法である考えられます。

1) 遺言作成時に、専門家のアドバイスがもらえる
遺言を実際に書こうとすると、どんなことを書けばいいのか、まとめていけばいいのか、必要となる観点は何かなど、よくわからないことも多く、難しい面があるでしょう。公正証書遺言では、公証人に相談しながら、また、必要な助言を受けながら遺言を作成していくことになります。

公証人は、裁判官や検察官等として、法律実務に携わってきた法律の専門家なので、法律に関しては正確な知識を持たれていると考えられます。複雑な内容であっても、それを正しく伝えることができれば、法律的に見て整理された内容の遺言にすることができると言えるでしょう。つまり、遺言者にとって最善と思われる遺言が作成できるということです。

2) 方式不備で無効になることがない
遺言は、定められた方式である必要がありますが、この点、法律の専門家が作成することになるため、方式の不備で遺言が無効になることはないと言えるでしょう。

3) 遺言の検認手続きが不要
公正証書遺言は、自筆証書遺言とは異なり、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がありません。つまり、手続きを省略できるということができます。このため、相続が発生した場合、すぐに遺言の内容にある手続きを進めていくことができます。

4) 破棄や改ざんの危険がない
公正証書遺言では、原本が必ず公証役場に保管されることになります。このため、遺言が破棄されたり、隠されたり、内容を改ざんされたりといった心配はまったくないと言えます。

5) 自書する必要がない
自筆証書遺言は、全文を自分で自書する必要があります。このため、手に障害があることなどが原因で字が書けない方や遺言を書き切るだけの体力がない方など、自書が困難な場合には、自筆証書遺言をすることができません。
このような場合、遺言の内容を公証人に伝え、公証人が書面化する公正証書遺言なら作成することができます。

仮に署名することができなくなった場合でも、公証人が遺言者の署名を代書できることが法律で認められています。
また、遺言者が何らかの身体上の理由で公証役場に出向くことが困難な場合には、別途費用がかかるものの、公証人が遺言者の自宅や病院等へ出張して遺言を作成することもできます。

6) 秘密が漏れない
公正証書遺言は確実に秘密を守ることができる遺言でもあります。公正証書遺言は、公証人と遺言者に加え、証人2人の立ち会いが義務づけられています。これは、遺言者の真意、つまり本当の意図、意思をその内容に正しく反映することが目的です。

公証人には法律上の守秘義務が課されており、これは公証人を補助する書記も同様です。このため、公証人の側から秘密が漏れる心配はないと言えます。また、証人は、遺言者が選定することが原則です。つまり証人は、遺言者の依頼により、公正証書遺言作成の場に立ち会うことになります。このようなしくみであるため、どちらの側からも秘密が漏れるということはないということなのです。

なお、適当な証人が見当たらない場合には、公証役場で紹介してもらうことになります。その場合でも、遺言の目的を考えれば、証人は民法上の秘密保持義務を負うことになります。

② 公正証書遺言のデメリット

 公正証書遺言のデメリットは、以下と言えるでしょう

1) 費用がかかる
公正証書遺言の作成費用は、手数料令という政令で定められています。遺言の目的である、財産の価額に対応する形でその手数料が決められている他、各種の手数料がかかることになっています。なお、財産の価値に対応する手数料は、以下のとおりです。

1億円を超える分については、1億円を超え3億円までは5,000万円ごとに13,000円、3億円を超え10億円までは5,000万円ごとに11,000円、10億円を超える分は5,000万円ごとに8,000円が、それぞれ加算されます。

(3) 秘密証書遺言とは?

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言とを足して2で割ったような手順で作成する遺言です。遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をした上で封をし、遺言に押印した印と同じ印で封印した上で、公証人と証人2人の前にその封書を提出、自己の遺言であることと氏名・住所を申述、公証人がその封紙上に日付及び遺言者が申述した内容を記載した後、遺言者と2人の証人がその封紙に署名押印することにより作成されることになります。

① 秘密証書遺言のメリット

1) 自書である必要がない
自筆証書遺言とは異なり、自書である必要はありません。たとえばパソコンを利用しても第三者が筆記したものでも構いません。

2) 秘密にすることができる
上記の手続を経ることにより、その遺言が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にできると同時に、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができます

② 秘密証書遺言のデメリット

1) 無効・紛争の種を残す可能性がある
上記の手続で遺言を作成するため、公証人がその遺言の内容を確認することはできません。このため自筆証書遺言同様、法律的に見て不備がある内容になってしまったり、考慮不足が発生したりといった可能性はあり、それが、後々の紛争の種になってしまったり、最悪の場合、遺言そのものが無効になってしまったりすることも考えられます。

2) 手続きが面倒
秘密証書遺言は、その作成手続きが自筆証書遺言ほどには単純でなく、公正証書遺言と同程度の手間がかかると言えます。また、自筆証書遺言と同じように、この遺言を発見した方が必ず家庭裁判所に持参し、その内容を検認するための手続を経なければならないとされています。つまり、作成時にも、発見された時にも、ある種の手続きが必要になるということです。ある意味で、最も手間のかかる方式ということができるかもしれません

参考:
日本公証人連合会
遺言
http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/

日本司法支援センター 法テラス ホームページ
相続・遺言
http://www.houterasu.or.jp/service/souzoku_igon/index.html

電子政府の総合窓口 e―Gov
民法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089
裁判所 ホームページ
家事審判の申立書
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/index.html

最後に

ご自身に万が一のことがあったときに、お持ちの資産を、ご自身の想いを反映させて継承する方法が遺言です。遺言と聞くと遠い話のようにも感じる場合もあるかもしれませんが、障害のあるお子さんがいらっしゃる場合など、どう財産を使ってもらえるようにするのか、ご自身の意思を反映させられる制度と言うことができます。 

遺言は、その目的から方式が厳密に定められており、大きくは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方式があります。それぞれにメリット・デメリットはあり、とにかく手軽に安くということなら自筆証書遺言を、無効にならないことを最優先するのであれば公正証書遺言を、亡くなるまでは自分だけしか遺言の内容を知らないようにするには秘密証書遺言をと、ご自身のニーズに合わせて選択することができます。

いずれにしても積極的に利用することを検討してみてもよいしくいであると言うことができるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
日本公証人連合会
遺言

1 遺言

日本司法支援センター 法テラス ホームページ
相続・遺言
http://www.houterasu.or.jp/service/souzoku_igon/index.html

電子政府の総合窓口 e―Gov
民法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089

裁判所 ホームページ
家事審判の申立書
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/index.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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