自閉症療育のポイント AutismとESDMから学ぶ
はじめに
自閉症療育のポイントをAutismと早期療育プログラム「ESDM」から学んでみます。自閉症は近年日本では自閉症スペクトラム障害と呼ぶようになりつつあります。一方でそのとらえ方は、まだまだ誤解もあり、結果として適切な療育が行えないケースもあるようです。
ここでは、自閉的な傾向があらわれる原因を、英語対訳である「Autism」という単語から捉えつつ、また、「Autism」というとらえ方だからこそ開発されたとも考えられる「ESDM」という最早期療育プログラムの特徴から、療育のポイントなどを考えていきます。
1. 自閉症とその原因 ~ Autismという対訳英語から学べること
これまで自閉症のある方に見られる典型的な特徴、つまり、自閉的な特徴には、「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「興味や行動の偏りやこだわり」の3つがあるとされてきました。
最新の診断基準では、対人関係の障害とコミュニケーションの障害とを、基本的には1つの特徴としてとらえる形で再構成されていますが、いずれにしてもこれらの特徴により、社会生活を送る上で大きな困難を伴うケースが、「障害としての自閉症」と捉えられることになります。
一方で、上記の3つの特徴は、自閉症と診断された方のみに見られるものではありません。つまり、3つの特徴が見られる場合でも、生活上の支障がない、あるいは、支障が一定程度を超えない場合は、障害としての自閉症とは診断されないということです。
現在、自閉症は、自閉症スペクトラム障害と呼ばれるようになっています。
スペクトラムという言葉は「連続体」を意味するのですが、そのことからもわかるように、自閉的な特徴のあらわれ方は、「支援が必要な程度のものから、そうではないものまでが地続き」で、その境界を明確にするのが難しいということでもあるのです。
【関連記事】
自閉症スペクトラム障害とは?https://jlsa-net.jp/zhi/z-spectrum/
自閉症とは? ~その特徴ととらえ方の広がり、支援のあり方https://jlsa-net.jp/zhi/ziheisyou/
「図-Autismというとらえ方」
自閉的な特徴があらわれる原因は明らかにはなっていません。一方で、自閉的な特徴が見られる場合、脳神経の発達の仕方が、典型的な発達の仕方とは異なっていることはわかっています。
このことは、自閉症スペクトラム障害の対訳英語であAutism(=オーティズム)を見ると、理解しやすい面があると考えられます。実はAutismという言葉は、オートメーションやオートドアといった言葉の「オート」と、同じ由来を持つ言葉です。
一方で、Autismの対義語はTypicalで、「典型的」という意味を持っています。つまり、「自閉症スペクトラム障害=Autism」のある方というのは、典型的な脳を持つ方とは異なる「独自のとらえ方を自然とする脳タイプの持ち主」ととらえられるわけです。
このことから、自閉症スペクトラム障害のある方は、「脳が、さまざまな事象を、典型的なとらえ方をする人とは異なる<独自のとらえ方>をするため、その結果として、一般的なコミュニケーションが成立しにくい症状があらわれる」ということがわかるわけです。
「図-認知フレームとは?」
さまざまな事象のとらえ方のことを、「認知フレーム」と、脳科学や心理学の領域では言うことがあります。この「認知フレーム」は、遺伝的・先天的なものもあれば、時代や文化なども含む環境などにより後天的に身につくものもあると考えられています。
典型的な、つまり、Typicalな脳の場合、基本的にはほぼ同様の認知フレームが育つと考えられています。ただし、そこには性差があったり、出身地や背景となる文化や宗教、時代によっても違いがあったりすることもわかっています。
以前、「話を聞かない男、地図が読めない女」という本がベストセラーになりました。
この本では、同じ事実であっても、男女でとらえ方が違うことを科学的に証明したものを紹介しているのですが、Typicalな脳であっても、その集団の特性、たとえば男女などの違いによって、さまざまな差異があることがわかっているのです。
一方で、Autismな脳の場合、Typicalな脳とは異なる認知フレームが育つと考えられています。Typicalな脳の集団とは異なる見方をする認知フレームがつくられるということです。
「認知フレーム」は、人の脳内に数多く形成されるものですが、それは視覚だけでなく、嗅覚・聴覚・触覚・味覚でも形成されることがわかっています。
このことは、たとえば、古くから日本で愛されてきた梅干し、納豆といったものを、外国出身の方々が必ずしも美味しいとは感じないことを想像するとわかりやすいかもしれません。
一般的な脳は、楽をしようとする傾向があると言われています。
同じパターンの場面に出会ったとき、それが初めての場合は、あらゆる感覚を駆使してさまざまな情報を入手し、それが何なのか、危険がないか、安全なのか、どうしたら最適なのかといったことを、さまざまな思考をめぐらせ、判断していくわけです。
一方それが2度目以降、もっと言えば何十回とくり返した後だと、「これは、こういう場面だ」と、瞬間的に判断するようになる。
判断に必要な情報と、判断に不要な情報とを瞬時に区別することで、判断に不要な情報自体を切り捨てもします。そのようにして思考すること、つまり、脳を使うことを省略していくのです。
言い換えれば、次第に「鈍感になっていく」ということであり、また、このような瞬間的な判断をするようになった状態というのが「認知フレームがつくられた状態」ととらえられるわけです。
この世に生を受けてから出会うさまざまな場面は、その人にとってはすべてが初めてのこと。つまり、認知フレームがつくられていない段階です。
初めてのことばかり、だから、脳は活発に働く必要がある。一方で、時が経つにつれて、「初めてのこと」や「経験が少ないこと」は、どんどん減っていくことになります。つまり、認知フレームが脳の中につくられた状態になっていくわけです。
実際、認知フレームは3歳ごろまでが量産される時期にあたると言われています。
一方でAutismな脳の場合、不要な情報を切り捨てることが非常にニガテとされています。
言い換えれば、本来であれば楽をしようとする脳であるはずが、楽をしようとしない脳、つまり非常に敏感な脳と考えられるのです。
感じすぎるから、認知フレームをつくるのも難しい。同じ場面、あるいは、同じような場面であっても、毎回毎回が「初めてのようなものとして」、脳が認知しているととらえられるわけです。
実はこのような脳の持ち主が重宝される職業もあります。その一つがITプログラムのチェックや検証です。
実際マイクロソフトは、自閉症のある方を積極的に採用するプログラムを2015年4月から始めており、当初は米国内のみだったものが今では世界中で導入を進めています。
マイクロソフトが提供するサービスはITの領域になりますが、たとえばそのITプログラムのチェック・検証などの工程で、プログラムの間違いに気づいたり、問題点を抽出したりといったことを、高い精度で行えるのがAutismの方々なのです。
その事実について、同社のコーポレート・バイスプレジデントのメアリー・エレン・スミス氏は、次のように表現しています。
「Autismの方々は、マイクロソフトが求めている強みをお持ちです。それぞれ個性をお持ちであり、それは素晴らしい記憶力であったり、深い思考力であったり、数学力やプログラミング力であったりします」
(出典:Microsoft Corporate Blogs Microsoft announces pilot program to hire people with autism
https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2015/04/03/microsoft-announces-pilot-program-to-hire-people-with-autism/)
参考:
文科省
5 自閉症の理解と障害の状態の把握
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_13.pdf
東京大学大学院教育学研究科・教育学部
理解と支援の最前線(2)
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/cbfe/activity/doc/sympo20170702_inada.pdf
東京工業大学
認知フレーム
http://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=DownLoad&file=201410187-1065-0-117.pdf&type=cal&JWC=201410187
一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会
医療メディエーション:対話による関係構築
http://www.plus1co.net/rehabili/book/b2013_04/032-035.pdf
Microsoft Corporate Blogs
Microsoft announces pilot program to hire people with autism
https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2015/04/03/microsoft-announces-pilot-program-to-hire-people-with-autism/
Autism Speaks
Early Start Denver Model (ESDM)
https://www.autismspeaks.org/early-start-denver-model-esdm
The Association for Behavior Analysis International
https://www.abainternational.org/welcome.aspx
話を聞かない男、地図が読めない女/アラン・ピーズ、 バーバラ・ピーズ/主婦の友社
2. Autismな脳の持ち主が社会生活で大きな困難に遭わないために ~早期療育としてのESDM
「図-ESDMとは?」 日本における自閉症児教育との比較
先に見たように、Autismな脳は、「敏感過ぎる」がために、「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「興味や行動の偏りやこだわり」の3つの特徴を示すのではないかとも考えられています。
脳が「敏感過ぎるから」という説は、自閉症スペクトラム障害に見られるその他の特徴とも大いに符合する面があります。たとえば、音に過敏、光に過敏、臭いに過敏、といった特徴です。
また、お友だちなどと視線を合わせない、指し示す方向を見ない、呼ばれても振り返らない、同年代のお友だちといても関わりを持とうとしないといった行動が見られるのも、そのような「関係を持つこと」の「脳への刺激が大きすぎるから」ととらえると、合点がいく面もあるのではないでしょうか。
ただ、このような特徴は、社会生活をおくる上では大きな困難を伴う可能性があることを否定できません。
孤立してしまったり、自分の状況を説明できないがために暴力のような形で表現してしまったり、臨機応変な対応についていけなかったりといったことが起こりがちになるからです。
Autismな脳の持ち主に見られる自閉的な特徴のあらわれ方は、「支援が必要な程度のものから、そうではないものまでが地続き」であるとはいえ、その程度によっては、療育や教育では対応しきれない場合も多くあることもわかっています。
一方で、適切な療育・教育によって、社会生活をおくる上での困難を相当程度低減させることもできるとも考えられています。その方法として日本で一般的に行われているのは、認知行動療法や構造化支援、応用行動分析などです。
認知行動療法とは、認知の仕方に働きかけて、さまざまな認知の方法、思考方法とのバランスを改善することで、目の前の問題を解決し、さらに、その問題の解決を通じて心の状態を変化させようとする方法です。
たとえば、「ある友だちが他の友だちと帰宅した」という事実に対し、「自分は嫌われている」という考えが浮かび、悲しい気持ちになった、というような認知の仕方をする場合なら、異なる認知の仕方があることを理解させることを通じて、バランスの取れた認知の仕方に改善していくことになります。
自閉症の療育においては、不安や怒りといった感情の制御の面で利用されるケース多い方法です。
構造化は、生活や学習のさまざまな場面で、その意味を理解し、自分に何が期待されているのかをわかりやすく伝えたり設定したりするための方法で、「環境」や「活動」を「視覚的に」を示すものです。
構造化は、特に「自閉症教育」においては、従来から重視されてきた手法で、具体的には、次のような視点で対応していくことになります。
1) 物理的構造化
物理的構造化とは、家具、ついたて、カーペットなどを使い、各空間を物理的に区切ることで、各空間や場面で何をすればよいかを視覚的にわかりやすくすることを言います。
2) 時間の構造化
時間の構造化とは、その日の全体スケジュールなどの可視化と言い換えてもよいでしょう。このとき重視すべきは、本人が落ち着いて、主体的に活動できるようにすること。
よって、内容や順番を視覚的に示す、 「始め」と「終わり」を明確に示すなど、一人ひとりの理解度に合わせて、活動予定について見通しを持てるようにしていくことが重要になります。
3) 活動の構造化
活動の構造化は、時間の構造化の一部と考えても良いかもしれません。
あえて分ける場合、時間の構造化が1日の活動全体の流れであるのに対し、活動の構造化は、1日の各活動一つひとつを要素に分解し、何をするのか、どうするのか、どうなると終わりになるのかといったことをより具体的に示すこと、ととらえればわかりやすいでしょう。
4) 言語環境の構造化
言語による指示に統一感を持たせることです。「表現手法」という幅広いとらえ方の中で、ある意味では「言葉の視覚化」と言える部分があります。
言語環境の構造化で大切なことは、一人ひとりの状況に合わせて「一度でわかる伝え方」にすること。というのも、同じ指示でも言い方が異なることで、何が同じで何が異なるのかなど混乱しやすくなることが想定されるからです。
短文や肯定文で指示を出すといったことは、拳固環境の構造化の具体的なポイントの一つとなっています。
応用行動分析は、オペラントの条件づけに基づいた行動療法です。オペラントの条件づけとは、認知や行動面へ働きかける治療法の基本的なモデルで、報酬や罰といった「反応の結果」、つまり、「行動の結果として得られるものや与えられるものに適応して、自発的に行動することを目指すものです。
実際のオペラントの条件づけでは、次の4つの学習パターンを組み合わせていきます。
1) ホメられることやご褒美といった刺激を与えられることにより、ホメられる・ご褒美がもらえる行動をするように促す
2) 「叱られる」などの刺激を取り除くことにより、「叱られないための」行動をするように促す
3) 「叱られる」などの刺激を与えられることにより、「叱られる」行動をしないように促す
4) ご褒美などの刺激を取り除くことにより、「ごねる」といった行動をしないように促す
応用行動分析では、療育・教育の対象となる子どもにとっての自然な環境の中にオペラントの条件づけに基づく教育の機会を組込み、自発的な学習を行っていくことを通じて、「どのように他者とコミュニケーションとっていけばよいかを学ぶこと」を促すことになります。
【関連記事】
自閉症教育における「構造化」というキーワードとTEACCHプログラムhttps://jlsa-net.jp/zhi/zhi-kouzouka/
日本で実践されている認知行動療法や構造化支援、応用行動分析といった療育・教育方法は、効果が実証されている手法なのですが、一方で課題があることも指摘されています。それは、「ある程度の年齢にならないと利用できない」という点です。
実はここには2つの意味が込められています。1つは、上記のようなプログラムは、一定程度の年齢にならないと、利用場面がつくれないという意味。
そしてもう1点は、日本で「自閉症」と診断され、また、その対応としての教育が受けられるようになるのが「3歳前後が一般的となっている」という点です。
後者については、診断してもらえる年齢の他に、保護者の方などにとって「自閉的な特徴があることを、認めたくない思いが強い」ということも、大きな要因となっていると言われています。
一方で、自閉的な特徴は、早ければ早いほど抑制しやすいことがわかっています。つまり、可能な限り早い段階から適切な療育を受けられれば、将来的に社会生活をおくる上での困難が軽減できると考えられるのです。
アメリカで開発されたESDMは、1歳半から2歳の自閉的傾向のある幼児を対象とする療育方法です。実はこのESDMは、アメリカでは積極的に利用されており、また、実際に大きな効果が認められている手法です。
実際、仮に子どもが自閉症と診断されていなくても、保護者の方などが自閉的な特徴を疑えば、無料で受けられるプログラムとなっています。
ESDMで特に重視されているのは、「模倣」、「共同注意」を含む「前言語コミュニケーション」、「言語コミュニケーション」、情動の共有を含めた「社会性」、「遊び」の5つとされています。
それぞれの領域で、4つのレベルに区分された発達カリキュラムチェック表に基づいて、自閉的特徴のある子どもの発達に関わる課題を把握し、その結果に基づいて目標が定められ、段階的に指導が行われることになります。
指導にあたっては、先に見た応用行動分析の手法が用いられます。
具体的には、たとえば対象となる子どもに、1歳半から2歳児でもできる簡単で、かつ、その成果が目視できる作業遊びをさせ、それが成功した場合には、周囲にいる支援者が「ことさら大げさに喜び、ホメる」ということをします。
このことを通じて、その子どもに、自分が行ったことが周囲に影響を及ぼしていることを学び、世の中が「相互作用で成立していること」を、自然と理解できるよう促すといった具合です。
「Autismな脳」が敏感であることを考えると、「ことさら大げさに喜び、ホメる」というESDMの手法は、療育方法としては、一見ふさわしくないように感じるかもしれません。
ここでポイントになるのが、ESDMが1歳半から2歳から始める最早期プログラムであるという点です。
敏感な脳であり、かつ、「認知フレームが量産される時期」だからこそ、「これは特に重要なのだ」ということを判断できる「認知フレーム」をつくることが、将来の社会生活において重要になるという考え方なのだ、ととらえられるのです。
一方で、一定年齢を過ぎてしまうと、「大げさな態度、刺激」は、怯えを生むことになるだけ。
なので、ESDMのようなアプローチは、効果がないどころか、かえってマイナス効果を生んでしまうと考えられます。実際、ESDMは、厳格に5歳までに終了されるプログラムとなっているのです。
残念ながら日本では、ESDMを受けられる場は非常に限られています。しかし、その考え方を理解し、応用していくことはできるはず。
特に、「ひょっとしたら自閉的な特徴があるのではないか?」と思われるような場合、その手法を学び、最早期の療育に取り入れる検討をすることは、非常に重要なことと考えられるのです。
参考:
文科省
5 自閉症の理解と障害の状態の把握
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_13.pdf
国立特別支援教育総合研究所
自閉症のある幼児への包括的アプローチ
http://www.nise.go.jp/nc/wysiwyg/file/download/1/1511
認知行動療法センター
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about
独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
自閉症教育における指導のポイント
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-34/a-34_2.pdf
自閉症教育のキーポイントとなる指導内容
https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/395/a-34_1.pdf
Kumano’s Information Base
オペラント学習と行動療法
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT4.pdf
Autism Speaks
Early Start Denver Model (ESDM)
https://www.autismspeaks.org/early-start-denver-model-esdm
The Association for Behavior Analysis International
https://www.abainternational.org/welcome.aspx
最後に
日本では、自閉的な特徴のある方を、自閉症スペクトラム障害と呼ぶようになってきています。
この対訳英語は「Autism」で、オートメーションやオートドアといった言葉の「オート」と、同じ由来を持つ言葉です。
Autismの対義語がTypicalであることと合わせてを考えると、Autismとは、「典型的ではない、独特のとらえ方を自然とする脳の持ち主」ととらえることができます。
独特なとらえ方をする原因としては、「実は、脳が過敏で、典型的な脳が無視するようなことにも反応してしまう結果、典型的な脳であれば形成されやすい<認知フレーム>が形成されにくいから」とも考えられています。
このような脳を持つAutism、つまり自閉症の子どもの療育・教育について、日本では、認知行動療法、構造化支援、応用行動分析などが用いられてきました。
ただ、自閉症と診断されるタイミングが3歳程度になってから、ということもあり、最早期の療育が不足しているのではないか、との指摘もあります。
実際、アメリカでは、ご家族の方が「自閉的な特徴があると疑えば」無料で受けられるESDMとよばれる最早期療育プログラムが積極的に活用され、実際に効果を発揮していることがわかっています。
「Autismな脳」が敏感であることを考えると、「ことさら大げさに喜び、ホメる」といったことを指導法として取り入れているESDMは、療育方法としては一見ふさわしくないように感じるかもしれません。
実際、1歳半から2歳から始め、5歳までに終わらせる最早期のプログラムだからこそ、効果が認められるのであって、それ以降で同様のアプローチをすると、マイナスの効果ばかりになる可能性すら指摘されています。
だからこそ、 Autismというとらえ方に始まるESDMのような考え方を最早期の療育に取り入れていくことは、自閉的な特徴のある方々が、将来の社会生活をおくる上での困難を軽減する上で、非常に重要なことだと考えられるのです。
なお、この記事に関連するサイト及び資料は下記の通りです。ご参考までにご確認ください。
参考:
文科省
5 自閉症の理解と障害の状態の把握
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_13.pdf
国立特別支援教育総合研究所
自閉症のある幼児への包括的アプローチ
www.nise.go.jp/nc/wysiwyg/file/download/1/1511
認知行動療法センター
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about
独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
自閉症教育における指導のポイント
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-34/a-34_2.pdf
自閉症教育のキーポイントとなる指導内容
https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/395/a-34_1.pdf
東京大学大学院教育学研究科・教育学部
理解と支援の最前線(2)
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/cbfe/activity/doc/sympo20170702_inada.pdf
東京工業大学
認知フレーム
http://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=DownLoad&file=201410187-1065-0-117.pdf&type=cal&JWC=201410187
立命館大学人間科学研究所
「障害」と行動分析学
http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_02/02_011-019.pdf
Kumano’s Information Base
オペラント学習と行動療法
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT4.pdf
一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会
医療メディエーション:対話による関係構築
www.plus1co.net/rehabili/book/b2013_04/032-035.pdf
Microsoft Corporate Blogs
Microsoft announces pilot program to hire people with autism
https://blogs.microsoft.com/on-the-issues/2015/04/03/microsoft-announces-pilot-program-to-hire-people-with-autism/
Autism Speaks
Early Start Denver Model (ESDM)
https://www.autismspeaks.org/early-start-denver-model-esdm
The Association for Behavior Analysis International
https://www.abainternational.org/welcome.aspx
話を聞かない男、地図が読めない女/アラン・ピーズ、 バーバラ・ピーズ/主婦の友社
共感障害 :「話が通じない」の正体/黒川 伊保子/新潮社
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