精神障害者の雇用を事業場における治療と職業生活の両立支援から考える
はじめに
企業への障害者雇用が義務付けられる中、精神障害者の方の雇用は重要なテーマの1つです。ここでは、精神障害者の方を雇用する際、事業場における治療と職業生活の両立支援の在り方について考えてみたいと思います。
1.事業場における治療と職業生活の両立支援
(1)労働者本人の申出
(2)安全配慮義務<
(3)本人の自主性を尊重する
2.ストレスチェック制度の活用のススメ
(1)障害者雇用においてもストレスチェック制度は重要
(2)ストレスチェック制度の活用から自分の人生を考える
(3)障害者雇用における会社のスタンス
3.最後に
1.事業場における治療と職業生活の両立支援
『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』(以下、「ガイドライン」という)では、両立支援の留意点としていくつかあげており、その中の一つに『労働者本人の申出』という項目があります。
参考:
事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
ここには「私傷病である疾病に関わるものであることから、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本になること」と記載されています。ここは非常に重要な点であると私は考えます。
なぜなら、会社はその方の人生の主体者ではないからです。あくまで補助者です。病気を持ちながらどのように生きていくかは本人が決めることです。だからここは本人の想いを尊重する姿勢が必要です。
一方、会社は安全配慮義務(労働契約法第5条)があることから、いくら本人の申し出といっても結局は会社が関与しなければなりません。いずれにしても会社は関与するわけですから、心配していることや気がかりであること、支援する用意があることが伝われば、どのような支援を求めるかは本人が発信した方が良いでしょう。
しかしちょっと立ち止まって考えてみたいのですが、会社が先回りをして配慮するというのは問題が重症化しないという面では良いかもしれませんが、それは本人が申し出もらいたいことを肩代わりすることにもなりかねません。
もっと厳しい言い方をすると「本人が申し出るべき機会を奪っている」とも言えないでしょうか? 極論ですが、まったくの的外れでもないと思います。
障害者差別解消法においても本人の申し出ということが前提として挙げられていますし、病気・障害がない人で考えてみると、ある程度本人の自主性や考えを尊重するのではないでしょうか?
要するにこれはバランス問題なのではないでしょうか? 本人がどういう配慮が必要か? を自分で知るためには、どういう事が「しんどい」のかを自覚しておくことが望ましいと思います。
2.ストレスチェック制度の活用のススメ
そのために使えるものの一つが、ストレスチェックです。毎年一回自分の心身の状態をチェックしつつ、自分がいまどのようなことに困難を感じているかがわかるものですから、うってつけです。
組織においてストレスチェック後のアクションで大事なのはサポート体制の見直しをすることです。配慮が必要なものなどをできれば本人と確認できると良いと思います。
情報管理の問題もありますが、障害者雇用においてもストレスチェック制度はかなり使えるものだと考えます。
参考:
知的障害等のある労働者の ストレスチェック制度実施に関する 運用マニュアル
そして、病気・障害のある方がストレスチェック制度を通じて自分の人生を考えることにもつながります。
現時点でやれること、やれないことを知り、やりたいこと、ありたい自分を知り、そのために何をしたら良いのかを考える、またはそのための技術を学ぶなどができれば、その人は自己の人生に満足感を得やすいのではないでしょうか。
障害や疾病の特性上配慮が必要かもしれませんが、それはあくまでサブとしての関わりです。メインは「自身がどのように生きていくか」を考えることです。会社をそれを肯定的な態度で支援をすれば良いのです。
【関連記事】
障害のある方のための「職場におけるストレスチェック」の重要性
https://jlsa-net.jp/syuurou/stress-check/
3.最後に
病気や障害を個性と捉える傾向がありますが、それは本人の解釈の仕方であり、そうではない方はあくまで差別を取り除くための啓発的な意味合いを超えたものであってはならないと私は考えています。
両立支援とは周囲の配慮(特に企業)のあり方として重要テーマであるが、両立することを本人に求めたものではないことを理解しておきたい。
どのような生活をするかは本人の選択です。企業ができることは、様々な状況を抱えた本人が、自身にとってより望ましい人生になるための選択肢を用意することではないでしょうか。
一歩踏み込んだ制度設計に企業は挑戦していただきたいです。なんでも先回りすることがすべて良いこととは限りません。本人の考えや想いを訊いて、本人から表明してもらい、会社と対話することの方がずっと大事なことです。
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