知的障害特別支援学校における教育 ~その特徴的な指導と魅力

知的障害

はじめに
 障害のある方が学校教育を受ける場はいくつかあります。具体的には特別支援学校、特別支援学級、通常学級、通級指導教室などです。その中でも、筆者は知的障害のある方のための特別支援学校に見学・実習等で行かせてもらうことが多く、非常勤講師として勤務した経験もあります。
そこで、ここでは特別支援学校の中でも、知的障害特別支援学校の教育課程の大きな特徴やそこで行われる指導内容などを中心にご紹介していきます。

1.特別支援学校(知的障害)の教育課程
(1) 知的障害特別支援学校の具体的な時間割に見る、教育課程の特徴

「図-知的障害特別支援学校の時間割(例)」

① 大きな指導の目標は、障害のある方の自立と社会参加

特別支援学校では、どのような時間割で指導が行われるのでしょう? 上図では知的障害のある方を主な対象とした特別支援学校の時間割の一例を示しています。これを見てみると、知的障害特別支援学校でも小学校や中学校と同じく、国語・算数・音楽・図工などの各教科、道徳、特別活動などがあることがわかります。

ただし、教科の名前が小学校や中学校の教科と同じであっても、その指導目標や内容は小学校や中学校のそれとは異なる場合があります。特別支援学校では、その大きな指導の目標として、障害のある方の自立と社会参加を目指しているため、より実生活に活かせるような内容で構成されている点が大きな特徴の1つとなっています。

② 特徴的な授業 ~「自立活動」と「合わせた指導」

また、「自立活動」、「日常生活の指導」、「生活単元学習」、「遊びの指導」、「作業学習」というような、小学校や中学校の時間割ではなじみのない授業があることがわかります。

実は、「自立活動」というのは、特別支援学校の教育課程に特別に設けられた指導領域です。また、「日常生活の指導」、「生活単元学習」、「遊びの指導」、「作業学習」とは、「合わせた指導」と呼ばれるもので、各教科等の内容を1つの授業の中で合わせて行う指導形態です。このような知的障害特別支援学校の教育課程の大きな特徴を整理すると次のようになります。

1)「自立活動」という指導の領域があること
2)「音楽の時間に音楽を教える」、「国語の時間に国語を教える」といった教科別の指導形態の他に、教科等を「合わせた指導」という指導形態があること

(2) 自立活動は、学校の教育活動全体を通じて行われる

「図2-知的障害特別支援学校の教育課程(小学部の例)」

知的障害特別支援学校の教育課程は、「指導の内容」と指導の形態」の2つの視点から、上図のように整理することができます。これを見てまずわかるのは、「指導の形態」として、教科別・領域別の指導があるとともに、各教科等を合わせた指導があるという点です。

また自立活動に関しては、「指導形態」の領域別の指導として「自立活動」が時間割に設定されていますが、それだけではなく、「指導の内容」にも、「自立活動」が明確に示されています。つまり、自立活動は、学校の教育活動全体を通して行っていくこととされているということです。

2.自立活動とは?
(1) 「自立活動」は、特別支援学校の教育課程に特別に設けられた指導領域

「自立活動」は、特別支援学校の教育課程に特別に設けられた指導領域です。学習指導要領解説では、自立活動の目標は、「個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う」(文部科学省、 2009)こととされています。

つまり、障害のある方一人ひとりの実態に応じて、自分の力を可能な限り発揮し、主体的によりよく生きていけることを目指して指導が行われるということです。自立活動の指導は、一人ひとりに対して作成される個別の指導計画に基づいて、それぞれの方の学習上の特性等を踏まえながら指導が進められます。

(2) 自立活動は、常に意識され指導が行われる

また、前述したように、自立活動における指導は、「自立活動」という時間を設けて行う場合もありますが、それ以外にも、各教科での指導や後述する各教科を合わせた指導などの中でも、自立活動における一人ひとり個別の指導計画や身につけてほしい力を常に意識しながら進められることになります。

(3) 自立活動は、柔軟な指導体制、手段を用いて行われる

「自立活動」の時間における指導では、個別の指導計画に基づいてマンツーマンで指導したり、小集団で指導を行われたりします。また、その内容も一人ひとりさまざまです。

たとえば、自分の感情の理解や表現に困難さがある方の場合、教員とのマンツーマンの指導の中で絵カードや感情のレベル表を使って感情理解や表現を視覚的に教えることなどが考えられます。

また、「自立活動」という時間が設定されていなくても、その方の個別の指導計画に「自分の要求を教師に身振りや単語で伝えることができる」という目標が設定されていたならば、遊びの指導の中で、その方の「好きな遊びを教師」とし、自分の要求や意思表示をする手段を教えるといった方法をとることも考えられます。

3.各教科等を「合わせた指導」とは?
(1) 「合わせた指導」とは?

「合わせた指導」とは、その名が示すとおり、国語や算数などの各教科や道徳、外国語活動、特別活動や自立活動などについて別々に授業を行うのではなく、1つの授業の中で合わせて指導を行っていくという指導形態のことを言います。

学校教育法施行規則第130条2には、「特別支援学校の小学部、中学部又は高等部においては、知的障害者である児童若しくは生徒又は複数の種類の障害を併せ有する児童若しくは生徒を教育する場合において特に必要があるときは、各教科、道徳、外国語活動、特別活動及び自立活動の全部又は一部について、合わせて授業を行うことができる」と記されています。

(2) 「合わせた指導」の意味 ~実社会に近い形での学び

知的障害特別支援学校において「合わせた指導」が設定されている理由として、学習指導要領解説の中で以下のことが述べられています。

まず、知的障害のある方は「学習によって得た知識や技能が断片的になりやすく、実際の生活の場で応用されにくいことや成功経験が少ない」(文部科学省、 2009)ということが指摘されています。さらに、「実際的な生活経験が不足しがちであることから、実際的・具体的な内容の指導が必要であり、抽象的な内容の指導よりも効果的である」(文部科学省、 2009)とされています。

つまり、具体的な生活経験の中で、生きていく上で必要となる国語や算数的能力、生活スキルなどを総合的に指導していくことを目的に、「合わせた指導」を設定することが可能となっているということなのです。

(3) 「合わせた指導」にあてはまるもの

「図-「合わせた指導」に位置づけられるもの」

「合わせた指導」には、「日常生活の指導」、「遊びの指導」、「生活単元学習」、「作業学習」があります。

① 日常生活の指導とは? ~その位置づけと具体例

私たちが生きていく上で、着替えや歯磨き、身辺処理などの生活スキルは必要不可欠なものですが、それには、手の操作や運動能力、認識力など、さまざまな力を必要とします。「日常生活の指導」では、日常生活でくり返されるさまざまな日課の中で、さまざまな力を身につけたり伸ばしたりすることを通して、生きていく上で必要な生活スキルの習得を目指すことになります。

たとえば、知的障害特別支援学校では、通常、朝登校した後に先生へのあいさつ、上靴への履き替え、カバンの中の学習道具を取り出し、所定の位置へ整理する、服を着替えるといったような、毎日繰り返される活動、つまり、日課があります。

実はこのような活動の中にも、生きていくために必要なさまざまな力を発揮する必要があるのです。具体的には、上靴を履くためには靴の左右を弁別する力、かかとを踏まないように足を靴に入れ込むための力などです。また、カバンの中の学習道具を取り出し、所定の位置に置くためには、どこに何を置くかを認識する空間認識能力などが必要となります。

このような力を、日々繰り返される日課を通して学んでいくのが「日常生活の指導」です。

② 遊びの指導とは? ~その位置づけと具体例

「遊びの指導」のねらいは、遊びそのものを楽しむ中で、身体能力や社会性、コミュニケーション力などの様々な力を育むことです。たとえば、鬼ごっこをして遊ぶ際には走ることで身体能力(体育)を、鬼として1から10まで数えることで数字を順番に数える能力(算数)をそれぞれ学ぶことができると言えます。

なお、「遊びの指導」では、自分たちが比較的自由に取り組むものもありますが、その実態等を考慮しながら、題材や集団構成などを教員がある程度設定したうえで活動するようなスタイルをとるものもあります。

③ 生活単元学習とは? ~その位置づけと具体例

 「生活単元学習」では、児童生徒が生活上の目標を達成したり、課題を解決したりするために、一連の活動を組織的に経験することによって、自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習することになります。

具体的な内容としては、「クラスメイトの誕生日会をしよう」、「クリスマス会をしよう」など、行事のような形で設定されることが多いと言えます。「生活<単元>学習」と呼ばれるように、「単元」であることから、1日だけの授業で終わるのではなく、1週目には会の計画を、2週目には会の開催のための買い出しを、3週目には実際に会を開催するといったように、一連のまとまりとして学んでいきます。

「クリスマス会をしよう」という単元を例に考えると、クリスマス会を計画して開催する過程で、何をどれだけ買えば良いのか(算数)、招待する人に招待状を書くとき、どのように書けば良いのか(国語)などを学ぶ機会があると言えます。また、誕生日ケーキをみんなで作ることを通して家庭科的な要素やどのような声かけをしてプレゼントを渡せばよいか(コミュニケーション)などを学ぶ機会にすることもできると言えるでしょう。

なお、「生活単元学習」における学習活動は、一人ひとりの生活的な目標や課題に沿って計画され、指導されていくことになります。

④ 作業学習 ~その位置づけと具体例

 「作業学習」では、主に「はたらく」という職業に関する意欲やスキルを中心に扱います。たとえば、農耕を題材とした作業学習では、

1) 畑で種や苗を植えて野菜を栽培する
2) 育てた野菜を収穫する
3) 育てた野菜をバザーで販売する
4) 売上を計算する

といったような過程を通して、実際にはたらく意欲を培ったり、将来の職業生活や社会での自立に必要なスキルを総合的に学んだりしていきます。

最後に

 ここでは、知的障害特別支援学校の教育課程やそれぞれの時間にどのようなことを学習しているのかについての概略をご紹介してきました。ここでご紹介してきたように、知的障害特別支援学校では、障害や障害のある一人ひとりの方の実態に合わせ、指導が柔軟にできるような教育課程が組まれていることがわかります。

学校生活全体を通じて、それぞれの方に対する生活に即した教育の目標を大事にしつつ、その実態に合わせた指導形態をとりながら教育を行っているということです。

なお、この記事の参考文献は下記の通りとなります。合わせてご確認ください。

参考文献
文部科学省(2009)特別支援学校学習指導要領解説

takaya

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特別支援教育専攻・某大学院生

プロフィール

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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