アルツハイマー病とは? ~ 認知症との関係

高齢者・認知症

はじめに
アルツハイマー病は記憶、思考、行動に問題を起こす脳の病気です。アルツハイマー病が原因となって起きる認知症を「アルツハイマー型認知症」と言います。

また、毎年9月21日は、世界アルツハイマーデーで、その日が含まれる9月の1カ月は、世界アルツハイマー月間に指定されているとのこと。それだけ、アルツハイマー病、あるいは、アルツハイマー型認知症の方が多く、世界中の現象・傾向でもあるということです。

ここでは、世界的にも患う方が増えているアルツハイマー病について、そもそもアルツハイマー病とは何か、アルツハイマー病と認知症との関係を踏まえた疾患と症状との関係の他、症状や治療などを中心にまとめています。



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1. アルツハイマー病とは?

「図-アルツハイマー病と認知症との関係」
アルツハイマー病と認知症との関係

(1) アルツハイマー病とは?

① アルツハイマー病とは?

アルツハイマー病は記憶、思考、行動に問題を起こす脳の病気です。思考、計画、記憶に関与する大脳皮質の中でも、海馬と呼ばれる領域で特に激しく破損が起こり、皮質が萎縮していきます。結果、新しい記憶をつくり、それを貯めることができなくなるのです。

このようにアルツハイマー病により脳細胞が破損していくことは研究により明らかになっているものの、それがナゼ起きるのかは解明されていません。

② アミロイドβと呼ばれるタンパク質のゴミが原因?

実は、アルツハイマー病の原因として有力視されてきた仮説に「アミロイド仮説」と呼ばれるものがあります。アミロイドβと呼ばれる粘着性の高いタンパク質が作られることがアルツハイマー病の原因ではないかと考えられてきたのです。

アミロイドβが蓄積され、脳の神経細胞のネットワークが壊れ、認知症状を引き起こすということなのですが、最近では、アミロイドβは脳の防御反応の結果として生成されるものとの研究が発表されるようになっています。これを受けるような形で、「アミロイドβが過剰に生成されないようにするにはどうしたら良いのか?」ということが研究されるようになってきています。

(2) アルツハイマー病と認知症との関係 ~ アルツハイマー型認知症

アルツハイマー病が原因となって起きる認知症を「アルツハイマー型認知症」と言います。つまり、アルツハイマー病と認知症は、アルツハイマー病が原因で、認知症が結果という関係になっているのです。認知症とは、あくまで病気の結果あらわれる症状なのですが、「アルツハイマー型認知症」と呼ばれることが、この関係がわかりにくくしている面もあるかもしれません。

認知症のある方のうち、アルツハイマー型認知症の方が最も多いとされており、また、男性よりも女性に多く見られることがわかっています。脳血管性の認知症、つまり、脳の血管が詰まったりすることにより脳が破損し、認知症となる方は増えていないのに対し、アルツハイマー型認知症は増加傾向にあるとの報告もされています。

【関連記事】
認知症とは? 認知症の種類や症状
https://jlsa-net.jp/kn/ninchi/

若年性認知症とは?
https://jlsa-net.jp/kn/zyakunen-ninchi/

参考:
Alzheimer’s Association
アルツハイマー病とは
https://www.alz.org/asian/about/what_is_alzheimers.asp?nL=JA&dL=JA

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
アルツハイマー病
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/alzheimer.html

2. アルツハイマー型認知症に伴う症状
(1) 中核症状と行動・心理症状

「図-アルツハイマー病と認知症、その中核症状と行動・心理症状との関係」
アルツハイマー病と認知症、その中核症状と行動・心理症状との関係
他の認知症と同様、アルツハイマー型認知症の症状には、中核症状と行動・心理症状の2つがあります。アルツハイマー病と認知症、認知症の症状である中核症状と行動・心理症状の関係をあらわすと上図のようになります。

(2) 中核症状

アルツハイマー型認知症の中核症状には、大きくは次の4つがあります。

① 記憶障害

自分が体験した過去の出来事に関する記憶が抜け落ちてしまう障害のことです。認知症の場合、最近のことから忘れていくという特徴があります。具体的には、会う約束をしていたとしても、約束をしたこと自体を忘れてしまい、そんな約束をした覚えがないとなってしまうなど、一般的な物忘れとは異なる症状が見られます。

② 理解・判断力障害

日常生活の些細なことでも判断することができなくなる障害です。

たとえば料理をする際、調味料をどれくらい入れたら良いかや、どんな食材を使うかなどの判断ができないといったものです。さらに症状が進行すると、手順がわからなくなって料理すること自体ができなくなります。
また服がちぐはぐになったり、季節に合わない服を着たりすることもあります。

他にもそうじをする際、捨てる物がわからなくなったり、かたづけ方がわからなくなったりするため、部屋が散らかりゴミだらけになることもあります。しかし、臭いに対して鈍感になるため、ゴミが増えても気にならないといったことにつながりがちです。

③ 実行機能障害

ある目標に向かって、計画を立てて順序よく物事をおこなうことができなくなる障害です。具体的には計画的に買い物ができなくなったり、家電製品の使い方がわからなくなったりするというような特徴があります。

④ 見当識障害

時間・場所・人物や周囲の状況を正しく認識できなくなる障害です。たとえば、今日の日付がわからなくなる、時計が読めなくなるといったものです。時計の場合であれば、デジタル式だと読める方もいらっしゃいますが、これも症状が進行すると読めなくなっていきます。

また自分がいる場所がわからなくなるため、よく行くような外出先でも迷子になるようなことがあります。このことは家の中でも起きるもので、たとえばトイレの位置がわからないだけでなく、トイレの前に立ってもドアがわからなくなり、失禁してしまう場合も出てきます。

(3) 行動・心理症状

中核症状以外に、行動面・心理面で次のような症状が見られるようになります。ただし、これらの症状のすべてが表れるというわけではありません。

① 妄想:物を盗まれたなど、事実でないことを思い込む、など
② 幻覚:見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる、など
③ せん妄:落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやく、など
④ 徘徊:外に出て行き戻れなくなる、自分がどこにいるのかわからなくなる、など
⑤ 抑うつ:気分の落ち込み、無気力になる、など
⑥ 人格変化:性格が変わる、たとえば穏やかだった人が短気になる、など
⑦ 暴力行為:自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできずに暴力をふるう、など
⑧ 不潔行為:入力を嫌がる・風呂に入らない、排泄物をもてあそぶ、など

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

Alzheimer’s Association
アルツハイマー病とは
https://www.alz.org/asian/about/what_is_alzheimers.asp?nL=JA&dL=JA

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
アルツハイマー病
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/alzheimer.html

3. アルツハイマー型認知症の問題点 ~ アルツハイマー病は進行型であるという点

アルツハイマー型認知症は、進行型であるという点が非常に大きな問題でもあります。つまり、アルツハイマー病の場合、時を経るに従い認知症状に変化があらわれるということです。一般的には次のような段階を踏んで進行していく、とされています。

(1) 段階1: 認知機能の障害なし

この段階では、一般的には記憶能力の低下を経験していないため、専門家との問診においても問題が発見できません。逆に言えば、認知機能の低下を経験しなくても、アルツハイマー病による脳の破損が始まっている可能性があると言えるわけです。

(2) 段階2: 非常に軽度の認知機能の低下

度忘れのような経験を持つようになります。特に慣れていた言葉や名前、日常的に使用するカギやメガネなどの物の置き場所を忘れるといった症状が見られます。ただしこのような問題はご本人しか気づいていないため、健康診断によって明らかになることもなく、また、ご家族やご友人、同僚の方々も気づかない場合がほとんどと言われています。

(3) 段階3: 軽度の認知機能の低下

この段階になると、一部の方が初期段階のアルツハイマー病として診断されるようになります。ご家族やご友人、同僚の方々などが、「なんだかおかしい」と変化に気づき始める段階でもあるからです。他にも、記憶や集中力に関する問題が認知症診断の測定などで明らかになる場合がある他、詳細な問診を経て発覚する場合もあります。

この段階で見られる認知症に伴う困難には、一般的には次のようなものがあります。

① ご家族など、親しい人々の名前などを思い出せない
② 新しく知り合いになった方の名前を覚える能力の低下
③ ご家族、ご友人、同僚の方々などが、職務などの遂行能力の低下に気づく
④ 文章を読んでもほとんど覚えていない
⑤ 価値のある物品を失くしたり、置き忘れたりする
⑥ 計画を立てたり整理したりする能力の低下

(4) 段階4: 中等度の認知機能の低下

問診により次のような問題が明らかになる段階です。

① 最近の出来事について覚えていない、あるいは、それらの知識が少ない
② 100から7ずつ引いていくといった暗算を解くのが困難
③ 複雑な作業、例えばマーケティング、お客さまを招いての夕食の計画、清算、支払いの管理などをすることが難しい
④ 自分の生い立ちについての記憶がなくなっていく
⑤ 特に社交性を求められるような場やストレスがかかるような場で、引っ込み思案になる

(5) 段階5: やや重度の認知機能の低下

記憶に大きな欠落が見られる段階です。認知機能における障害が見られる状態であるため、日常生活でもサポートが必要になります。この段階で見られる症状には、次のようなものがあります。

① 問診などの場で、今の住まいの住所、電話番号、卒業した大学や高校名といったことを思い出せない
② 場所、日付、曜日、季節などが混乱する
③ 40から4ずつ引く、あるいは20から2ずつ引くといった簡単な暗算を解くことが困難
④ 季節や状況に応じた服装を選ぶのに助けがいる

一方で、一般的には次のようなことでは問題は起きない段階です。

① ご本人・配偶者・子どもの名前は覚えているなど、ご自身については相当の知識・記憶がある
② 食事やトイレの使用では手助けを必要としない

(6) 段階6: 重度の認知機能の低下

記憶障害が進行し、性格に大きな変化が見られたり、日常生活でかなりおおがかりな手助けを必要としたりする段階です。この段階では、一般的には次のような症状が見られます。

① 最近の経験および出来事、周囲の環境について、ほとんど認識していない
② 自分の名前は覚えているものの、自分の生い立ちについては完全には思い出せない
③ 知り合いと知らない人の顔を見分けることができるものの、配偶者やご家族などの名前を時々忘れる
④ 日中用の洋服の上に寝巻きを重ねたり、靴を誤った側に履くことがあったりするなど、不適切な着衣が見られる
⑤ 起床時間など睡眠サイクルが乱れる
⑥ 使用後に流すトイレットペーパーの適切な使用など、トイレの使用に手助けが必要
⑦ 尿失禁や弁失禁などを度々してしまう
⑧ 性格が大きく変化し、疑心や妄想、幻覚、気を揉む、ティッシュペーパーを引きちぎるなどの強迫的または反復的な行動、といった行動的症状がみられる
⑨ 徘徊し迷うことがよくある

(7) 段階7: 非常に重度な認知機能の低下

アルツハイマー病の最終段階です。環境に反応したり、会話したりすることができない他、最終的には体の動きを制御する能力を失っていきます。ただしこの段階でも、単語や文章を口にする場合はあります。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

Alzheimer’s Association
アルツハイマー病とは
https://www.alz.org/asian/about/what_is_alzheimers.asp?nL=JA&dL=JA

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
アルツハイマー病
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/alzheimer.html

4. アルツハイマー病は治せる? ~ アルツハイマー型認知症の治療

「図-アルツハイマー病とその予防・治療」
アルツハイマー病とその予防・治療

(1) 早期発見・早期治療が重要

アルツハイマー型認知症は、研究が盛んにすすめられているものの一つで、さまざまな治療薬なども開発されています。とはいえ、その治療薬は基本的には「その進行を抑制するもの」で、現時点では根本から治療することはできない、とされています。

一方で「進行を抑制できる」ことは明らかになっています。「進行を抑制できる」ということは、早期に発見し、早期に治療すればするほど、アルツハイマー型認知症に伴う困難が起きることを先へ先へと送っていくことができ、生活上困ることがないようにしていくことが可能になるということでもあります。

よって、異変に気づいたら、なるべく早く、認知症専門病院である認知症疾患医療センターの他、神経内科・もの忘れ外来などのCTやMRIなどを使って脳の検査ができる病院で、受診することが重要となります。

(2) 進行を抑制する習慣を身につける

生活習慣を見直すことがアルツハイマー型認知症の予防やその進行の抑制につながるとされています。高血糖状態や喫煙、飲酒、運動不足、睡眠不足などは発症リスクを高める他、その進行にも影響を与えると考えられています。これらの習慣は、認知症以外にも生活習慣病の発症に関わることでもあるため、積極的に改善していくことが重要ということになります。

【関連記事】
認知症を予防する ~認知症予防に有効な生活習慣と呼吸の重要性
https://jlsa-net.jp/kn/ninchi-yobousyukan/

(3) 脳を刺激する

積極的なリハビリや会話などは、脳を活性化し、症状の改善につながると言われています。他にも簡単な本を声を出して読んだり、音楽を聴いたり一緒に歌ったり、手や指を積極的に使う折り紙やお手玉などが、脳の活性化には効果的とされています。

また、料理や掃除などを介護をされる方が一緒にやることも重要です。脳が刺激されることはもちろん、自分にできることがあるという自負が、症状の悪化を防ぐと考えられるからです。

厚労省 みんなのメンタルヘルス
認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

Alzheimer’s Association
アルツハイマー病とは
https://www.alz.org/asian/about/what_is_alzheimers.asp?nL=JA&dL=JA

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
アルツハイマー病
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/alzheimer.html

最後に

アルツハイマー病は記憶、思考、行動に問題を起こす脳の疾患で、これが原因となって起きる認知症を「アルツハイマー型認知症」と言います。アルツハイマー型認知症は、認知症の5割~6割を占めるとされるもので、研究が進められてはいるものの、その原因はわかっておらず、また、根本的に治療できる方法も現段階では見つかっていません。

他の認知症と同様の中核症状と行動心理症状が見られますが、早期発見・治療、生活習慣の改善、脳への刺激等により、その進行を抑制することができるとされています。もしかしたら、ということがあるようなら、なるべく早く、診察を受けることが重要になると言えるでしょう。

なおこの記事に関連するサイト及び資料は下記の通りです。ご参考までにご確認ください。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

Alzheimer’s Association
アルツハイマー病とは
https://www.alz.org/asian/about/what_is_alzheimers.asp?nL=JA&dL=JA

公益社団法人認知症の人と家族の会
世界アルツハイマー月間 2018 http://www.alzheimer.or.jp/?p=12705

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
アルツハイマー病
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/alzheimer.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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