身体障害のある方を支える教育のしくみ(全体像)

精神障害

はじめに
 身体障害のある方やその保護者の方にとって、教育に関することは、最も気になることの1つでしょう。ここでは、身体障害のある方ご本人にとっての教育だけでなく、身体障害に関する日本社会全体での教育の状況やしくみ・制度に関して、その大枠をまとめています。

1. まずは情報を入手する習慣と具体的に相談する習慣を
(1) 具体的な相談をするために・・・状況を説明できること、が、まずは大切

 身体障害は、決して目に見える障害だけではありません。身体障害者福祉法での「身体障害者」の定義は、「視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害といった身体上の障害のある18歳以上の方で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた方」とされています。つまり、身体障害の範囲は非常に広いと言うことができます。ただ、この事実は、広く社会的な認知が十分とは言えないという現実があるでしょう。

その意味で、身体障害は、身体障害のある方や支援をされる保護者の方だけで解決していくようなものではないと言えるでしょう。必要な支援を受けながら必要な教育を受けることはもとより、身体障害があることがどういうことで、社会的なインフラ整備も含めた社会環境としてどんな支援が必要なのかをともに考えていくことが非常に大切なことだということです。

(2) 身体障害の範囲の広がり・・・情報を入手する習慣

 情報には、法律やしくみ・制度などの「客観的な情報」と、体験談などに代表される「主観的な情報」とがあります。教育を含め、身体障害のある方の福祉サービスは充実する方向です。しかし、そのほとんどすべてが申告に基づく認定制です。最新の情報を入手する習慣を身につけておけば、身体障害のある方に、よりあった支援を受けられる可能性が高くなると言えるでしょう。

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov 身体障害者福祉法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=324AC1000000283&openerCode=1

2. 身体障害のある方を支援する教育:方針は国、実際に行うのは都道府県・市区町村や各機関

教育を受ける権利は、憲法で保障されているもので、これは身体障害のある方にとっても例外ではありません。このために必要な法整備やルールづくり・しくみづくりや実際のサービスの提供などを、各機関が役割分担して実行しています。

(1) 国:

障害のある方への教育について、方針を示す、法律を制定するなど、しくみや制度の柱になることを決める役割が中心です。なお、身体障害のある方を教育面で支える主な法律には以下があります。

学校教育法
障害者基本法
身体障害者福祉法
障害者総合福祉法
児童福祉法
障害者雇用促進法
など

(2) 都道府県・市区町村(都道府県庁・市区町村の役所・教育委員会など):

各地域の実情に合わせて、しくみや制度を整備し、教育に関するサービスを提供します。つまり、障害のある方へのサービスの詳細を決めたり、障害のある方の相談に対応したり、サービス申請の窓口対応をしたりするということです。他にも、地域住民の教育を国と共に担当する、地域の各機関が定められたとおりサービスを実施しているか、管理・監督することなども役割になります。

(3) 各サービスの実行者(各種学校、組織、民間企業など):

学校を中心とした公的機関の他、民間企業などもサービスの提供を行っています。

以上のように、それぞれの機関が、身体障害のある方の教育を支えています(というよりは、障害のある方を含めた人々の教育を支えています)。とはいえ、たとえば義務教育や高校・大学教育、生涯学習を含む教育の振興を文科省が、子育てや労働に関しては厚労省がそれぞれ担当するなど、支える機関によって役割範囲の違いがあったり、担当機関の引継ぎが発生するタイミング(例えば就学タイミング)があったりします。

参考:
厚労省ホームページ 障害者の範囲(参考資料)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1031-10e_0001.pdf

電子政府の総合窓口 e-Gov ホームページ
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/init/

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター
障害保健福祉研究情報システム
障害者に関する法律関連
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/law/archives.html

3. 教育の対象 ~身体障害のあるご本人、支援をされる方、そして社会

「図-身体障害のある方を支える教育のしくみ」

「身体障害のある方を支える教育」は、身体障害のある方ご本人向けの教育制度やしくみだけがあればよいというわけではありません。「身体障害」に対する社会での誤解が大きければ大きいほど、身体障害のある方は「社会での生活がしづらい」と感じられるでしょう。身体障害に対する誤解の一つとして、「身体障害とは目に見えるもの」という誤解です。実際には、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害といった身体上の障害であり、「必ずしも目には見えない障害も身体障害の対象」です。

このような誤解も含め、身体障害のある方が、「身体障害のあるとはどういうことか、理解されないこと」が理由で「社会での生活がしづらい」と感じられているのであれば、社会として解決する必要があります。このような理由から、身体障害にまつわる教育は、身体障害のある方ご本人だけでなく、サポートされる保護者の方、支援機関、地域社会や企業などにも実施する必要があるのです。

4. 発達段階(≒ライフタイムイベント・時期)に応じた身体障害のある方への教育支援(全体像)

「図-発達段階(≒ライフタイムイベント・時期)に応じた身体障害のある方への教育支援」

 次に、身体障害のある方ご本人(及び保護者の方)への教育支援の全体像を見ていきます。なお、保護者の方にとってもっとも気になると思われる学齢期(学校に通う期間に相当)の教育は、学校教育法における「特別教育支援」として、しくみが整備されています。

(1) 幼少期の主な教育支援

① 早期発見支援

身体障害のある方の教育で、最も重要なのは障害の早期発見、と言えます。特に、視覚障害・聴覚障害・内部障害といった目に見えない障害のある場合、早期に発見されれば、医療面での措置だけでなく、障害の内容に合わせた教育支援が可能となるからです。身体障害の早期発見を行うための支援として、以下のような支援があります。

1) 乳幼児健康診査
2) 3歳児健康診査
3) 就学時の健康診断

② 就学支援

小学校・中学校への就学について、身体障害のある方は、通常級・通級(通級指導教室)・特別支援学級・特別支援学校などの選択肢の中から、障害の程度などを考慮しながら、就学先を選択することになります。

1) 通常級:
小学校・中学校で通常の授業を行う学級のことです。

2) 通級指導教室(通級):
通常の学級(通常級)に在籍し、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状況に応じた特別な指導を、特別な指導の場で行うものです。

3) 特別支援学級:
障害の種別ごとの少人数の学級で、障害のある児童一人ひとりに応じた指導を行う学級です。一部の教科の指導は、通常級で行う場合もあります。

4)特別支援学校:
心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。以前は、盲学校・聾学校・養護学校のように、障害の内容で区分が設けられていましたが、統合されました。一方で、特別支援学校ごとに、支援できる障害の対象が異なるという現実もあります。なお、厚労省の発表によれば、平成27年時点での身体障害の区分別の特別支援学校数は以下のとおりです。

なお特別支援学校では、障害に基づく種々の困難を改善・克服するために、「自立活動」という特別な指導領域が設けられています。

③ 就学相談

就学先の選択は、身体障害のある方ご本人、保護者、教育委員会との間で相談しながら行うことになります。これを、就学相談と言います。身体障害のある方ご本人にとって、もっとも適している教育環境は何か? を検討し、準備することが目的です。

④ 経済面での支援

身体障害のある方が義務教育を受ける際、必要となる勉強道具・通学費・給食費など、保護者の経済的負担を国や地方公共団体が補助するしくみに、特別支援教育就学奨励費があります。特別支援学校・特別支援学級に通っているか、通級などの場合でも障害の程度によって支給されます。(保護者方の経済状態も、支給対象か否かの判断材料です)

(2) 青年期の主な教育支援

① 就学支援(進学支援)

1) 高校
高校においては特別支援学級が設置されていないのが現状です。その理由としては、義務教育でないこと、入学試験などを通じて選抜されることなどがあげられます。ただし通級における支援については、文科省が2018年度から運用を開始する準備を進めています。なお、文科省の調査によれば、中学校で特別支援学級を卒業した生徒のうち、進学する生徒は9割以上。そのうち6割程度が特別支援学校の高等部に進学しています。

2) 大学
内閣府の発表によれば、平成24年3月の特別支援学校卒業生の大学等への進学状況は、以下のとおりです。

進学率が合計でも5%程度、また総数で200名程度という状況であるため、基本的には個々の大学の支援担当者が、身体障害のある方の支援を個別に行っているという状況にあります。

・就学まで
病識が乏しい学生へ医療機関への受診を勧めたり、受診の継続を促したりといった支援をしています。

・就学にあたって
多くの大学で、自己申請受けて、個別の支援策を行っています。なお、支援の申請にあたっては、医療機関による診断書の提出を求めているようです。これは、主治医や専門医からの具体的な所見を参考に、どんな支援が必要かなどの環境整備に役立てられるからです。

・復学について
病状の悪化などでやむなく休学した後、復学を希望する場合は、カウンセラーや学校医を通じ、主治医や保護者と連携しながら、復学後の環境整備・調整が行われます。

② 就労支援

厚労省が中心となって、障害者雇用対策を進めています。この雇用対策の中で、身体障害のある方に対する職業訓練教育や、大学生等の就職におけるインターン制度のような体験教育といった教育制度が設置されています。これらの制度は、職場における障害全般に関する意識改革などの教育という側面も持っています。

1) 雇用対策
雇用する企業は、「雇用する労働者の2.0%(2018年度からは2.2%)に相当する障害者を雇用すること」が義務づけられています。このことは、障害者雇用促進法で定められています。
この他にも、障害者雇用に関する教育制度、障害者を雇い入れた場合などの助成金の支給、障害者を雇用することでの税制面での優遇など、身体障害のある方の雇用を企業に促すしくみがあります。

2) 身体障害のある方の就労支援と職業教育支援
主に次のような事業を通じて、就労上の支援と職業訓練教育が実施されています。

・ハローワークにおける職業相談・職業紹介
身体障害のある方の個々の状況に応じた職業相談を実施するとともに、福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」により、就職の準備段階から職場定着まで一貫した支援を実施しています。

・障害者試行雇用(トライアル雇用)事業
事業主が試行雇用の形で身体障害のある方を受け入れることを通じて、身体障害のある方の雇用についての組織内での理解を促し、また、試行雇用終了後には常用雇用への移行を進めることを推進しています。

・障害者職業能力開発校
障害者職業カウンセラーと職業訓練指導員を配置して、職業評価・職業指導及び職業訓練を一貫した体系の中で実施しています。この開発校に通える在職者を対象としたセミナー方式の訓練の他、休職中の身体障害のある方が職種転換を行うための短期課程の職業訓練などを行っています。

(3) 老齢期の主な教育支援

大別すると、障害者施策という面からの教育支援と社会生活関連施策という面からの教育支援とが考えられます。例えば文科省は、長寿社会における生涯学習の在り方についての検討を進め、制度やしくみづくりを模索している面があります。ただ、一般の高齢者の方と同様、身体障害のある高齢者の方に対する教育のしくみづくりは進んでおらず、いずれの面からも適当なものがないというのが現状です。

参考:
文科省 ホームページ 
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
障害者の方への施策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/shougaisha/

日本学生支援機構 ホームページ
教職員のための障害学生修学支援ガイド
http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/l
障害のある学生の修学支援に関する実態調査
http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/chosa/index.html

東京都保健福祉局 ホームページ 就労支援情報
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/shien/index.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構 ホームページ
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

最後に

身体障害のある方への教育については、その方々自身への教育という側面と社会が身体障害のある方々から学ぶ教育という側面と、大きくは2つの側面があるのではないでしょうか。この2つの視点が両輪となって深化していくことで、教育制度自体をよりよいしくみへと変えていくことができるとも考えられるということです。なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov 身体障害者福祉法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=324AC1000000283&openerCode=1

厚労省ホームページ 障害者の範囲(参考資料)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1031-10e_0001.pdf

電子政府の総合窓口 e-Gov ホームページ
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/init/

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター
障害保健福祉研究情報システム
障害者に関する法律関連
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/law/archives.html

文科省 ホームページ 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

日本学生支援機構 ホームページ
http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html

厚労省 ホームページ 障害者の方への施策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/shougaisha/

東京都保健福祉局 ホームページ 就労支援情報
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/shien/index.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構 ホームページ
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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